放逐されたワン子
私の名前は「ミカ」。
この草原に放逐されて五回目の満月が過ぎました。
物心が着いた頃、私の周りには沢山の動物達が居ました。
おしゃべりな山羊と羊の家族と、おしゃべりならばこちらも負けていないモルモット達。
ロバの夫婦にリクガメ一頭と、遊び大好きなウサギ達。
そして、私を含めた犬が十頭程度。
木造の寄宿舎や土のグランドで、追い掛けっこをしたり、ご飯を食べてお昼寝したりと、自由気ままな生活を送っていました。
遊ぶと言えば、人間の親子連れが、私達の住家にやって来ては、一緒に遊ぶこともありました。
また、私達の仲間を自動車に乗せて、小さい人間の子供達が沢山居る所、又は、人間のお年寄り達の沢山居る所へ遊びに行く事もありました。
自動車を運転していたのは、私達の飼い主さん。
いつも沢山のご飯を準備し、笑顔の絶えない白髪混じりの夫婦さんでした。
しかし、私がこの大草原に放逐される頃には、夫婦の笑顔は失われてしまいました。
突然訪れた『厄災』…ある日を境にお客様がパタリと来なくなりました。
そして、私達は出かける事も無くなり、日がな一日寄宿舎内に留まる日々が始まります。
徐々に居なくなる動物達…ウサギとモルモットが団体で引き取られ、ヤギやヒツジも姿をくらませ、ロバの鳴き声も同じ頃に途絶えました。
「ペットブームに肖りたい…」
と夫婦が呟いていた事を覚えています。
室内飼い出来そうな小型犬も姿を消し、残ったのは私のような中型犬と二頭の大型犬。
「俺達、どうなるんだろう…」
大型犬の方が不安を吐露していましたが、結局彼らのその後を知りません。
「久しぶりに、広場で遊ぼう!」
精気の無い顔をした飼い主に連れられ、自動車でやって来たのが、この『大草原』でした。
何回かのボール拾いを楽しんだ私達。
「よぉ~し、次はこれを取って来るんだ!」
見せられたのは、今まで見た中で一番小さなボール。
樹木の又のような道具に乗せられたボールは勢いよく、遥か彼方に飛んでいきます。
「さぁ、取って来るんだ!」
「わんっ!」
ボールの飛んで行った先、飼い主の指差した方向へ必死に走り出す私。
この時は知りませんでした、これが彼らとの今生の別れになってしまうという事を…。




