追憶と回想 その1
「ったくぅ!
ロックの野郎っ!
さっさとコクりやがれぇ!」
俺が歯ぎしりすれば
「ンットにもぉ~。
ハルもコクっちゃいなさいよぉ!」
隣に並んだ女子生徒の右拳にも力が入る。
夕日に映える丘の上、高身長のブレザー制服姿の男子生徒とセーラー服姿の小さめ女子生徒が俯いてモジモジしている。
そんな二人の姿を、丘の麓にある雑木林の影からヤキモキしながら眺めている、俺ら男女混合の一派。
俺の名前は、相田 充輝。
そんで、俺の隣でイラついている茶髪ポニーテールっ子は、新田 奈津美。
「アタシらみたいに、さっさとコクれば、楽なのにねぇ~。」
茶髪でソバージュを肩まで降ろした女子生徒、秋元 千鶴が相方に水を向ければ。
「ああ、そうだ!」
俺の相棒、三輪 賢吾が応える。
「人には、それぞれの事情が有るんです。」
二人を嗜めるのは、もう一人の相棒、佐渡 悟。
そして、ヤツの右腕に抱き着いて首を縦に振っている黒髪ロングの女子生徒は、冬馬 由美。
俺達全員と、今まさに丘の上でヒロインを演じている、黒髪セミロングの女子生徒、春日部 遥は、同じ高校に通う同級生同志だ。
そして、なかなかコクらねぇ、フザケタアイツは、私立進学校(男子校)に通ってる、関 幸太郎。
んでもって、今日は高校生最期の日…そうさ、俺達は今日、高校を卒業したんだよ!
煮え切らないアイツらも、そろそろ年貢の納め時って訳よ!
「もぉ~、早く決着付けて貰わないと、私の恋路も停滞するんだけどっ!」
そう言って、ナツミが俺を睨んで来る。
「はいはい、ナッちゃんのところも、拗らせてるもんねぇ。」
チヅルがおどけてみせれば
「チーちゃんは、節操無さ過ぎ!」
ユミがツッコミを入れる。
「そう言う、ユッコも見せつけてくれるわよねぇ。」
イライラのナツミは、ユミにも噛み付いてしまう。
そう、俺達は付き合ってる。
まぁ、厳密にいえば、丘の上の主人公達が無事交際をスタートしたら…という協定だったんだけれど、ソイツを律義に守ってるのは、俺達だけ、残りのバカップル二組は、アツアツに出来上がってやがる。
「あっ!」
チヅルの声に、全員が丘の上へ視線を向ける。
片や身長190cmの細マッチョでヤサ男のロック。
あんにゃろーは、他校生にも係わらず、我が校の人気アイドルをかっさらいやがった不届き者だ!
対するは身長145cmの愛くるしい乙女、我が校の人気アイドルハルカちゃん!
そんな二人が手を取り合い、お互いの視線を合わせる。
「………。」
ボソボソとロックが語りかける。
「聞こえねぇぞぉ!」
俺がぼやけば
「あの体格で小心者って、アリィ?」
ナツミも合いの手を入れてくれる。
程なくすると、頬に涙をいっぱい浮かべるハルカちゃん。
「「「まさか、振ったのか?」」」
変に色気づくヤローども。
「「「そんな訳無いでしょ!!」」」
相方に厳しい裏拳でツッコミを入れる女性陣。
まぁ、二人は無事に抱き合って、交際がスタートした訳なのだが…。
「ねえ、タツロー君は来てないの?」
ナツミが俺達に聞いてくる。
「アイツ…タツローなら…。」
俺が答えかけたところで、サトルが割り込んで来る。
「進学の都合で、卒業式終了直後、首都圏へ出発して行ったよ。」
「本当は、彼にも見せたい光景だったのにね。」
ユミが残念そうに、言葉を付け足す。
今、俺達が全員付き合って居られるのは、タツローのお陰だ。
そもそも、俺達と彼女達…学校でも人気が有る『四姫』メンバーとの接点は皆無だった。
俺達が付き合う事になった発端は、ハルカちゃんが、ロックを好きになった事。
ロックとは、シマ争いでちょくちょく顔を合わせる事もあれば、喧嘩だってやったことが有る…まぁ、俺達の一方的な言い掛かりだったんだけどな。
ハルカちゃんの気持ち…
「関さんとお付き合いしたい!
紹介して欲しい!」
という言葉を聞いた時は、動転してしまった。
学校一のアイドルからの頼みに応える事、しかし相手は気に食わないアイツ…その葛藤が、ハルカちゃんをロックの前で凌辱しようという、おかしな方向へ発露しそうになった時。
「お前らアホだろ?
惚れた女が幸せになろうとしてるんだ!
邪魔をするのは、アホの所業だぞ!」
そう言ってきたタツローと初めて喧嘩した。
喧嘩の決着は着かなかったけど…ボッコボコに顔面を膨らませた俺達は約束した。
とにかく俺達は、二人を応援する!
惚れた女の恋路を全力でサポートする!
それから先は、本当に楽しかった。
デートプランをみんなで考えたり、デート中の二人にバレないように警護をしてみたり…そんな中で、ハルカちゃんの取り巻き四姫とも知り合い、現在に至っている。
因みに四姫の由来は、彼女達の名前に四季が折り込まれている事が由来している。
まぁ、ナツミの名前には四季を司る文字が含まれて無いんだが、読みで語呂合わせになっている。
とにかく、学校で一位二位を争う美人集団とお付き合いするハメになり、俺達自身もイロイロと大変な事になる…
大変な事にはなったが、こうして友人同志が恋人へ変わる瞬間に立ち会えた!
これを青春真っ只中!と言わずして、何だって話だ。




