不可解な住民 ケイコside
「まったく、ビックリしたわよ。
半年前に亡くなった人の家を、血縁やら家系などの関係が全くない夫婦が譲渡を受けるなんて…。」
居間のソファーに寄り掛かって、大きく伸びをしている妹。
彼女はこの部屋の主にして、私の可愛い妹、美優。
日中、住民課の窓口でタケシ君たちの応対をしていた女性。
「そうね、かなりカワリモノの物件ね。」
そう言いながら、私はインスタントコーヒーの準備をしている。
「でも、お姉ちゃんがフォローしてくれたから、一安心かしら…。」
ソファーから私を見上げる妹。
「もう、ミユは、そんな事は言わないの!」
コーヒーの入ったマグカップ二つを持ってソファーに近付いた所で、妹の額にワザと肘をぶつけてやる。
「イテッ!」
妹はオデコを押さえ、私は、妹の隣に座った。
そう、本当に不可解なペアだった。
「タツローさん、はじめまして。
ところで、あなたたちは何の目的でこの街に来たのかしら?」
直感的に、まわりくどい話しは避けた方が良いと判断し、単刀直入に彼らの真意を聞いた。
『食と住を満たすためです。
それ以上でも以下でもありません。』
流暢な日本語が読み上げ音声を通じて返って来る。
「それなら、わざわざココに来る意味は無いと思うんだんけれど?」
『おっしゃる通りです。
それでは順を追って説明します。』
………
そう言って、事情を事細かく説明してくる犬は、どう考えても犬のソレではなく、明らかに人間の思考だった。
タケシ君に質問してみても、タツローとの関係性について言い澱む事は無かった。
そして、事実として残った事は『半年前に亡くなった亡霊が犬に乗り移り、自己の資産を引き取りに来た。』というもの…。
「ひょっとすると、半年前に亡くなった人がワン子になってるかもしれないわよ。」
「ええっ!!」
私がカマかけると大声を上げてしまう妹。
慌てて口を押さ、周りに迷惑をかけていないものかと、左右に首を振っている妹に、思わず苦笑してしまう。
「ところで、木之本さんはどういう方達なの?」
「さぁ~て、どのような方達なんだろう?」
妹の質問をはぐらかし、居間の窓から見える風景に視線を移す。
「わたしにも解らない事が多すぎるわ。
周到過ぎる一式の書類に、辻褄の合い過ぎる話の数々…。」
私が呟けば
「まぁ、件の住宅への侵入手段が無かったのは事実だし…。」
妹も提出されていた報告書を眺めながら頷き
「だって、あの家の鍵ってキーロック式で、解除方法は本人しか解らない仕掛けになっているのよねぇ…。」
大きなため息をつく。
私は含み笑いを浮かべます。
「これは、面白い事になりそうね。」
妹も私の顔を見るとウィンクで応えた。




