同窓会 その3
トオル君夫妻は、相当に優秀なようで、三日と待たずにリフォーム案を提示してきました。
当然のように耐震設備から、補強箇所の追記と補強什器の説明まで付いています。
タケシ夫妻が喜んだのは、二階の部屋割りで、4Kから3LDKへの変更とユニットバス追加という状態…。
まぁ、今までの住まい自体が2K程度しか利用していなかったという事も有るのですが…。
一階部分もだいぶん手が加えられています。
倉庫と化していた住居区画は撤去され、二階へ上がる階段の下方空間を利用して、手荒いセットが付いた従業員控室が出来ました。
そして広がった店内は区画整理が成され、ちゃっかり書斎机も一式鎮座しています。
出来上がった図面と参考イラストにご満悦の木之本夫妻とケイコさん。
(それにしても、この限られた空間で、よくここまで改装出来るもんですねぇ。)
わたしは感嘆しました。
確かにトオルは昔からパズル等が大好きで、所謂『落ちゲー』をやらせれば、『ゲーセン』で無敗を誇る逸材ではありました。
(オマケに外観も内装もすっかり欧州の田舎に在りそうな古民家調に改められて…はは、親父が見たらどんな顔するんだろう?)
わたしも改装後の出来栄えにいたく満足しました。
「よかったわね、坊や。」
わたしの気持ちを察してくれたのか、ミカも笑顔で問いかけてきます。
「うん、ありがとう。」
素直に答えると、彼女はわたしに身体を寄せて来るのでした。
さて、ゆっくりしているわけには行きません。
書類を受け取り、役所へ向かい改築の認可申請の手続きを行います。
さらに二日後、役所からの改築許認可を受けたところで、改装の本番スタートです。
玄関でタケシ君とケイコさんの三人…もとい、二人と一匹で待機していると、解体重機を積んだ4tダンプが、2台の軽トラを従えてやってきました。
「コンチハァ、あけぼの工務店ですぅ。」
4tダンプのドアを開き降りてきたのは、独特な語尾が特長のミツテルこと、通称ミッチャン。
年甲斐もなく、金色の短髪に、金色のチェーンを首に巻き、灰色ダンダラ模様のチョッキと迷彩柄のニッカポッカ姿。
「先生、仕事ありがとな。」
手前の軽トラから降りてきたのは、人懐っこいケンゴ。
こちらも、ミッチャンといいとこどっこいの、金色の短髪に、オレンジと黄色の派手なツートンカラーのチョッキと明るい紫色のニッカポッカ姿。
「よろしくお願いします。」
奥に停まった軽トラから降りてきたのは、礼儀正しいサトル。
アッシュグレーの角刈りに、紺でまとめたチョッキとニッカポッカ姿。
わたしは思わず固まってしまいます。
高校時代、一緒に遊んでいた連中…それも、名を轟かせていた悪ゴロトリオの揃い踏みです。
「今日から、この現場、よろしく頼むわね♪」
ケイコさんの問いかけに、すっかり日焼けした三人が笑顔で答える。
確かミッチャンが棟梁を張ると思うのですが、服装の落ち着き具合を比べれば、サトルが一番棟梁然としています。
三人が揃ったところで、改めて施主の紹介を始めるケイコさん。
「みんな、よろしくね。
で、こちらが、ご依頼主の木之本さん…。」
三人とも、高校時代の面影が良く残っています。
何かに打ち込む真剣な眼差しなど、いろいろ悪さをしていた時の眼差しと寸分違わず、吹き出しそうになってしまいます。
「アゥ~。」
ー(みんな、いい顔になったなぁ。
思わずつぶやいてしまいました。
ケイコさんもなにかを理解したのか、私の頭を優しく撫でてくれました。
「…、というわけでトオル君の図面を参考に、作業に入ってください。」
「了解ぃっすぅ!
よぉ~し、ケンゴ、サトル。
がんばんぞ!」
「「おぉ~!!」」
ケイコさんの指示を受け、棟梁ミッチャンの檄が飛べば、拳を掲げるケンゴとサトル。
そして、今日も案内係のタケシ君。
「オウ、坊主!
現場入るんなら、コレ被っとけ!」
ぶっきらぼうにヘルメットをタケシ君に渡すミッチャン。
昔とちっとも変わらない、優しくて不器用な彼の所作を見て涙が出てしまいます。
四人が自宅に入ったところでケイコさんが、わたしにタブレットを向けながら話しかけてきます。
「アナタは、高校を卒業した彼等のことをどの程度覚えているのかしら?」
『お恥ずかしい話しですが、結婚したことだけしか…。』
「そうね…。
まぁ、紆余曲折は有ったみたいだけど、今じゃ全員、子分持ちの棟梁さんよ。」
ケイコさんは、わたしに向き直ってきます。
「せっかくだから、その紆余曲折話でもしましょうかしら?」
『お手柔らかにお願いします。』
そう言って、わたし達は自宅を眺められる筋向かいのコンビニへ移動します。
本日は、部屋のタイルや廊下の解体です。
ホコリやチリが舞う恐れがあるので、ミカは終日ケイコさんのお住まいへ避難し、カスミさんは本日からバイト店員を開始します。
それぞれが新たなステージに立とうとしていますね。




