分断から絆へ
「ケイコさん、タツロー達の散歩をお願いできますかぁ?」
キッチンからタケシ君が声をかけてきます。
「はぁ~い。」
休暇時間が来たようですね。
毎週金曜日は深夜0時過ぎまで営業している『DAWAN』。
深夜営業に向けての仕込みで、16時から18時までは休暇時間が設けられ、タツローとミカは気晴らしの散歩が待っています。
「じゃぁ、行ってくるわね。」
「お願いします。」
二匹のワン子にリードをつけ、玄関を開けると、タケシ君が笑顔で見送り、クイーンが散歩に同行してきます。
◇◇◇
「「「こんにちは!」」」
下校途中の子供達が元気に挨拶をしてくれます。
「「ワン!」」
タツローとミカも元気に応えれば、子供達はよっぽど嬉しかったのか、はしゃぎながら駆け足で帰っていきます。
(つくづく不思議な犬よねぇ。)
タツローの歩く後ろ姿を眺めながら考えてしまいます。
(ただの犬なのに…
バイタリティーは半端じゃ無いし、腐れ縁の様な太い絆を抱え、しかも、その縁を元手に木之本夫婦の救済を達成するなんて…)
タツローの生き様を見るとき、私のこれまでの生き様に疑念を感じます。
「だから、貴女は占い師を演じているんじゃないの?」
不意にクイーンが、ツッコミを入れてきます。
私は苦笑するしかありませんでした。
「そうね、弁護士という力は、確かに強いけれど…
裁判に勝訴しても、和解をしても、何処かで分断を産み出してきた。」
クイーンは私に寄り添い、タツローとミカはゆったりと私の前を歩いています。
「私の欲しかったモノ!
傷ついた女性に私が送りたかったモノ!
それは絆…」
「そう、タツローがダダ漏れさせているモノよね。」
私の呟きに相槌をうってくるクイーン。
相変わらず、ミカと仲良く歩くタツロー。
「やっぱり絆が大切なのよね…
『絆』が有るから、嬉しくなれる…優しくなれる…」
「そして、強くもなれる!
護っていく事が出来る!」
私達が語り終わると、不意にタツローが立ち止まりこちらへ振り返る。
私は屈み込み、タツローを手招きする。
「何かありました?」
近づいてきたタツローを抱きしめて呟きます。
「ねぇタツロー、私も奥さんに迎えてくれない?」
「「「!!!」」」
私の口から漏れた本音に三匹が固まる。
「ギャワンッ!!」
数秒後、タツローの悲鳴が上がり、慌てて彼の顔を見ると
「ケイコさん。
冗談でも言わないでね、そんなこと!」
彼の頭に妻が噛み付いています。
「冗談じゃ無いわよ。
ミカちゃん、今後ともよろしくお願いね♪」
「ガゥッ!」
タツローの頭を噛んだまま、ミカはご不満いっぱいながら納得した様子。
「ゴメンねミカちゃん。
飼い主ともどもよろしくね♪」
クイーンが申し訳なさそうに鳴けば
「ワゥ?」
頭に噛み付いているミカともども、小首を傾げるタツローでした。




