20話 絶体絶命!? 魔王軍海軍団長クラーケン
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
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聖王女アスカ(20話)
タラの港町を出港して数日が経った。
敵影も無く、かえってそれが不気味だった。
「そろそろいつ戦闘になってもおかしくないはずよ、みんな戦闘態勢をとっていてね」
「アスカ殿、儂は、いつでも魔法を発動できるように詠唱しておく。それから前に言った通り、これを使うと儂はその後戦えぬ。すまぬが戦闘は任せたぞよ」
「はい」
ルドルフは、瞑想に入った。
更に西に船を進めると、海の魔物達が一斉に海から現れた。
周囲を見渡す限り魔物で埋め尽くされ、その数は数千にものぼった。
「な、なんて数なの……」
「怯んじゃダメよ! 私達で全滅させるんだから!」
アスカは、仲間を鼓舞し、サンダーボルトの魔法を発動させた。
一筋の稲妻が、一気に海面を走り、次々と魔物の死体が浮いた。
「さぁ、もっと来なさい! このくらいじゃ私達に傷1つつけられないわよ!」
エリスは弓矢を乱射し、ミツキもサンダーボルトの魔法を発動させた。
次々と、魔物の死体が浮いていく。
だが、魔物達は続々と現れ、倒しても倒しても止まなかった。
アスカ達は、休む間もなく戦い続け、やがて魔物の増援が止んだ。
その頃、ルドルフは、全身が銀色のオーラに包まれていた。
更に、バチバチと放電現象が起こっていた。
「さて、そろそろかの……天かける流星よ、集いて我が敵を打ち払え! メテオ!」
空に無数の隕石が集まり、キラッと光った。
無数の隕石は、豪雨のように魔物達を襲った。
次々と魔物の死体が、浮いた。
隕石群が収まったときには、襲ってくる魔物はいなくなった。
「では……アスカ……殿……わ……しは……寝るから……の……」
「はい! ゆっくりお休みください」
(おじいちゃん、お疲れ様)
「ほぅ……まさかメテオの使い手がおったとはな……我が配下を全滅させた事、誉めてやるぞ……」
辺りが霧に包まれ、どこからともなく不気味な声が響いた。
「あなたがクラーケンね!」
「いかにも……」
「ウィンダムの人々を苦しめた事、許せない! 覚悟なさい!」
「覚悟するのはお前達の方だ……早速だが氷付けになるがいい……」
霧の中から、冷気が染み出してきた。
これが呪術、呪いの寒気だ。
寒気が広がり、海が凍り付いていく……
「こんなもの!」
アスカは、聖なる光をレイピアに集め一閃した。
聖なる光の刃が呪術を立ち切った。
「ほぅ……我が呪術を打ち破るとは……お前がアスカだな?」
「そうよ!」
「ならば、儂にとってもタイタンとガルーダの仇だ! その命貰うぞ!」
「アスカ様に手出しはさせないわ!」
「やれるもんならやってみなさい!」
「ふん! 小娘どもが! 思い知らせてくれる!」
霧の中からクラーケンが姿を現した。
その姿はタイタンよりも大きかった。
巨大なフード付きのローブに身を包み、フードの奥から二つの目が赤く光っていた。
「くらえ! アイシクルフェザー!」
クラーケンの目が一段と真っ赤に輝いた。
すると周囲の海水が巻き上がり、凍り付いて、鋭い氷の針が、アスカ達に降り注いだ。
「ミツキ! 魔法の盾を!」
「うん!」
ミツキが、魔法の盾の円形のバリアを作り出し、氷の針を弾いた。
エリスが矢を射ち、アスカもサンダーボルトを唱えた。
クラーケンは、霧に包まれ姿を消した。
矢と稲妻は霧の中に吸い込まれた。
その後すぐにクラーケンは、霧の中から現れた。
「アイシクルフェザーを防ぐとはやるではないか……ならばこれはどうかな?」
クラーケンは、猛烈な吹雪を吐き出した。
再び、ミツキが魔法の盾でバリアを張った。
ミツキは、汗が吹き出した。
じょじょにバリアが弱まっていった。
「このままでは、ミツキが力尽きてしまうわ! エリス、反撃するわよ!」
「はい!」
アスカは、再びサンダーボルトを唱えた。
1度効果の無かった魔法だったが、他の魔法では吹雪の前にかきけされてしまうが、サンダーボルトなら上空から雷を落とすために吹雪を避けて攻撃できた。
「ちっ……!」
クラーケンは、再び霧の中に消えた。
サンダーボルトの稲妻は、再び霧の中に消えてしまったが、同時に吹雪も止んだ。
凍りついた海がどこまでも広がっていた。
「はぁっ……はぁっ……!」
ミツキは、魔法の盾のバリアをといた。
霧の中から再びクラーケンが現れた。
「そこよっ!」
エリスが狙いすまし、矢を射った。
「ぐおっ!」
矢は、クラーケンの胴体に刺さった。
「ぐっ!」
クラーケンは、矢を引き抜いた。
「今よ! 攻撃するわ!」
アスカは、魔法で真空波を作り出した。
エリスは矢を連射した。
ミツキも、高圧火球を打ち出した。
「ぬぅ!」
クラーケンは、急いで、霧の中に消えた。
攻撃は、全て霧の中に消えてしまった。
「くっ! また……!」
「ア、アスカ……」
「なに?」
「あれは……魔法じゃない……たぶん呪術……あなたの聖魔法なら……たぶん破れる……」
「分かったわ! エリス、私が詠唱する間、アイツの注意を惹き付けて」
「はい!」
「この小娘どもが!」
クラーケンは、吹雪を吐き出そうと大きく息を吸い込んだ。
「させないわ!」
エリスが、矢を射った。
「ええい!」
クラーケンは、霧の中に消えた。
「そこよ!」
「ちっ!」
エリスは、矢を射ったあとすぐに次の矢を構えた。
そして、霧の中からクラーケンが現れた瞬間を狙って、矢を射った。
矢は当たらないが、クラーケンも姿を現せなかった。
時間を稼いでいる間に、ミツキは、魔力の実を食べて魔力を回復させた。
(よし! いつでもいけるわ!)
アスカは、青いオーラを放っていた。
「聖なる炎よ、我が敵を焼き尽くせ! セイントファイア!」
クラーケンは、霧に消えた。
その瞬間、聖なる炎が、霧を包み込んだ。
「グオオオオッ!!」
呪術を封じ、聖なる炎がクラーケンを包んだ。
たまらず海に潜り、呪術を全力で使い、ようやく炎が消えた。
「おのれ……」
目の前に巨大なイカの化け物が現れた。
クラーケンの正体だった。
「よし! 総攻撃をかけるわ!」
「儂をなめるなぁっ!! 小娘っ!」
クラーケンは、巨体を揺らし、大津波を起こした。
「えっ!?」
「そんな……!?」
「う、うそでしょ!?」
船が波で大きく揺れた。
「くっ……! みんな何かに掴まって! 海に落ちちゃダメよ!」
「はい……!」
「きゃあっ!」
船になんとかしがみつき、海に落ちずにすんだ。
「きゃーっ!」
3人とも、胴体に巨大な触手が巻き付いた。
クラーケンの狙いは、大津波で船を揺らし、動きを封じて触手で捕らえる事だった。
「フ、フフフ……捕まえたぞ……一人ずつ、なぶり殺しにしてくれる!」
触手は、アスカ達の胴体と同じくらいの太さがあり、アスカ達を強く締め付けた。
「うぅっ……!」
ガギギギキギ……!!
骨が軋む音がする……
「まずはお前だ……」
「ゴ、ゴボボ……」
ミツキは水中に沈められた。
海中は氷点下。
海水が、肌に突き刺さる感覚。
だが、じょじょにそれも感じなくなった。
(こ……このままじゃ……溺死させられてしまう……)
だが、動けない。
魔法の詠唱も出来ない。
(い……意識が……と……遠く……なって……きた……)
溺死が目前に迫る。
ミツキは急に引き上げられた。
「はぁ……はぁ……」
顔面蒼白。
唇の色は無い。
小刻みに体が震えていた。
「フフフ……すぐには殺さんぞ……たっぷりとお礼をせんとな……」
「…………」
ミツキは、答えることが出来なかった。
「い、いや……」
いたぶられる様子を見ていた、アスカとエリスは、怯えた。
「次はお前だ……」
クラーケンは、エリスを睨みつけ、口を大きく開けた。
タコやイカのカラストンビと言われる、歯が目の前に迫った。
人の体など簡単にねじ切れそうなほど、巨大で鋭かった。
(わ、私を食べる気……!?)
エリスは、自分がねじ切られてしまうところを想像し、恐怖で震え上がった。
「きゃあああっ!!」
エリスは、猛烈な吹雪を浴びた。
みるみるうちに体が凍り付いた。
体温の低下が止まらない。
意識が無くなるのに、時間はいらなかった。
やがて、吹雪が収まった。
凍りついたエリス。
ぐったりしていた。
「ほぅ……まだ息がある……そうでなくてはな……」
「も……もう止めて……あなたの狙いは私でしょ……? 私を……やりなさい……」
「言われなくても、最後はお前だ……」
「く……」
アスカは、更に締め付けられた。
バチンッ!
アスカは、触手で叩かれた。
「きゃっ!」
バチンッ! バチンバチンバチンバチンッ!!
アスカは、触手で何度も叩かれた。
全身が腫れ上がった。
痛みで涙がこぼれ落ちた。
「きゃあああっ!!」
バチバチバチバチバチッ!!
更にアスカを滅多打ちにした。
「う……ぅぅ……」
全身、ズタボロ……
感覚は、もう無い……
「さて、そろそろ殺すか……」
「あぅっ!」
アスカは、首を触手で絞められた!
「ぁぁぁ……ぅぅ……」
じわじわと力がこもる……
両手で振りほどこうとするが、振りほどけない……
そもそも、手に力が入らない……
(だ……め……こ、殺さ……れる……)
迫る死。
込み上げる悔しさ無念さ。
一筋の涙が、頬を伝った……
「お、お……じ……いちゃ……ん……た……たすけて……」
ルドルフは、全く起きる気配がない。
「そろそろ死ぬかな?」
「や、止めて……」
ギュウッ!
アスカは、さらに首を強く絞められた。
仲間達にはどうすることもできない……
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。




