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浅草6

「有り難う。ルーカスさん。お陰で、僕、土俵にも立てそうです!」

 マグロの解体ショーが終わった後、大鶴丸はルーカスと握手を交わしていた。

 彼は感動のあまり涙を流している。

「それは良かった。ツボの位置は教えるので、後で試してみてくれ」

「はい! 何から何まで有り難うございます〜」

 取り敢えず、大鶴丸の上がり症は何とかなりそうだ。

 良かった。良かった。

「ううう。ルーカスさん、貴方と出会えて良かった。本当に感謝しています」

「いえいえ、当然の事をしただけだ」

 大鶴丸達との別れは名残り惜しいが、ルーカスは、まだ観光の途中。

 彼らにルーカス達は別れを告げる。

「それでは、大鶴丸さん。相撲の試合、頑張って下さい〜」

「応援してまーす」

「有り難う〜」

 ルーカスと美穂、二人は大鶴丸達に別れを告げて、別れた。

「いや〜、良い事をすると気分が良いな美穂」

「そうですね〜」

 良い事をしたからなのか、足取りは軽い。

 ルーカス達は次の観光地へと向かおうとした、その時だった。

「ん? なんだ? あの人だかりは?」

 ルーカスの視線の先、一台の車の前に沢山の人だかりが出来ている。

「美穂、あの人だかりはなんだ?」

 ルーカスは美穂に尋ねる。すると美穂は。

「! ルーカスさん。あれには近づいちゃ駄目です!」

 美穂の口調が強くなった。少し焦っているようにも見える

 ? 一体、何があるのだろうか?

 こんな街中でやるのだから危険な物でも無いだろう。

 ルーカスは好奇心が勝った。

「む、なんか、そう言われると気になるな」

 ルーカスは地を蹴って走り出す。

「あ、ルーカスさん!」

「なぁに。私は大丈夫だ。少し見てくる!」

 ルーカスは美穂と離れ、車へと近づいた。

 やはり車の前には、沢山の人だかりが出来ている。

 そして車には『民政党』と書かれていた。

 そして、今一人の男が車の上に登った。

 なんだ、選挙演説か。

 確か、日本は民主主義だから、こういった政治家による演説が、沢山あると聞いた事がある。

 あまり聞いても面白いものでも無いだろう。

 ルーカスは、その場を立ち去ろうとした、その時。

「メルベール人を、この国から追い出しましょう!」

 男の耳障りな大声がルーカスの鼓膜を貫く。

「メルベール人は、この国を悪くしています! 美しい日本を取り戻す為にメルベール人を、この国から追い出すのです!」

 な、なんだ? これは一体?  

 男のスピーチは明らかにメルベール人に敵意を向けている内容だった。

 いきなり過ぎて何が起こっているか分からずルーカスは立ち止まってしまう。

「メルベール人の我が国の犯罪率は年々増加傾向にあります! この国を悪くしているのは、メルベール人なのです!」

 そんな情報をルーカスは知らない。

 確かにメルベールから日本には、毎年沢山の観光客がいる。 

 その中の何%かは犯罪を起こす事もあるだろう。

 しかし、ルーカスの知っている情報によればメルベール人の犯罪率は日本在住の米軍の犯罪率より低いはずである。

 何故? 何故、この男はメルベール人を目の敵にしているのか?

「うぉおおお! そうだ! メルベール人を追い出せー!」

「美しい日本を取り戻すのよー!」

 この男の演説を聞いている人は、止めてくれるかと思ったら、そうではない。 

 この男に乗っかり、明らかな敵意をメルベール人に向けていた。

 メルベール人が、日本を悪くしているのは、根拠のない言いがかりだ。

 むしろ、日本とは、観光や労働の面で支え合って生きていくよう協力していっているはず。

 何故、何故? この人達は、根拠のない言いがかりに群がり、こんなヘイトスピーチを受け入れているのだ?

 ルーカスは、それが理解できなかった。

「ルーカスさん! こっち来て下さい! こっちです」

 美穂がルーカスの事を引っ張ってくれた。

 お陰で、この胸糞悪いスピーチから抜け出せたが、ルーカスの心にはモヤが残る。

 何故、彼らはメルベール人を目の敵にしているのだろうか。


「は、はぁ、有り難う。美穂。お陰で助かったよ」

 腕を引っ張られ民政党のスピーチから抜け出したルーカスは美穂にお礼を言う。

「いえ、こちらこそすいません。あんなスピーチ聞かせてしまって……」

 美穂はルーカスに、あんなスピーチを聞かせてしまった事が後ろめたいみたいだ。

「気にするな。あれは突っ込んでいった私も悪い」 

 日本には、あんな人間ばかりではない事は分かっている。

 ここは気を取り直して次の場所へ向かうとしよう。

「よし、気を取り直して次の場所へ向かうぞ。美穂」

「次は、どこへ向かうんです?」

「上野だ」


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