お父さん、お母さん、ただいま♪
すっかり時間を忘れて話し込んでしまいました。
気付けば、陽は沈んでしまい、あたり一面真っ暗です。
「ミユキちゃん。
自宅まで送りましょうか?」
ケイコさんが笑顔で問いかけてきます。
「あ、あのぉ…。」
「ケイコさん、お願いできますか?」
私が返答する前に、カスミさんが返答されます。
「じゃぁ、善は急げというわね。」
ケイコさんは立ち上がると、いざなうように私に手をさし伸べてきます。
「よろしく…お願いします。」
私は彼女の手を取り、席を立ちます。
「さぁ、帰りましょ!
カスミちゃん、この娘のお代も私に付けといてねぇ♪」
「はぁ~い。」
ケイコさんに手を引かれ、お代を払うこと無く外に出る私。
「あ、あのぉ…。」
「ん?
気にしない、気にしない。
ささ、急いで帰るわよ。
親御さんも心配されているでしょ?」
戸惑う私の手をグイグイ引っ張り歩き始めるケイコさん。
そして、お店を出たところでケイコさんが一言…
「ところで、アナタのお家はどこかしら?」
どうやら、ケイコさんは勢いだけで動いてしまう方のようです。
◇ ◇ ◇
自宅に近づくと、父と母が涙を流し、悲壮な表情で歩き回っています。
私は両親のもとに走っていきました。
「パパ、ママ、ただいまぁ~。」
二人に抱きつき声を掛けると
「「ミユキ~!!」」
二人は私を抱きしめて、わぁわぁ泣き出してしまいます。
ひとしきり泣いて落ち着いた両親が改めて私の顔を覗いてきます。
「ミユキ…。」
父は私の顔をじっと見つめ
「ミユキ、探したのよ!」
母は安心したのか、私を怒ってきます。
「ごめんなさい。」
素直に私が謝ると、両親は再び私を抱きしめてきます。
ふと、振り返るとケイコさんは居ませんでした。
「どうしたの、ミユキ?」
母が優しく問いかけてきます。
「ううん、何でもない。」
私が答えると、私は両親に抱えるられながら、自宅の玄関をくぐりました。
いつもの夕食の団欒が、我が家に戻ってきました。
母の手料理に舌鼓を打ちながら、今日一日の出来事をみんなで共有する。
…そんな当たり前だった日常が、ようやく帰ってきました。
そして、私の話しを聞いている両親は、涙を浮かべながら何度も頷くのでした。




