占い師 ケイコside
「こんにちは。」
慣れた手つきで開いた扉、そして、眼前には見慣れた風景。
「こんにちは先輩、今日はどのようなご用向きでしょうか?」
部屋から挨拶をして出迎えてくれたのは、この部屋の主、友田弁護士。
「ええ、ちょっと聞きたい事が有ってね。」
私がにこやかに応えれば、ジェスチャーで部屋へ案内してくれる友田君。
二人向かい合ってソファーに座れば、おもむろにガラス工芸の灰皿を取り出す彼。
「それで、聞きたい事とは?」
早速タバコをくゆらせ始める彼。
「ええ。」
わたしもタバコをくゆらせる。
「太田 達郎君について…」
「タツローの事ですかぁ…」
私の質問に後頭部をかきながら、ゆっくり立ち上がると、書棚を捜索しはじめる彼。
「こちらになります…ご覧ください。」
五分程して手渡された、真新しい紙ファイル。
それを受け取り、内容を確認すれば…うんうん、期待通りに纏められている。
彼は再び私の向かい側に腰掛け、二本目のタバコに火を付ける。
「…。」
しばらくの沈黙が流れる。
途中、二、三回ほど事務所の電話が鳴り、その都度電話対応に動く彼は、特に断りを入れて来ない。
私も気にせず資料を読みふける。
やがてタバコも四本目を吸い終わり、一通りの内容を精査し終えた、私が顔をあげると、彼は質問して来た。
「それで、先生がタツローの何を知りたいんですか?」
「そうねぇ、生い立ちに本人の性格、そして、彼の住んでいた所の話かしら。」
「まぁ、記載してある通りですけどね。」
「あら、貴方の親友なんでしょ?
もう少し掘り下げていると思ったわ。」
私の返答に苦笑する彼。
「あははは、参ったなぁ。
やっぱり先輩には勝てないですね。」
「それで、ここに書かれていない事で、私に話すことは無いの?」
私は詰問に入ると、彼の雰囲気もガラリと変わる。
「まず、現実的で無いところから話しましょう。
彼は死去しています、警察に確認して死亡通知も取りました。」
「そうね、戸籍の抹消処理も終わっていたわね。」
「ええ。
でもね…彼は、生きているんですよ。」
「あらあら、現実至上主義の貴方から変な言葉が飛び出して来たわね。」
私が含み笑いを浮かべれば、彼は申し訳なさそうに応える。
「そうですね、こんな非現実的な事を言うとは思いませんでした。
むしろ、そう言った点では、先輩を散々馬鹿にしてきた自分を申し訳なく思っています。」
そう言って、彼は深々と頭を下げた。
「それじゃあ、彼と話したのね?」
「はい、スマホを通してですが、ちゃんと意思疎通出来ました。
アイツは…あのワン子は、タツローに間違いありません。
イタズラ好きで人情家、そして生真面目で優しいアイツに間違いありません。」
彼は涙を流し、嗚咽を漏らしている。
「そう…それはよかったわ。」
私は彼の肩にそっと手を添えた。
小刻みに震える彼の肩。
「実はね、彼の家をリフォームする相談を受けたんだけど、コンセプトが思いつかなくってねぇ。」
彼の肩をパンパン叩けば
「えっ?
そうなんですか、せんぱぁ~い♪
ひどいなぁ、そういう事は先に言ってくださいよぉ♪」
涙目ながら、私のノリに便乗してくれる彼。
「であれば、先輩好みの面白い話しがありますよ!」
そう言って席を立ち、嬉しそうに書棚を触り出す後輩君。
(うんうん、やっぱり友田はこうじゃないとね。)
彼の後ろ姿を眺めながら、また一緒に仕事が出来そうな気持ちになった。




