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03.勇者カズキ

 熱にうなされていた。

 夢なのか幻覚なのか、僕は戦っていた。


 ゴブリンとの死闘。

 あの蒸し暑く異臭漂う巣窟で、次々襲ってくるゴブリンをショートソードで迎え撃った最悪の場面。

 はらわたと鮮血と糞尿にまみれた生き地獄。


 時折、意識がわずかに覚醒する。

 頭は混乱したままで全身が焼けるように熱い。そして、心臓が鼓動するたび左手と左足に激痛が走る。


「みっ・・・・・」

 言葉が出てこない。

 傾いた視界の端で人が動いている。

 必死に口を動かすが誰も反応してくれない。


「・・・作業を急げっ!」

 男たちの声が響く。

 とても耳障りな音だ。

 喉が渇いて仕方ないのに身体は動かない。

 勇者の僕が苦しんでいるのに、こいつらは・・・

 

 こいつら? こいつらって誰だ?

 僕は・・・だれ・・・勇者?

 意識が再び闇に消えていく。

 身体も動かず意識さえ保てない。底の無い暗い穴に落ちていく。





 ガラガラという音と身体の揺れで苦痛が増す。揺れるたび、左足と左手に激痛が走り、一瞬意識が覚醒してはすぐに気を失ってしまう。


 みず・水を・・・ヒールを・・・回復薬・・・殺してくれ・・・

 意識がわずかに戻るたび、僕はそんなことばかり考えていた。

 そして、意識が途切れると夢にうなされた。


 ヘルハウンドとの戦いで食い殺されそうになり、大蛇の魔物に絞め殺されそうになったり、そんな場面ばかりが鮮明に浮かんでは消えていく。


 これは何かの罰なのか、ならば僕は何をしたというのだ・・・




◇ ◇ ◇




 僕は、ただの学生だった。

 そんな僕が異世界に召喚されたのは、高校一年のことだ。

 この世界の暦で言うと3年前になる。


 大陸の西に位置する強国が、僕を魔法で召喚した。

 自分たちで強国と言っている時点で、国民性が透けて見えた。


 その強国、ペイの国第一王女の秘術により、僕は召喚の間に呼び出されたのだ。

 王女の国は、周囲の蛮族や邪悪な魔物に苦しめられていて、伝説の勇者に協力を求めるため召喚の儀式を執り行ったのだそうだ。


 卑しい蛮族や魔物から弱き民を救う戦。その聖戦に協力して欲しい。

 そう美少女に訴えられ、僕は承諾した。

 そうするしか、僕に選択肢はなかった。

 見知らぬ異世界に連れてこられ、何も分からず、教えられたことを鵜呑みにするしかなかったのだ。


 僕は王女によって「勇者紋」を右手に授けられ、「勇者カズキ」になった。

 「勇者紋」は、その経験値とレベルを上げていくことで、強力なスキルを発動させる魔具のような物だと思われた。

 僕を勇者に仕立て上げた王女たちだが、魔法の仕組みや「紋」の事を詳しく教えてはくれなかった。


 「紋」と呼ばれるそれは、「勇者紋」以外にも複数あり「賢者紋」「聖女紋」「聖騎士紋」などがある。


 勇者の力は、魔物を滅する力。

 そう教えられ、僕は勇者レベル0からレベル上げをすることになった。

 そしてゴブリンを殺すことが、僕の日常になる。

 ゴブリンに何の恨みも無いが、ゴブリンに襲われ困っている民のため、僕はゴブリンを探しては殺すという日々を送った。

 ゴブリン退治で勇者レベルが上がると、次はオーク退治、その次はガーゴイル退治と、僕のレベルは急激に上がっていった。


 レベルが上がると王女は喜んでくれた。そして、祝福のキスをしてくれたのだ。

 僕は、それが嬉しくて、魔物を倒すことだけに集中するようになった。

 そんな生活が3年続き、勇者紋レベルが80になったところで、ラスボスとの決戦が行われたのだ。

 そう、大陸中央で世界を脅かすアークドラゴンの討伐だ。


 

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