落成と披露宴 ~カスミside
主人と二人だけで挙げた小さな結婚式から、やがて三年を迎えます。
今、私は白い花嫁衣裳に袖を通しています。
隣りでは、主人がトマトのような真っ赤な顔で来賓からの挨拶を受けています。
今日は、私たちの住まい兼喫茶店の落成式が挙行される予定だったのですが…
とある弁護士さんから
「折角の慶事だし、タケシさん達の新たな門出も祝いましょう!」
という謎の提案がきっかけで現在に至っています。
喫茶店の中央に設置された高砂。
高砂の周りは立食パーティーの装いで、喫茶店の落成式に来賓として参加頂いた、工事施工者『あけぼの工務店』の親方ミッチャンさんと、奥様のナツミさんを始め、チーちゃんさんご夫妻、ユッコさんご夫妻、そして、店内照明のアイデアで尽力頂いたハルカさんご夫妻。
皆さん全く同じ服装でびっくりしましたが、これもハルカさんの発案だそうです。
本当に童顔に見合うチャーミングな人柄ですね、ハルカさん。
そして、喫茶店のデザインを担当してもらった建築士のモトシマさんご夫妻に、運送会社のアズマさん、ケイコさんとミユさんご姉妹も落成式の来賓を兼ねて来て頂きました。
一番嬉しかったのは、パートに行っていたスーパーの店員さん達が来て下さった事。
「カスミちゃん、ご結婚おめでとう!
それと喫茶店の落成もおめでとう!」
短い期間でしたが、公私にわたり可愛がってもらったオバサマ達…いつの間にか店長さんまで来ていました。
オバサマ達は近所に住んでいらっしゃるようで、ちょくちょく遊びにも来ていただけるということでした。
今日の落成式兼結婚披露宴を開催するにあたり、ご協力頂いた結婚式場雲海山荘のスタッフの皆さんにはただただ感謝するばかりです。
貸衣裳から会場の設営、食事の準備にあとかたづけまで…。
全ての費用を式場側で負担されると聞かされた時には、真っ青になりました。
とある弁護士さんの取り計らい…ということでしたが、さすがに引き下がれません。
とりあえず、折半ということで決着したわけですが…大盤振る舞いでした。
本当に夢を見ているようです。
こんな沢山の人に支えられ、お祝いしていただけるなんて…夢にも思っていませんでした。
式典の締めくくりでケイコさんが挨拶して下さいました。
「…です。
本日の披露宴では、ご祝儀を一切受け付けません。
また、返礼品もございません。
ただ、ご祝儀を包まれたいという方がおられましたら…。
どうか、この喫茶店が開店した暁には、ご愛顧頂きたくお願い申し上げます。
新郎新婦もお客様に誠心誠意対応させて頂くことで返礼とさせて頂きます。
本日はご多忙の折り、沢山のご来場ありがとうございました。」
ケイコさんが深々と頭を下げれば、割れんばかりに響く拍手の嵐。
ほぼ一年前、私達夫婦は死んでいました。
そこへ舞い降りた二位の天使…ミカとタツロー。
二匹のワン子に促されるまま、今日という日を迎えました。
三年前は誰にも頼ることなく頑張ろうとして、挫折しましたが…
今は多くの人達に支えられて頑張れる私達が居ます。
ケイコさんの言葉を聞いて、主人も私も涙を流しています。
この涙は古い自分と別離するための涙…心の汗です。
夕方の有線放送が流れ始める頃には、私達の披露宴もお開きとなり、私達の長かった一日も終わるのでした。
さぁ、いよいよ明日が始まります。
ペット同伴喫茶「DAWAN」の営業初日です!




