同窓会 その2
さて、暑苦しい連中が一旦荷物整理で姿を消した頃、これまた細身の男性が大きなアルタートカバンを肩に掛けてやってきました。
彼にも見覚えが有るのですが…。
「先生、ご依頼の物件はこちらでしたでしょうか?」
「!!!」
彼の声にビックリしたわたし。
「ええそうよ、トオル君。
今二階でシンジ君達が荷物の運び出しをしてるから…。
取りあえず、外観の確認からお願いね。」
「分かりました。
おい、ユイ行くぞ!」
「はぁ~い、あなた。」
ケイコさんの指示を受け、家の調査を始める一組のカップル。
『トオルって、もう少し太ってたはずだし、いつの間に結婚した?』
思わずタブレットで質問してしまうわたしにウィンクしながらケイコさんは答えます。
「彼は、五年前に糖尿病が原因の病で生死をさまよった事があるの。
まぁ、その時にダイエットを決意し、手助けしてくれた方が、あの奥さんというわけ。」
『そうですか。』
正直感慨深いものがあります。
まさか、あの夕日で再会を約束した三人がここに集うなんて…ああ、わたしは一人じゃなくて一匹になったのでしたね。
それにしても、生活と仕事にすっかりかまけていたわたしは、どれだけ他人を見過ごして来たのでしょうか。
そう思いため息をついていると、ケイコさんが悪戯っぽい笑みを浮かべてきます。
「まだまだ、タツロー君の同窓会は続くわよ。」
(絶対、この人愉しんでるだろ!)
と心の中で叫びつつも、同級生二人の活躍が眩しく見えるわたしでした。
昔話も一段落したところで、わたしとケイコさんにタケシ君が声をかけてきます。
外観の確認を済ませたトオル夫妻も同行し、わたしたちは二階に登りました。
待ち構えていたのは、開かずの扉が二枚。
扉を開けるかどうか悩んだタケシ君が、ヘルプを求めて来たのです。
「開けましょう。」
「わん!」
ケイコさんとわたしの返答に頷き、元書斎寄りのドアを開くタケシ君。
部屋の中には骨蕾と遺影が一枚、床に置かれていました。
ケイコさんは、一礼すると部屋に入り、骨蕾と遺影を取り上げ、わたしに見せます。
「お母さんの遺骨と遺影ね。
お父さんと同じ所に弔いましょう。」
「わん!」
わたしはケイコさんに賛同の意を示し、彼女も了承しました。
誰も邪魔をせず、成り行きを静観していました。
もう一つのドアをタケシ君が開きます。
部屋一面に新聞紙が覆いかぶされて、何かを隠しているようです。
こちらもケイコさんが部屋に入り、ある部分の新聞紙を取り払います。
「まぁまぁ。」
ケイコさんは思わず感嘆の声を上げ、隠されていた正体をわたしたちに示します。
「陶磁器製のティーセットよ。」
後に知ったことなのですが、ここに在った食器のほとんどは純白の陶磁器製で、資産価値まで付くようなシロモノでした。
「さてさて、これは誰の遺産なのかしら?
シンジ君、この食器たちも新しいお店で使うから、大切に運び出してね。」
「ガッテン、承知!!」
決めゼリフとポーズを決めると、シンジ一行は準備のために階下に移動しました。
「それじゃ、トオル君も開いた部屋から順次確認を進めてね。」
「分かりました。」
ケイコさんにお辞儀をし、わたし達の寝室へ移動していくトオル夫妻。
「あ、忘れてた。
トオル君、一級建築士で腕は確かだから。」
『分かってます。』
ケイコさんは、変なところでお茶目が過ぎるようです。
荷物の払い出しも無事に終了。
耐震の確認も兼ねたリフォーム下準備も完了したところで、本日は解散となりました。
解散後、ケイコさんに伴われ、わたしは父の墓に母の遺骨を安置してきました。
これで、長年心に積もっていたわだかまりも、少しはガス抜きができたのかもしれません。
ケイコさんにお礼を述べ、わたしは帰途につきました。
ケイコさんは、目を細めて、わたしを見送ってくれました。
まぁ、帰宅途中に二回ほど子供とお巡りさんに追い掛け回されたのはナイショの話しです。




