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15.ギルドへ向かいつつ試し撃ち

 翌朝。

 館のドアをくぐると、朝日の眩しさに少し感動した。


「シモーヌという受付にコレを渡してください。スムーズに処理してくれます」

 館正門まで案内してくれたメリッサが紹介状を渡してくれた。

 メリッサの態度に圧は感じられなかった。


 紹介状を受け取り、礼を言ってメリッサに背を向ける。

 館の門をくぐり、僕はやっと自分が何処に居たのか漠然と理解した。

 鬼女ラムスの館は、丘の上に建つ石造りの大きな城塞だった。

 ここの主ということは、奴隷商人というより地方領主クラスと考えた方がいいのかもしれない。

 門を守る兵は甲冑を着た正規兵に見えた。何より守備兵全員が【兵士紋】持ちでレベル10の剣を装備している。

 ちゃんとした軍隊だ。どう見ても奴隷商人ではない。


 朝日に照らされた館の向こうには、アークドラゴンが棲んでいた大陸中央山脈アルボスの山々がそそり立っていた。

 ペイの国から見ていた風景とは違う山脈だ。やはり、ここはギゴの国なのだ。



・・・昼には戻らないとな・・・


 リリには、昼に帰るからと言い聞かせてきた。

 消え入りそうな声で「いってらっしゃいっ、お兄ちゃんっ」と言っていたが、昨夜の事を考えると後ろ髪を引かれる思いだ。


 リリの事は心配でたまらないが、情報収集しなければならない。

 呪いの解呪。それを早急に成さなければならない。

 昨夜、リリを湯浴みさせた後、メリッサと少し踏み込んで話すことが出来た。だが、彼女たちはリリの呪いには完全にお手上げ状態のようだった。

 その上、リリの呪いは強力過ぎて、メリッサクラスでさえリリに近付き過ぎると呪いの飛び火で皮膚が裂けてしまうことが分かった。

 メリッサに言わせると、なぜ僕がリリの飛び火を受けないのか不思議だと語っていたが、それは右手のレベル120か左手の【アークドラゴン紋】の影響だと思われた。

 

 そうなると、やはり僕が呪いをと思うのだ。

 一緒に居ることさえままならない者たちに何を期待できるだろう。

 やるべき事を考えつつ足を速める。ゆるい下り坂を歩き始めると、すぐに【竜眼】が反応した。後ろから誰かが追ってくる。

 僕が足を止め振り向くと、そこに人影は無かった。

 人影は見えないが、【竜眼】は木陰に隠れた人影を捕捉している。


【ニンゲン】【隠遁レベル8】【隠密剣レベル20】と、隠れた者の情報が左目に流れていく。


・・・スパイか監視役かな?・・・


 再び歩き出すと、そいつは僕の後を追ってきた。

 尾行は気分のいいものではないが、何が出来るという訳でもなかった。

 普通に考えて、メリッサが僕を探らせているのだろう。そうなると、ウザイからと雷撃を食らわせる訳にもいかない。

 丘を半分ほど下ったところで、僕は再び立ち止まった。後ろから付いてくる奴も足を止めた。


 やるべき事の一つを、ここで試すことにした。

 後ろに潜む奴は、レベル的には何の問題もないはずだ。

 だが、それは、右手レベル120と【雷撃剣レベル3】が機能した場合の話しだ。

 昨夜、ラムスの部屋で起動させた【スーパーフラッシュ】にしても、実際に発動させた訳ではないのだ。

 右手のレベル120が本当に使えるか試す必要がある。

 道の脇に、手頃な巨石があった。地面に出ている部分だけで3メートルほどある巨岩だ。雷撃攻撃とシールド性能を試すには手頃だろう。


・・・後ろの奴にも挨拶しておくか・・・


 ビリビリ剣を抜きクルリと振り向く。剣先を隠れた追跡者に向けた。

 ニヤリと笑って見せたが、隠れた奴はピクリとも動かない。そこそこの手練れということだろうか。

 ニヤケ顔をさらした自分が、マジ恥ずかしい。

 まあいい、標的はコイツではないのだ。

 頭でスキル発動を念じる。


【シールドオート】【雷撃攻撃準備】そう念じると、左目にデータが流れた。

『自動防御システム起動。雷撃レベル123で発動可能』


・・・えっ、えええっ!?・・・


 流れたデータに僕は戸惑った。

 雷撃レベル20を想定していたのに、123って何だ?

 確か、要塞攻撃用超電磁砲でレベル80だったはずだ。レベル123の雷撃攻撃ともなれば、この丘全体が吹き飛ぶかもしれない。


・・・力加減とか考えろよ・・・


 そう心で毒突くと、【竜眼】は即座に返答した。

『雷撃レベルを変更しますか?』 


・・・変更できるのか? なら雷撃レベル50で発動、目標はコイツだ・・・


 突きだしていたビリビリ剣を振り上げ、脇に鎮座した巨岩に向け振り下ろした。

 勇者スキルを使っていた要領で、スキルを頭の中で念じた。


・・・雷撃っ!・・・


 そう頭で唱えた刹那、閃光が走った。

 目の前、僅か数メートル先の巨岩に巨大な稲妻が舞い降りた。


ズドドどどどおおおぉぉぉぉぉぉん!!


 雷撃というより、ただの爆裂魔法だ。

 目も眩む閃光と凄い爆発と同時に地面が激しく揺れた。

 巨岩が吹き飛び、飛び散った岩が凄いスピードでシールドにぶち当たる。

 シールドが機能してなければ絶対死んでるぞ。

 近場に落とすのはやめよう、そう思いつつ巨岩を見ると、3メートルの巨岩は跡形も無く消え、さらに大穴がポッカリと口を開けていた。 


・・・まあ、こんなもんか・・・


 丘の上が急に騒がしくなった。

 爆雷攻撃を受けたのだ。兵たちが騒ぐのも無理はない。

 顔をあげ振り向くと、覗き見していた奴のフラグが館へと駆けていくのが分かった。メリッサに報告しに行くのだろう。

 これはこれで、メリッサやラムスへの警告になっただろう。

【スーパーフラッシュ】は、このレベル50雷撃攻撃が1000個の標的に炸裂するのだ。味方というか、リリが近くにいる場合は慎重に使うべきだろう。



 再びギルドへ向かうべく坂を降りていく。

 実際【雷撃剣レベル123】が使えると分かっても、気持ちが高揚することはなかった。

 それまでの無力感は薄らいだが、まだ何の希望も無い状態だ。

 丘の中腹から見下ろす下界は、カラフルな屋根に色取られた大きな町だった。城下町ということなのだろう。



 そこは中央大陸霊山の麓、ギゴ国境要衝の町ギメル。

 ラムスの館。その全容を確認し、僕の気持ちは鬱になっていた。

 こんな城塞に住む地方領主級の彼女でさえ、リリの呪いに対処出来ていないのだ。それを考えると、普通の正攻法で解呪ができるのかと不安になってくる。

 

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