午後の現場 ~外観編
耐震設備の設置が初日で完了するという快走ぶり!
落成も早いのかと期待感も高まる木之本夫婦と、早いとこホテル生活から退去したいわたし達…。
とは言え、物を造るというのは、そうそう都合よく行くものではありません…。
「早くても、半年は掛かります。
一年とまでは言いませんが、そのぐらいの猶予を下さい。」
工事現場の進捗確認の際、立ち会ってくれたトオルからは、そのように聞かされました。
同席していたミッチャンも、頷いていました。
タケシ君も、四六時中建設現場へ足を運ぶのもどうかと言うことになり、カスミさんがパート勤務している近所のスーパーの品出しのアルバイトを始めました。
当初は生活費を賄うことが目的だったようなのですが、近所の顔見知りを増やすという、新たな目的が誕生したようで、二人とも積極的にお務めに励んでいます。
わたしとミカは暇人なので、雨でも降らない限り、三日に一度の現場『偵察』を行っていました。
しかし、何だかんだで外装が鉄筋打ち出しのセメント浮き出し状態から一変して、レンガ壁調の建材パネルで覆われると、グッと喫茶店っぽい趣が増してきます。
アンティークのアーチ白窓と鉢植えが置ける程度の白い木目のテラスが据え付けられ、セイリングクロスで設えられたローリエ色のオーニングが、欧州風に拍車をかけてきます。
屋根もすっかり葺き替えられ、もはやおとぎ話に出てきそうな風合いの建物になっています。
「あら、すっかり見違えったわね。」
ケイコさんがすました顔で語りかければ
「オン♪」
-(ええ、ご機嫌ですよ。
「ワン♪」
-(私達の新居!
「ニャァ~~ン」
-(あら、私も居候しちゃおうかしら?
ケモノ達は、幸せそうにじゃれ合い始めます。
…すいません、わたしを踏んづけてじゃれ合うのやめてくれませんか?
ケイコさんはコロコロ笑うばかりでした。
やがて、着工から二月が経過し、ミッチャンから内覧のご案内が届きます。
日取りを決め、謎のドレスアップを済ませた木之本夫妻。
「さぁ、行きましょう!」
何故かケイコさんがお供になって、いざ自宅へ向かって出発します。
浮いた外観が見えてくると、燥ぎだす木之本夫妻…よっぽどお気に召したようで、本当に楽しそうに談笑しながら歩いている。
「ワァウ。」
-(すっかりご機嫌だねぇ。
わたしが呟けば
「オン♪」
-(そうねぇ。
ミカも嬉しそうに答えてくれます。
「あれだけ可愛らしいと、気分も高揚するんじゃないかしら?」
ケイコさんまで乗っかてくれます。
外観はほぼ完成し、感嘆の声を上げる木之本夫妻。
背広姿のミッチャンも誇らしげに胸を張り、同じくビジネススーツにタイトスカート姿のナツミさんが、木之本夫婦に外観の説明をしています。
「ワァ~ウゥ。」
-(相変わらず美人だなぁ、ナツミさん。
ミッチャンも素敵な嫁さん貰えて良かったよねぇ。
わたしが呟けば
「ガウッ!」
-(浮気っ!
”ガブッ!!”
「ギャワンッ!」
ミカがわたしの鼻頭に噛みついてきます。
「こらこら、はしゃがないの♪」
ケイコさんが窘めてくれるのですが…すいません、ミカを何とかしてくれませんか?
内装は、まだまだ配線・配管が露出していたり、壁の一部が剥きだしのままです。
しかし、予想以上の出来栄えに、木之本夫婦はすっかり有頂天!
ナツミさんも釣られて笑顔全開!
ミッチャンが引き気味になるくらい、三人の談笑に花が咲き乱れています。
「ワゥ!ワゥ!」
-(ちょっと、あそこ見てよ!
わたしたちの新しい寝所ですって!
二階のリビングの奥に設えられた大型の二段ボックスを見て、興奮を隠さないミカさん。
「ワンワン♪」
-(ん~、これで、子供もお迎えできる♪」
あ、言い忘れてました。
わたし事ですが、先週のはじめに成犬致しました。
そして、成人した日も終わらない内にミカお母さんがお嫁さんになりました。
…ええ、どのような恐ろしい顛末が在ったのかは内緒にしますが、わたしも一家の大黒柱になりました。
今しばらくは工事が続くようですが…。
一階喫茶店の完成予想に期待が膨らむ木之本夫婦。
自分たちの生活空間が俄然良くなってしまう事が待ち切れないミカさん。




