同窓会 その1
自宅の改修が始まりました。
当初は、一階と外観の手直しだったはずなのですが…
改築の申請を提出した際、役場の指導が入り、耐震補強もすることになりました。
おかげさまで、わたしたちは二ヶ月程度で済ませる予定であったホテル住まいを延長するハメになってしまいました。
え、マンスリーアパートは借りられないのか?ですって。
まぁ、アパートを即座に借りることが出来なかった原因はわたしとミカの存在でして…。
ペット同居物件、しかもワン子を許容してくれるマンスリーアパートなんて、見つかる訳が無いんです。
やむなくペット同伴ホテルへの引っ越しとなりました。
ちなみに、宿代などの問題については、トモダ君の尽力もあり、わたしの生命保険(死亡保険)金が宛がえられる事になりました。
勿論、保険金の受取人はタケシ君に落ち着きいたので、家の改装資金やら、喫茶店の開業、運転資金の方にも目処が着きます。
閑話休題
自宅からは、衣類など必要最低限の生活品をホテルの方に運び出しを済ませ、本日は家財の移動に立ち会うべく、わたしとタケシ、そしてケイコさんが顔を揃えました。
因みに、カスミはバイトの面接があるため、お昼頃に合流予定。
ミカは庭のはずれに、ビロード系の毛布を敷いてお昼寝中。
ミカの隣には、クイーンまでもが、ご相伴に与るように、こちらも気持ち良さそうにお昼寝中です。
家財は一度貸しコンテナに保管することになっています。
「やぁ、先生。今日はご贔屓に、どうも!」
運送屋の上着を羽織った筋骨隆々のマッチョオヤジと、そのお供達。
「シンジ君、よろしくね。」
ケイコさんが笑顔でお願いすると
「ガッテン、承知!!」
どこかで見たことが有るようなポーズを決めると、手下どもを引き連れて家の方に入っていきます。
「アゥ~~。」
ー(シンジ君…なのか?
マッチョオヤジの顔には見覚えが有ります。
私が中学時代の同級生シンジ君です。
彼は心臓に病が有り、その身体の余りの細さに『もやしっ子』と言われていたのに…。
まぁ、筋骨隆々の逞しいマッチョオヤジになっています。
タケシ君は、彼らと一緒に家に入ります、荷物の運び出しの指示係ですから。
「驚いたかしら?」
ケイコさんは、イタズラっぽく問いかけてきます。
『ええ、ビックリしました。
たしか、シンジ君は心臓に病が有って…。
あんなに逞しい肉体を手に入れられるはずはなかったのに…。』
わたしは心の奥底をタブレットで吐露します。
「そうね…。
中学を卒業して、アナタと別れた彼は、一念発起したみたいね。
それから二年後、基礎体力も持久力も着いた彼は、心臓の病を治す手術に臨んだ。」
ケイコさんは、わたしに真っ直ぐな視線を向けます。
「鍛え上げられた、彼の精神と肉体は、長い手術に持ちこたえ…
現在に至っているのよ。」
可愛らしくウインクするケイコさん。
『それじゃ…。』
わたしの胸に期待が膨らむ。
「まぁ、激しいスポーツや長時間の仕事はさせられないけど、日常生活に支障は無いわね。」
ケイコさんが、わたしの気持ちに応えて頷いてくれます。
「それに、健康になってアナタに再会することが彼の目標だったから…。」
わたしの脳裏に微かに残っている思い出。
沈む夕日を眺め、わたしとシンジ、そしてもう一人の友人…男三人で約束した事。
「同窓会で再会したら、修学旅行で行った、あの温泉に行こう!」
わたし達は、無類の温泉好きで、暇が出来れば温泉・銭湯に出かけていました。
ただ、シンジ君が長いこと湯舟に浸かっていられないため、彼だけは、いつも休憩室で待ちぼうけでした。
『彼と行きたかったのは、湯布院の金鱗湖にある『下の湯』。
外から見学しただけで、入れなかったんだ。』
あの露天風呂に浸かり、観光客の視線を集める…そんな贅沢を味わってみたかったのです。
「ふふふ、お楽しみは、まだまだこれからよ♪」
意味深な言葉と笑顔を向けるケイコさん。
さてさて、何が待っているのでしょうか?




