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浅草5

「大鶴丸さん。何か特技とかないんですか?」

 美穂が大鶴丸に尋ねる。

「あ、僕、料理出来ます」

 大鶴丸が答える。

「何? 大鶴丸さん。料理が出来るのか?」

「えぇ、相撲部屋では、料理係担当なんですよ。僕」

「こいつの料理は美味いでがんす」

「絶品でごんす」

 それは有力な情報だ。というか最初から聞いておけば良かった。

「得意料理はなんなのだ? 大鶴丸さん」

「あ、僕、寿司が握れます」

「何!? そうなのか?」

「力士やる前は板前やってたんです。僕」

「こいつの寿司は、絶品でがんす」

「美味いでごんす」

「それは凄い。ならば寿司握るだけでも、人を集められんじゃないか?」

「うーん。どうでしょう? 寿司握れる人は一杯居ますし、いまいちインパクトが無いですね」

 そうなのか。寿司を握るだけでも人を集められるかと思ったが、どうやら、そうではないらしい。

 うーん。でも寿司を握れる事は、いかしたい。 

 何か手は無いだろうか。

 ふと、ルーカスはテレビで見た光景を思い出す。   

 確か、テレビではマグロの解体ショーをやっていた。 

 板前が見事にマグロを解体し、そのマグロを使ってお客さんに、寿司を披露していたのだ。

 これなら、いけるのではないか?

「大鶴丸さん。マグロを解体出来たりしないですか?」

 ルーカスは大鶴丸に尋ねた。

「マグロを解体出来れば人は集まる。というか日本ではマグロの解体は一般的なショーだったんじゃないか?」

「でも、ルーカスさん。マグロの解体って結構難しいんですよ。大鶴丸さんでも、それは出来るか……」

 美穂は否定気味だが、これ以上、手はない。

 さて、大鶴丸の反応は?

「で、出来ます!」

「本当か? 大鶴丸さん」

「えぇ、僕、何度かマグロを解体した事があるんです。僕、やり方は知ってます」

 よし、それなら話は早い。大鶴丸にはマグロの解体ショーをやって上がり症を克服して貰おう。

「よし、決まりだ。大鶴丸さんにはマグロの解体ショーをやって貰おう」

「で、でもちょっと待って下さい。ルーカスさん」

「ん? どうした美穂」

「肝心のマグロが無いです。マグロが無いと解体は出来ないんじゃ……」

 しまった。美穂の言う通りマグロが無い。

 マグロが無いと解体するも何もないではないか。

「その話、聞かせてもらいました!」

 その時、ルーカス達の背後から声が聞こえて来た。

 後ろを振り返ると、そこには道のど真ん中で寿司を披露していた寿司職人がいた。

「あ、貴方は」

「自分、マグロ持ってます!」

「えぇ? 本当ですか?」

「えぇ、路上寿司職人としては、いついかなる時もマグロを解体出来るようにならないと駄目。だからマグロ持ってるんす。自分」

「く、くれるのか?」

「力士さんの事、放ってはおけないっす。どうぞ。使って下さい!」

「あ、有り難う」

 太っ腹な寿司職人のお陰でマグロを手に入れたルーカス達。 

 こうして大鶴丸は上がり症克服の為、人前でマグロの解体ショーをする事になった。

 

 六区ブロードウェイ、ユニクロ前には、沢山の人達が集まっていた。

 彼らの前には机と解体前のマグロがある。

 どうやら彼らはマグロの解体ショーが始まる事に感づいたらしい。

 ショーが始まるのを今か、今かと待ち望んでいる観客達。

 後は大鶴丸が解体ショーを披露するだけ。披露するだけなのだが。

「はぁ、やっぱり僕には無理ですよ」

 控え室となっているテントの中で大鶴丸は勇気が出ないのか、うなだれている。

「大鶴丸さん。後は皆の前に立つだけだ。難しいのか?」

「頑張るでがんす」

「頑張るでごんす」

 ルーカス達は大鶴丸を励ますが、大鶴丸は俄然として動かないままだ。

「や、やっぱり辞めます!」

「ちょ、ちょっと待つんだ。大鶴さん」

 ショーをドタキャンしてテントから出ようとする大鶴丸。

 それを必死に止めるルーカス達。

「ぼ、僕には皆の前に立つなんて無理だったんですよ。やっぱりショーなんて無理だ〜」

 大鶴丸は皆の前に出るのを嫌がっている。  このままでは土俵に立つのだって無理だろう。

 どうする? どうすれば良い? 

 何か手は無いかと、ルーカスは考える。  

 ん? そういえば。 

「そうだ。思い出したぞ!」

「何をです? ルーカスさん」

 美穂が尋ねる。

「メルベールには、緊張した時に緊張を和らげるツボというものが存在していた。それを押せば大鶴丸さんの緊張を和らげる事も出来るかも知れない!」

「え? 本当ですか!?」

「あぁ、本当だ。大鶴丸さん、背中を私に向けてくれ」

 ルーカスに言われて大鶴丸は彼に背中を向ける。

「確か、この辺りだったはず……」

 ルーカスはうろ覚えではあったがメルベールに伝わる緊張を和らげるツボを見つけ、それを押した。

「どうだ? 大鶴丸さん?」

 ルーカスは大鶴丸に何か変化が無いかと彼に尋ねた。

 大鶴丸は少しの間、沈黙した後。

「う、うぉおおお! 何か僕、やれる気がして来ました!」

「本当か!? 大鶴丸さん」

「はい。僕、マグロの解体ショー、やって来ます!」

 先ほどとはうってかわって、大鶴丸は、やる気に満ち溢れている。

 良かった。これならいける!

「うぉおおお! マグロ解体するぞ〜!」

 大鶴丸は勢い良くテントを飛び出し皆の前に立つ。    

 そしてマグロを解体し始めた。

 結果は大成功。

 大鶴丸は見事にマグロを解体し、ショーは大成功を収めた。


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