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追憶と回想 その3

 さて、俺達全員、結婚式を挙げていない。

 勿論、婚姻届けは提出していたので、夫婦になった事は間違いなかった…。

 ただ、女性というモノは、親御さんも含めて結(・)婚(・)披(・)露(・)をしたいようで…。

「ハァー、私、純白のウェディングドレスを着たかった…。」

 というのが、ナツミの口癖だった。

「ハルカだって、同じ気持ちだろうし…。

 折角なら、お腹も大きくならないうちに…ね。」

 アイドルを引き合いに出すのがあざといところではあるが…。


 妻の花嫁姿は、是非見てみたい!


 という訳で、話題になっているい(・)ん(・)た(・)ぁ(・)ね(・)と(・)なるモノを利用したいのだが、使い方も…そもそも、どこで使うことが出来るのかも分からない。

 ラジオで聞いた情報を頼りに、タツローへ相談する。

 ヤツは、ソッチ方面の仕事に就いていたから、何か分かるだろうと…。

『分かった、ちょっと調べてみる。』

「スマンが、みんな金欠でさぁ、披露宴までは要らない!」

『結婚式だけで良いんだな?

 あと、四組分だよな?』

「いや、ハルカちゃん達だけでも良い。

 …本当は、ナツミの花嫁姿も見てみたいけど、贅沢だろ?」

『そんなことは無いさ!

 大好きなんだろ、嫁さんの事?』


 まぁ、そんな他愛ない電話が、彼と交わした最期の言葉になってしまった。


 電話をした翌日、桜庭先生が後輩君を従えて、家(うち)にやって来た。

 後輩君の名前は、友田というヒヨッコ弁護士。

 彼が弁護を担当していた結婚式場が、危機的状況で、可能であれば俺達の結婚式に利用して欲しいというものだった。


 結論からいえば、件の住宅メーカーがありもしない結婚話を持ち込んで、式場側が振り回された!という話だそうな…勿論、挙式予定だったのは、アホ御曹子とハルカちゃん。


「慰謝料は、先方からしっかりむ(・)し(・)り(・)取(・)り(・)ました。

 しかし、購入した食材や衣類が腐ってしまうので、人助けと思い、使ってはいただけないでしょうか?」

 思ってもいなかった提案に、妻と二人手を取り合い、二つ返事で了承した。


 そこから怒涛の一月(ひとつき)が流れ…身内だけの四組夫婦の合同結婚式(・)と(・)披(・)露(・)宴(・)が、件の結婚式場で開催された。


 家族など、ごく近しい人だけを招待した筈が、どこで話題が漏れたのか、取引先は勿論、元勤め先(土建屋)からも、多数の来賓を頂き、おひねりも含め、盛大なモノになってしまった。


 後日談になるのだが、この結婚式…友田弁護士とタツローが裏でツルんでいたらしい。

 お蔭さまで、仕事も順調に軌道に乗るどころか、大盛況で全員嬉し涙が止まらない日常を迎えるハメになってしまった。

 いずれにしても、タツローにはデッカイ借りが出来てしまった。


 ………


 あれから十数年、桜庭先生の口から、久しぶりにヤツの名前を聞いた。

 何でも、自宅をリフォームしたいとの相談…。

 俺は二つ返事で了承した後、妻や他のメンバーに連絡し、応援態勢をガッツリと整えた。


 ただ、仕事に向かう前日、一つの事実を桜庭先生から告げられる。

「タツローさんは、死去しました。

 今回の仕事の依頼主は、彼の意思を継ぐ男性です。」

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