29話 闇の世界へ
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
聖王女アスカ(29話)
「あなた達の強さ、見せてもらいました。この聖剣アローラ、役に立てて下さい」
「はい」
アスカは、聖剣アローラが刺さった台座の前に立った。
アスカは柄を握ると、なぜか気持ちが安らぎ、あたたかい気持ちになった。
アスカが、聖剣を抜くとスッと台座から聖剣が抜けた。
聖剣は、刀身が水色に輝く美しい長剣だった。
「アスカ……と申しましたね、その剣に選ばれたということは、あなたは真にアローラ様に選ばれし者ということなのです」
「はい!」
「あなたにお伝えしないといけない事があります。アローラ様なのですが……生きておられますよ」
「えっ!?」
アスカ達は、全員が驚いて顔を見合わせた。
「ほ、本当ですか!?」
「ええ……私はアローラ様の召喚獣……アローラ様が死ねば私も消えます。私がここにいることが何よりの証拠です」
「そ、そうですか……良かった……」
アスカは安堵の表情を浮かべた。
他の4人も同じだった。
「それで、どこにいるのかは分かるのかの?」
「そこまでは分かりません……しかし、この神の国にも地上にもいないとなると、魔王が支配する闇の世界におられる可能性が高いと思います」
「なるほど……確かにその可能性が一番高いでしょうね」
「闇の世界に行く方法ですが、この神の国に来るのに四つのオーブが必要だったように、闇の世界に行くにも闇のオーブという物が必要です」
「闇のオーブですか? もしかしてこれでしょうか?」
アスカは、アークデーモンとの戦いで手に入れた、黒い宝玉を取り出した。
「おそらくそうでしょう。神の鳥に見せてごらんなさい。闇のオーブであれば神の鳥のサークレットに装着されるはずですよ」
「分かりました」
「聖剣アローラが抜かれた今、私の役目も終わりです。アスカ、これからはあなたの力となりましょう」
「え? 私に力を貸して下さるのですか?」
アスカが驚いていると、エンジェルは自身の持つ盾に吸い込まれるように姿を消し、盾に宿った。
「この盾は……」
「王女様、もらっておくと良い。その盾はかなりの硬度だ」
ライデンは、さっきの戦闘中に渾身の飛び蹴りを防がれ、その衝撃に対する強さを感じていた。
「そうね、そうしましょう」
アスカは、エンジェルが使っていた盾……天使の盾を持った。
天使の盾は、重さをほぼ感じられないほど軽い盾だった。
「ミツキ、脱出をお願い」
「分かったわ」
アスカ達は、ミツキの脱出の魔法で神の山の頂上の、洞窟の入り口まで瞬時にワープした。
そして、神の鳥を呼び出し、麓の村まで連れていってもらい、薬や食料、矢など備品を補充した後、宿で一泊した。
翌朝、再び神の鳥を呼び出した。
「神の鳥さん、これ分かる?」
アスカが、黒い宝玉を取り出した。
「これは……」
神の鳥が不思議そうに見ていると、黒い宝玉は妖しく輝き、神の鳥のサークレットに埋め込まれた。
他の4つのオーブも輝き、5つの光がオーブから放たれ、上空に空間ができた。
空間の中は真っ暗で闇に覆われていた。
「きっとあれが闇の世界の入口だわ……みんな行きましょう」
アスカの言葉に4人が頷き、神の鳥に乗り込んだ。
神の鳥は、大きな翼を広げ、飛び立った。
神の村の者達は、神の鳥に乗り旅立って行くアスカ達の武運を祈り、見送った。
アローラが行方知れずの今、神の国の者にとっても、聖剣アローラをふるうアスカと、その仲間達は希望だった。
神の鳥は、闇の世界の入口へ真っ直ぐに飛び、やがて入口に入った。
入口の中は、真っ暗ではじめはなにも見えなかったが、段々暗闇に目が慣れてくると、うっすらと黒い雲や、暗い紫色の空が見えた。
星の輝きは無く、また月も無く、もちろん太陽も無い、まさに闇の世界だった。
やがて、遠くに小さな赤い光が見え、赤い光はじょじょに大きくなり、その正体は血のように赤い、紅蓮の炎の塊だった。
紅蓮の炎の塊は、闇の世界の暗い空に浮かび、辺りをうっすらと照らしていた。
アスカ達は、神の鳥の背中から闇の世界を見渡した。
「ここが闇の世界……」
「恐ろしい場所ですね……」
アスカとエリスが言った。
その光景は、暗く青い色をした険しい岩山が連なり、葉が無い植物の森があり、大小の岩や石が転がり、草は生えておらず、見渡す限りが荒野に見えた。
また赤や黄色、黒、紫色をした毒々しい色合いの、奇怪な造形の花が咲いていて、辺りの不気味さを増幅していた。
更に、岩山の間を真っ赤なマグマが流れており、マグマはそのまま陸地の外に流れだし、外はマグマの海と化していた。
闇の世界の陸地は狭くて、少なく、目の前に見えている小さな陸地の他には、見渡す限りマグマの海が広がっていた。
目の前の小さな陸地の真ん中に岩山に囲まれた、美しい造形だが、無気味な雰囲気も漂う城があった。
「あれが、魔王とやらがいるところか?」
「おそらくそうじゃろうのう……」
「私達勝てるかしら……?」
ライデン、ルドルフが言い、ミツキが不安そうに言った。
「やるからには勝つのよ! 絶対に!」
「……そうよね!」
「はい!」
「もちろんだ」
「うむ」
アスカは、強い口調で言った。
皆は、アスカの言葉に不思議と落ち着き、勇気付けられた。
「行くわよ!」
アスカが言うと、仲間達も頷き、神の鳥は闇の世界の陸地に降下し、すこし開けた荒野にアスカ達を下ろした。
闇の世界は、マグマの海に囲まれ、紅蓮の炎が空に浮かんでいるのとは対照的に肌寒く、時折、暴風が吹き荒れた。
ここから、険しい岩山の頂上に魔王の城が小さく見えた。
アスカ達は、意を決し魔王の城に向かって歩き出した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。




