15話 オーブの番人
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
聖王女アスカ(15話)
「ここは、今までと同じくエリス、ミツキ、私の順番で行きましょう。敵は空から来るし、地上にもいるかも知れないわ、くれぐれも気を付けましょう」
「はい」
「うん」
アスカ達は、急な傾斜もものともせず、どんどん登っていき、早くも八号目まで来ていた。
「ふぅ……まだかしら?」
「頂上までもう少しですけどね……」
アスカ達は額の汗を拭って呟いた。
その表情には、まだまだ余裕がある。
道中何度も魔物に襲われたが、難なく退けていた。
「着いた!」
頂上付近は、カルデラになっていて、中心に雨水が溜まり湖になっていて、そのすぐそばに洞窟の入口があった。
洞窟の上は、断崖絶壁の岩山となっていた。
岩山は雲を貫いていて、頂上が下からは見えなかった。
アスカ達は、カルデラを下り、湖の脇を回って洞窟の中に入った。
「凄いところね……」
洞窟の中は、至るところにマグマが流れており、熱気で異常に暑く、皆、全身から汗が吹き出してきた。
洞窟の中は、緩やかな下りの一本道になっていて、最下層にマグマ溜まりがあった。
「汝らはなぜここまできた……?」
何処からともなく低く重い声が響いた。
「だ、誰!?」
「答えよ……」
「私達は、オーブを取りに来たの!」
「ならば……そなたらの力を試さねばならん……引き返すならば今のうちだ……もう一度聞く……本当にオーブが欲しいのか……?」
「ええ!」
「命を落とすことになるやも知れぬ……それでも構わぬか……」
「……ええ! 覚悟は出来てるわ!」
「ならば参るぞ……我はマグマの番人なり……見事我を倒してみよ……」
マグマが一点に集まり、炎に包まれた人の上半身のような姿の怪物となって襲ってきた。
人の頭部に当たる部分に、人魂のような顔があった。
「何をしてくるか分からないわ! 気を付けて!」
マグマの番人は、先頭のエリス目掛けてノーモーションでパンチを繰り出した。
「くっ……!」
意表をつかれエリスは避けきれず、とっさに盾をかざした。
「あつっ……!」
マグマの番人のパンチは、高温で、盾が真っ赤に焼けた。
「きゃあっ!」
エリスは、盾を持っておれず、モロにパンチを受けてしまった。
マグマの番人のパンチは、破壊力抜群で、エリスは吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。
「エリス!」
すぐ後ろにいたミツキが、エリスに駆け寄り、回復魔法で治療を始めた。
すぐさまマグマの番人は、追撃しようと、エリスとミツキを目掛けて炎を吐いた。
「吹雪よ!」
アスカのレイピアから、吹雪が巻き起こり、炎とぶつかり合った。
「くっ……!」
炎と吹雪がぶつかり合う中心で爆発を起こし、互いの威力が相殺された。
その頃、ミツキはエリスを完治させていて、2人は、アスカの元に走ってきた。
「アイツを倒すには、凍らせるしかないよ!」
「じゃあ、私が奴を引き付けます。アスカ様とミツキは、魔法で攻撃して下さい」
「大丈夫?」
「大丈夫です、最初の攻撃で奴の動きは見切りました」
「分かったわ! ミツキ、私達は、最強の吹雪の魔法を使うわよ!」
「分かった!」
「あなたの相手は私よ! かかって来なさい!」
エリスは、盾を捨て、マグマの番人に正面から向かって行った。
アスカとミツキは、魔法の詠唱を始めた。
エリスは、マグマの番人の細かい動きや視線で、動きを先読みし、フットワークで巧みに攻撃を避けていた。
(ノーモーションな事に気を付けさえすれば、ライデンの方が3倍は早かったわ……)
マグマの番人は、エリスを捕らえきれないとみて、広範囲に炎を吐いた。
「まずいわ……!」
エリスは、広範囲に炎を吐かれ、避けようにも避ける場所が無く、炎に浴びる覚悟を決めた。
「水よ!」
まさにエリスが炎に包まれる直前に、大量の水が滝のように落ちてきて、炎を防いだ。
ミツキが、魔法を唱え、水を呼び出したのだ。
その水量は非常に多く、完全に炎を遮断した。
「水よ! 冷気をまとい、我が敵を撃ち払え! アイシクルフェザー!!」
落ちた水が、冷気をまとい下から上へと舞い上がった。波のように盛り上がった水が、冷気を帯びていく過程で、キラキラ光る姿が、無数の羽根が舞い上がっているように見えるためこの名がついていた。
ミツキのアイシクルフェザーは、マグマの番人を一気に飲み込んで氷漬けにし、中央で赤い光が点滅していた。
「きっとあれがヤツの心臓部だわ! エリス! 私が魔法で加勢するから、アイツの心臓目掛けて、思いっきり振りかぶって剣を振り下ろして」
「?……分かりました!」
エリスは、一瞬アスカの意図が掴めなかったが、言うとおりにジャンプし、大きく剣を振りかぶった。
アスカが、エリスの振りかぶった剣目掛けて、ありったけの冷気の魔力を集束して放ち、エリスの剣に魔力が伝わり真っ白な光を放った。
「そのまま斬ってー!!」
「やーっ!」
エリスが気合と共に、剣を振り下ろし、マグマの番人の心臓部に一筋の線がビシッと走り、二つに裂けた。
心臓部の赤い光が消え、マグマの番人は消滅した。
「えっ……!?」
エリスが、剣を鞘に収めようとすると、剣が根元からポキッと音をたてて折れてしまった。
「エリス……ごめんなさい……まさか剣が折れるって思わなかった……」
「気になさらないで下さい。私の剣は活人剣です。人を守るために折れたのならば、剣も本望でしょう……」
「ありがとう……」
「見て!」
マグマ溜まりの消滅し、マグマの下には真っ黒に焦げた岩の床になっていて、その中心に下りの階段があった。
「この剣は……」
その剣は黄金の柄に、真っ赤な刀身の長剣だった。
「強い魔力を感じる……おそらく炎の剣よ。エリスさん、振ってみて」
「ええ……」
エリスが、剣を一振りすると、刀身から炎が巻き起こった。
「すごい剣ね……」
「はい……切れ味も鋭いです」
「エリス、その剣はあなたが使って。大きな戦力になるわ」
「はい」
アスカ達は、下りの階段を下ると小部屋になっていて、登りの階段が反対側にあった。
登りの階段は螺旋状になっていて、空まで届くのではないかと、思えるほど非常に長い階段だった。
やがて登り終えると、そこは岩山の頂上で、六畳間くらいの広場になっていて、下には雲海が広がっていた。中央に台座があり、黄色い宝玉が置いてあった。
「これがイエローオーブだわ!」
嬉々としてアスカ達が、オーブを取ろうとした瞬間に、ピカッと空が光った。
「きゃーっ!!」
激しい稲妻がアスカ達を目掛けて落ちてきた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。




