タツローという人間 タケシside
友田弁護士との面談から二日目、今日は彼にもご同行頂いて、法務省へ来ている。
面談を済ませたその日のうちにタツローの捜索願いを警察に提出することで、オレ達の計画はスタートした。
オレ達の計画…そう、タツローの家と資産を奪取する!
まぁ、本人の持ち物を取り返す事だけなのだが…。
「仕方ないね。
本人が人間を辞めて、ワン子を始めたからなぁw。」
ご機嫌の笑みで答えてくれるトモダさん。
この先生も不思議な人だ。
よくブルテリアがタツローだと理解してくれたよね?という話…。
「そうさなぁ…どこから話そうか?」
書類審査時間を利用して、トモダさんはタツローとの経緯を語ってくれる。
「僕の両親は弁護士だった…勿論、今も現役だけどね。
両親は、僕が弁護士に成ることを望み、そのための線路も引いてくれた。
両親の期待に応えるべく、僕はその線路をひたすらに走った。」
そっとタバコを取りだし、くゆらせはじめるトモダさん。
「高校二年の時に、司法試験に合格してしまって…そこから微妙な綻びが出てきたんだよな。」
後頭部をかくトモダさん。
「大卒じゃなくても、弁護士に成れる資格は取ってしまった。
両親は法課大学院までのスケジュールを設定していたけれど、その必要が無くなってしまい、両親は息子の教育の方向性を見失ってしまった。
僕は僕で、学校の勉強に辟易していたので、これ幸いに両親の事務所へ高卒就職を企んでいたんだ。」
タバコを消すトモダさん。
「結局、両親は大学進学を推奨したうえで、受験学課は自由としてくれた。
当時は情報システムという言葉が持て囃された頃で、結局、両親の意向を踏まえて、僕は情報システム学課のある大学へ進学することになった。」
また一本、タバコを取り出すトモダさん。
「まあ、大学に行っても勉強は同じ…。
学生生活に段々と飽きてきた頃、タツローと出会ったんだ。」
タバコに火をつけ、一口くゆらせるトモダさん。
「創作同好会というケッタイなサークルを立ち上げ、一所懸命に勧誘を行っているアイツの姿は、今から考えても『かなり』風変わりだった。」
「風変わり?」
思わず合いの手を入れてしまった。
「ああ、勧誘というより、個人の読書感想会という体裁だったからな。」
タバコをくわえたまま、思い出し笑いをするトモダさん。
「あの頃読んでいた本はと言えば、判例集や参考書…そして授業毎の教科書。
とにかく『読書』には辟易していた時代だったんだ。」
ゆっくりと二口目をくゆらせるトモダさん。
「しかし、アイツから紹介された『ライトノベル』を読んだら…。
まぁ、面白いったらありゃしない!」
おもいっきり両手を広げておどけるトモダさん…タバコの灰が、やばいことに。
「おっと、はしゃぎ過ぎた。
とにかく、あのご都合主義がふんだんに注ぎ込まれたシチュエーション!
重厚さと軽薄さが共存するギャップ萌え!
推メンのチートや愛くるしさの饗宴乱舞!」
オーバーリアクションですよ!トモダさん。
「そして、転生という概念。
職業柄、そんな世界も存在するのでは?
と思うことも有ったんだ!」
さて、二本目のタバコも切れたところで、落ち着くトモダさん。
「まさか、親友がワン子転生するとはね…。」
しんみりしてしまう。
法務省に来る前に捜索願いを提出していた警察からタツローの死亡通知が届いた。
「アイツ、勤務先の近所…高架橋の下で見つかったそうだ。」
トモダさん、三本目のタバコをポケット内で探している。
「発見された時には、既に息を引き取っていたらしい。
『流行病特措法』による簡易検査の結果、陽性反応が現れた為、最低限の身元確認と事件性の有無を調べ上げた後、速やかに火葬された。」
三本目のタバコを口にくわえるトモダさん。
「財布や免許証など、身元を照会できる遺品は無く、無縁仏として何処かのお寺に埋葬されたようだ。
こちらから捜索願いとともに提出したアイツの写真と無縁仏のデスマスクが符合したことで、死亡通知となった訳だ。」
さて、トモダさんが三本目のタバコに火を付けようとしたところで、登記簿受付からオレ達に呼び出しがかかる。
受付には、既に女性が待機しており、オレ達が到着すると、早速事務手続きが開始される。




