02 闘技場のしくみ
ジョナサンは、どうやら家族というものがないらしい。
いや、いるにはいるのだろうが、あまり縁がないようだ。
記憶を辿っても、家族団らんの場面が浮かばない。
食事は毎回、侍従が部屋まで運んでくる。普通に美味しいが、食べすぎると胸焼けする。
なんか、この体は地味に悲しい。
衣服も上等なものを与えられているし、こづかいもあるらしい。
ジョナサンの記憶に、お店でインクとペンの買い物をしてる場面がある。
それなりの貴族の生まれにしては、哀れだよ。
まぁいい、俺はもうすぐ死ぬから、気になることは遠慮なく聞くことにした。
「こづかいはどうなっている? 確認してほしい」
侍従は出て行って兄?を連れて来た。
兄は不機嫌だ。まぁ忙しい時に呼ばれたのがいやだった?
死ぬのがわかっている弟が不憫?
「こづかいをもらって逃げるつもりか?」
普通に嫌なやつだった。
「いいえ。町を歩いてみたいんです。闘技場も見学したい。どんな場所か、知っておきたくて」
「そうか。……まあ、死ぬお前にそれくらいいいだろう」
そう言って、兄は金貨十枚を渡し、去っていった。
これって多くない? 買うものってないけど……
侍従が護衛として、ついて来た。護衛と言うより見張りだよな。
屋敷を出たら。適当なところでまいてやった。
街でエールを飲み、肉を串に刺したものを頬張る。
うまい。
「おにいさん。綺麗な顔してるね」
「うん」
声をかけてきた男に、俺は短く答えた。
下心丸出しの相手だ。遊んでやる気はないが、時間を無駄にするのも惜しい。
――だが、ちょうどいい。試させてもらおう。
この情けない体で戦う方法を、模索して、ようやく見つけたのだ。
魔法で腕を作り、それを手の代わりに使う。
そのほうが、なんとかなる。
本物の手よりも、ずっと言うことを聞く。
情けない話だが、事実だ。ジョナサン。どんだけ不器用なんだ。
練習を重ねて、、透明にすることにも成功した。
俺は魔法の手で、下心野郎の首をぐいっとひねってやった。
突然、首を寝違えたような状態になった男は、横を向きながら
「あや、こや、痛いぃ」などと情けない声を上げながら、逃げていった。
俺は残ったエールを飲み干そうとしたが、少し傾けすぎた。
酒がこぼれる。くそ、不器用ジョナサンめ。
『ジョナサン、聞こえるか? 情けないやつだ』
返事はないが、つい、突っ込んでしまう。
やがて足が重くなり、歩くのが億劫になってきた。
それでも、魔法の手で背中を押しながら、一歩一歩進む。
そうして、闘技場にたどり着いた。
会場の下見。
賭けの仕組みも確認する。国が運営してるようだ。
参加者も賭けていいのか。やった! 儲けさせて貰う。
出場者名簿に、ジョナサンの名前があった。
下から三番目。名前に添えられた肖像画は可愛い。
目立つ顔は人生で不利なのに、どこまでジョナサンは……本当に可哀そうなやつだったんだな。
最後じゃないことを、喜ぶべきなのか?
少なくとも、出場が本当だということは確認できた。
名前を見渡しても、誰一人として記憶にない。
誰が強いのか、どんな攻撃手段を持っているのか、まるでわからない。
まあいい。
最初はバトルロワイヤルだ。
魔法の手で身を守れば、最後まで立っていられる。
……はあ。
少し休んでから帰ろう。どんだけポンコツなんだこの体。
疲れた。
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