表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

第六章 雪の葬列

 それから数日後。

 雪の降る墓地を、黒い喪服の列が静かに進んでいった。

 クリスは涙をこらえながら歩き、ベルントはその隣で彼女を支えていた。


 そこへ、一人の使者が近づき、ベルントに二通の手紙を差し出した。

「アーベル氏宛の返書です。アーベル氏からあなたが代理人に指定されていました。それと、これはアーベル氏からあなたへの親書です。遅れてしまい、申し訳ありません……」


 ベルントは礼を言い、列から少し離れて封を切った。

 一通目を読んだ瞬間、彼の顔に微笑みが浮かんだ。

 だが、二通目を開いたとき、その表情は曇り、胸の奥に重いものが落ちてきたような気がした。


 ベルントは、クリスのもとへ戻り、一通目の手紙を差し出した。

「アカデミーからだよ……」


 クリスは震える指で文面を開き、ゆっくりと読み上げた。

「『我々には評価できないほどの大論文である……』」

その言葉は、ニルスの棺に向けた祝福のようだった。

 クリスは濡れた目のまま、満面の笑みを浮かべた。

「……ニルス、見てる?」

 クリスは、ニルスの棺に近づき、手紙をいっぱいに広げ、涙を流していた。それは悲しみだけでなく嬉しさも混じってのものだろうと、ベルントは思った。


 ベルントは、そんなクリスの様子にほんの少し口元を緩ませた。

 そして、コートの上から胸の内ポケットに触れた。そこには、二通目の親書……ニルスが死の直前に書いた、最後の手紙がしまわれていた。

 ベルントは、その文面を心の中で思い返した。


『親愛なるベルント・ホルンボエ君へ。

 もし僕が先に逝ったなら、クリスを頼む。

 彼女は、美人ではないかもしれない。

 しかし君も知る通り、本当に優しく、素晴らしい女性だ……』


 ベルントは、棺に語りかけるクリスを見つめ、静かにうなずいた。


『ベルント君。

 僕が……そんな素晴らしい女性の婚約者だった男が、決してつまらない人物でなかったことを、君の口から伝えて欲しい……』


 ベルントは、内ポケットの上に手を添え、小さく呟いた。

「……ニルス。お前の最後の手紙、確かに受け取った」

 雪が静かに降り続き、ニルスの棺を薄く、白く覆っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ