落成と披露宴
無事に我が家のリフォームが完了した。
本日は、完工祝いの落成式が開催される手筈になって…いる…のですが…
「…」
玄関口を背に立っているのは、フロックコートを纏って緊張気味のタケシ君。
「…」
タケシ君の向かって左隣には、純白にフリルも愛らしいプリンセスデザインのウェディングドレスを纏い、こちらも緊張気味のカスミちゃん。
さて、タケシ君の隣に並んでいるのは、グレーのモーニングコートに身を包み、黒髪に染め直しているミッチャンと、これまたグレーのイブニングドレスに身を包み髪をアップにまとめたナツミ…胸元には太陽と入道雲をあしらったブローチが輝いています。
ミッチャン夫婦の隣には、全く同じ衣装を着たケンゴ・チーちゃん夫婦…チーちゃんの胸元に輝くのは赤い紅葉に黄色の紅葉をあしらったブローチ。
さらに、ケンゴ夫婦の隣には、以下同上のサトル・ユッコ夫婦…ユッコの胸元に輝くのは雪だるまと雪の結晶をあしらったブローチ。
それでは、カスミちゃんの隣を眺めてみると、ロック・ハルカ夫婦がミッチャン夫婦と同じ装いで、ハルカの胸元には桜の花をあしらったブローチが輝いています。
ロック夫婦の隣には、桜庭姉妹が、ブラックのフォーマルスーツ姿で並んでいます。
んで、姉妹の足元に箱座りで鎮座しているわたしとミカとクイーン。
そしてトリを飾っているのは、フォーマルスーツ姿のシンジ君とトオル君、トオル君の隣には、ブルーのナイトドレスに身を包んだユイさん。
「はいっ!
皆さん笑って笑ってぇ!」
写真屋さんが、三脚に載せたカメラを構えて手を降っています。
◇◇◇
「結婚披露宴をやっちゃいましょう!!」
唐突に声を発するトモダ。
ここは、ヤツの法律事務所です。
喫茶店開業に向けての各種書類をトモダとケイコさん、そしてタケシ君が準備・精査をしていました。
不肖わたしもオーナーとして首を突っ込む事になっています。
「何をヤブから棒に。」
ケイコさんが窘めますが、タケシ君固まってしまいます。
そう、彼とカスミちゃんは結婚式を挙げていません…まぁ、二人でそっと挙行してはいたそうですが。
たまたま戸籍謄本を眺めていたトモダがタケシ君に聞いたために、その話が出てきた訳です。
さて、その話を聞いたトモダさん…書類の精査と処理を進めながら、頭の中で卓上打算機を打ち続けていた模様で…。
「結婚披露宴をやっちゃいましょう!!」
という言葉が登場するわけです。
「何をヤブから棒に。」
ケイコさんが窘めますが、タケシ君固まってしまいます。
「いえいえ、開業祝いに慶事を重ねるというのは、良い事だと思いませんか?
桜庭センパイ!」
トモダがたたみ掛ければ
「それもそうねぇ…。」
思案を始めるケイコさん。
彼女が隣に視線を向けると困惑顔のタケシ君が居り、その足元にはわたしが居ます。
彼女は再び視線を後輩に戻します。
「それで、アナタの卓上打算機はどんな計算結果を導き出したの?」
ケイコさんがトモダに水を向けると、しめしめ顔の彼が答えます。
「はいっ!
披露宴会場は喫茶店を使います!
当日必要な貸衣装の手配から、お料理、スタッフまで…心当たりは全て手配できます!」
トモダ君、水を得た魚のようにハキハキしている…日頃の面倒くさそうな言動が嘘のようです。
「来賓は?」
ケイコさん突っ込む
「喫茶店と住宅の落成式を兼ねてますよね?」
トモダ君応戦
「確かに。」
ケイコさん納得
「それに、タケシ君達がお世話になった…或いは、これからお世話になる近隣住民を案内されてみては?」
トモダの言葉にガッチガチになるタケシ君…あ~あ、顔まで青ざめちゃって。
しばらくの沈黙が流れ
「採算は取れるのかしら?」
ケイコさん、重要な点に切り込む
「来賓の人数を制限しないといけませんね…
貸衣装代も馬鹿になりませんし…」
トモダ君、頭の中で卓上打算機の打ち直し再開!
「お捻りナシ!
参加自由であれば良いんじゃない!」
ケイコさんが提案すると、トモダ君の卓上打算機に新たな変数が加わります。
「どうせ、どこかの結婚式場のトラブル対応で、また♪慰謝料ぶんどり~の♪、♪貸しいち~の♪してきたんでしょ?」
ケイコさんがベロをちらっと見せれば、解ってましたかと肩を竦めてみせるトモダ君。
「そうと決まれば、善は急げね♪
ナツミちゃんに連絡しないと…」
早速スマホを取り出してナツミへ連絡を取り始めるケイコさん…これで、例の現場作業部隊に通達が回ります。
「それじゃぁ、僕はシンジ君とトオル君に…
っと、タケシ君!
書類の手続き等は僕の方で片付けて置きますから…
じゃぁ、相棒!
後は頼みますよ!」
「ワンッ!」
放心状態のタケシ君に変わって、わたしが返事をすると、笑顔で会釈をして、電話を始めるトモダ君。
さてさて、このタケシ君…どうやってお持ち帰りしましょうかねぇ。




