役場へ行こう!
さて、何だかんだと打ち合わせを重ねること、丸二日!
ようやく辿り着いたシナリオが次の通りです。
1.わたしは父の七回忌を気に終活を考えるようになり、トモダに遺産管理の相談をしていた。
2.五年前にわたしは木之本一家と面識を持ち、彼らととある約束を取り交わした。
3.五年後、木之本一家がわたしを訪ねて来たところ、わたしは行方不明になっている。
4.わたしの行方を知るべく、わたしの知り合いであるトモダを頼ることになる木之本一家。
5.トモダの後押しもあり、木之本一家がタツローの捜索願いを提出する。 <- 今ココ
「捜索願いを出した後は、タツローの死亡を確定させる。
そして、タツローの終活の希望とタケシ君とのとある約束を使って、木之本一家をタツローの後見人に据える。
そして贈与関係の手続きを済ませたうえで、公に木之本一家をタツローの後見人として処理をする。」
淡々と話を進めるトモダ。
『そんなに上手く事が運ぶものなのか?』
わたしがスマホでツッコミを入れる。
「まぁ、やってみなけりゃ分からんが…何とかなるだろ!」
軽くサムアップをしてくるトモダ…。
結論から言ってしまえば…何とかなってしまったのだから、世の中とは摩訶不思議な世界です。
勿論、アリバイ作りの資料は着実に準備されていきますし、口裏合わせは綿密に行われた結果である事は、言うまでもありません。
「とりあえず、タツロー本人はワン子に転生しているのだから、ご本尊は間違いなくご臨終してるだろう。
流行病の影響で、もう遺骨になってるかもしれない。
無縁仏で処理されているだろうから…後は歯型鑑定くらい…かな?
贈与税の問題も有るには有るが…金払いが良ければ、役場もケチをつけては来ない。
あと、タツロー自身に掛けてあった生命保険の受取人を木之本一家へ変更するのが手間かもしれないが…まぁ、何とかするよ。」
トモダへの手数料が上乗せになる瞬間でした。
「まずは、既成事実も必要だから…。
これから警察へ出向いてタツローの捜索願いを出して来よう。
俺も立ち会うからな。」
そう言うとトモダはわたし達を従えて警察に向かい…その足で法務省も回ることになるのでした。
トモダの立会と、警察での諸手続きが効いたのか、法務省での謄本関連の手続きは恙無く収まってくれました。
法務省での諸手続きを済ませれば、いよいよ役所で住民票の手続きを始めることになります。
わたしの捜索願いを提出した三日後、わたしの死亡確認が警察から取れました…。
「遺体の発見現場は鉄道の高架下。
背広に目立った汚れもなければ、身体に外傷も無く、事件性は無しと処理されたらしい。
ちなみに、身元を照会出来そうな遺品は皆無だったそうだ。」
これは、警察から連絡が有った際の内容だそうです…。
わたしの遺灰を引き取ってきたタケシ君が話してくれました。
さて、今度は役場へ向かい、わたしの死亡届を提出です。
併せて、木之本夫妻への遺産贈与手続きと、贈与申告に係る諸手続き。
そして、木之本家の住民票変更。
勿論、トモダ弁護士の指南と手続きが行き届いているハズなので、問題は起こらない…です。
さて、ここは役場。
「番号札10番の方ぁ~、住民課の窓口へお越しくださぁ~~い。」
窓口案内のアナウンスを受け、受付窓口へ向かうわたしとタケシ。
そして、向かい合った窓口の女性が、とてつもなく怪訝そうな顔をしている。
「あの~ペット同伴は…。」
「問題ありますか?」
「わん?」
窓口の女性が、お断りの言葉を述べ始めたところで、間髪入れず、邪魔をするわたしとタケシ。
当然のことですが、突発の事態が発生した際に、タケシはわたしと相談する手はずになっているのです。
暫しの沈黙が流れた後
「…判りました。
では、こちらに必要内容を記載下さい。」
窓口の女性が提示した書類と、彼女の指示に従って書類を書き始めるタケシ。
さて、書類を書いているタケシの様子と、書類内容を確認しているわたしの所作を不思議そうに眺めている窓口の女性。
書類を書き終わり、タケシは窓口の女性に出来た書類を提出します。
彼女は一通りの記載不備などを確認した後、こちらに顔を向け
「木之本様、書類の内容を確認しました。
手続きに入りますので、今暫くお待ち下さい。」
彼女は席を立つと、奥に下がって行きました。
「それじゃ、席に戻って待とうか?」
「わん!」
わたしたちは、窓口の向かいにあるソファーへ腰掛けました。
「こんにちは。」
女性の声が不意に隣から聞こえてきます。
視線を送ると、猫を抱えた優美なご婦人が居ます。
「お隣よろしいかしら?」
「どうぞ。」
ご婦人は笑顔で隣席前に移られました。
「ありがとうございます。」
タケシの返答を受け、ご婦人はわたしの隣に座りました。




