喫茶店完成
さて、内覧が終わり、一階の内装工事の打ち合わせが済んで半月。
いよいよ一階の内装工事も完了し、最終確認の案内がミッチャンからもたらされます。
まぁ、パート・アルバイトの早出が有った日には、帰宅途中に工事現場にお邪魔していた木之本夫妻…すっかりミッチャンやナツミ達とも親交を深めた二人には、歳の離れた兄貴、姉御が出来たようで、大変喜んでいた。
「鉄骨も、巧い具合に隠れてくれたでしょ?
カスミちゃん♪」
中央部へ設えられた飾り棚に手をおいて、胸を張って見せるナツミ。
「はいっ!
素敵な出来上がりです、ありがとうございます!」
もう、ナツミに抱きつきそうな勢いで返答するカスミちゃん。
「窓際のボックス席も、うまく配置しておいたからな…
って、ここは、タケルの頑張ったところだったな。」
満面の笑顔で話すミッチャン。
「師匠!ありがとうございます!」
ピッと背筋を伸ばすのはタケシ君。
「書斎机も、無事に置けたようね。」
本日もお目付け役のケイコさんが同席しています。
「ニャァ~~ン」
-(良かったわねぇ、坊や♪
お供のクイーンがわたしに語りかければ、書斎机に真っ直ぐ駆け出していくミカ。
程なくして、自分の座る場所を確保できると、早々に箱座りしています。
「ワゥ?」
-(どういう事?
わたしが首を傾げると
「あそこは、オーナー席よ。」
そう言って、わたしにウインクするケイコさん。
「ワウゥ~?」
-(オーナー?
「ええ、この喫茶店…いえ、この家全体のオーナーはアナタでしょ?」
ケイコさんが悪い笑顔になり、圧をかけてくる。
どうやら、これ以上食い下がると、いろいろボロが出てきそうなので、わたしは素直に頷くしかありません。
いつの間にかクイーンもミカの隣に箱座りしています。
「ペットにも居心地が良い空間に仕上がったみたいね。」
ケイコさんの褒め言葉に、全員が何度も頷きます。
(オーナーねぇ…。)
わたしは深くため息をつくのでした。
さて、玄関の方に移動していれば…
「後一週間もあれば、こっちは終わりますよ。」
陽気に語りかけて来るロック。
「で、相談なのですが、そろそろ屋号を決めてもらえませんか?」
追加でお話をするロック。
すると夫婦は笑顔で答えます。
「「ダワンで、お願いします。
ローマ字書きで…」」
そう言って、一枚の紙を渡すカスミ。
しばらく紙をじっと眺めていたロックが、おもむろに顔をあげます。
「分かりました。
デザインは、こちらに合わせれば良いですか?」
「ええ、お願いします。」
「あと、配色は…」
具体的な看板の位置を確認しながら話し込むロックと木之本夫妻。
「もうすっかり、自分たちの城ね。」
ケイコさんが、話しかけてきます。
「ワンワン!」
-(ええ、そうでないと困ります!
わたしは答えます。
「何だか、お父さんのように見えますよ。」
ケイコさんがおどけながらスマホを渡してきます。
『えっ?知りませんでした?
わたし、先月はじめに正式にミカの夫になったんですよ。』
わたしは、返答を出力します。
「ワンワン♪」
-(そうそう。
ねぇ~、ダーリン♪
おどけたわたしの隣で、ミカが身体を擦り寄せてきます。
「まぁまぁ、それはおめでとう。
元気な赤ちゃんを沢山産むのよ!」
「ワンッ!!」
ケイコさんに激励され、有頂天になるミカさん。
玄関の木之本夫婦も看板のイメージを語りながら、談笑がとまらない。
ロックの隣では、ハルカが我が事のように、あれやこれやと提案しては、全員の笑顔が弾ける。
一通りの打ち合わせを済ませ、解散となるはずだった打ち合わせが…そのまま前祝いの宴会へ現場に居た全員がなだれ込んでしまいます。
一人ヤレヤレという顔で、わたしの顔を見てウィンクしてくるケイコさん。
誰も彼も、笑顔が弾け、準備されたお酒も料理も片っ端から消費されていく…。
あ~あ、ミカとクイーンまで、座敷奥でじゃれ合ってますよ。
何だか今日は天井の抜けた人が多いようでした。
さて工事着工から八ヶ月を経て、いよいよ落成の日を迎える事となりました。




