タツローという人間 トモダside
「こちらが新しい登記簿となります。
旧所有者名と新所有者名に間違いはありませんか?
…
…
間違いありませんね。」
受付嬢はそう言って、登記簿を封筒に入れる。
「それから、こちらが役所へ提出いただく書類となります。
こちらに記載されているお名前に間違いはありませんか?
…
…
大丈夫なようであれば、こちらも近日中に役所へ提出をお願いします。」
そう言って、登記簿の入った封筒に、固定資産税に関連した書類も入る。
「以上です。
お疲れ様でした。」
お辞儀をする受付嬢に会釈を済ませ、駐車場へ向かう事にした。
これで法律上、太田邸は木之本夫妻の所有物となった。
後は行政手続きを済ませれば、住居としても正式に認められる…でも、本当によかったのか?タツロー君。
◇ ◇ ◇
話しは二日前に遡る。
木之本君が手洗いで席を外した隙にタツローと会話をした。
「タツロー、本当にいいのか?」
『何がだい?
家や財産を取られてしまうことがかい?』
「ああ…そうだよ。」
相変わらず、遊びを持たない会話だよなぁ。
『これが、わたしの生存権を保証する手段なんだから、仕方ないだろう?』
「まぁ、ワン子の身分では物理的にも社会的にも管理することが難しい事ではあるけど…。
何故、庇護を木之本君にお願いするんだい?
僕じゃ役不足なのかい?」
思わず彼に詰問してしまい、慌てて口を抑えてしまう。
『ははは、確かに君に取っては不本意な話だよね。
しかし、これで良いんだよ。
実際、彼らの協力無くして、わたしは君の前に表れる事は、かなわなかったのだからね。』
「…。」
突き付けられる事実に返せる言葉が無い。
タツローは続ける。
『それにさ、理不尽な理由で自殺まで追い詰められた人間を、理不尽な方法で立ち上がらせる事も、異世界転生の醍醐味だとは思わないかい?』
「わはははは…違いない!」
僕は自分の膝を叩いた。
「解ったよ!
それなら、君の悪事の片棒を喜んで担ぐとしよう。」
『すまない、相棒。』
「いいって事よ!
まぁ、オトモダチ価格で請求はさせて貰うけどな。」
『お友田家価格…というわけね。
サービスは増し増し、お財布には優しくでお願いするぜ!』
「了解だ。」
まぁ、この直後に木之本君がお手洗いから戻ってきたので、今後の具体的な計画を提案していった訳なのだが…。
取りあえず、親友が信じた子達だ、僕も信じるしかないかな…勿論、経過観察は怠らないようにするけどね。
(それにしても、何時から人に頼れるようになったんだろうな?)
僕は、親友の心境の変化に少々驚いていた。




