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手続きと友人と

 自宅についた翌日、書斎の机に仕舞って置いた通帳を引っ張り出し、早速残高の確認のために、わたしはタケシ君と共に銀行へ向かいました。


 通帳記入を済ませてもらった結果、驚く事が分かってきました。

 水道、光熱費、あまつさえ税金から国保・国民年金まで、ちゃっかりと口座引落になっているのです…それも、先月分までがっつりとでした。

(人間のわたしは、すでに亡くなっていますよね?

 死亡届が提出されないと、こんな事になってしまうのでしょうか?

 …本当にいい加減な仕事をしますよねぇ…役所ってところは。)


 まぁ、身寄りのいないボッチオッサンが死んだところで世(・)間(・)は(・)事(・)も(・)無(・)し(・)という事なのでしょう。

 つくづくわたし自身の存在意義の無さにため息が出てしまいそうです。

 そうして俯いたわたしの頭を優しく撫でてくれたのは、付き添ってくれたタケシ君でした。


 しかし、ここで落ち込んでいても始まりません。

 次は、役場に行って木之本家の転居手続と、我が家の家主変更を行い、木之本家が正式に我が家の引き受け人になる手続きをしなければなりません。


 住民票の移動手続きはともかくとして、問題になるのは家主変更の手続きです。

 何せ元家主は亡くなって時間も経過しています。

 死人から住宅を譲渡されるなど、誰もが普通に考えても有(・)り(・)得(・)る(・)話(・)はありません。


 では、相続させるのかと言われれば、元家主と木之本家には血縁関係が一切ありません。


 家主変更は難航が予想されますが、だからといって、時間を取れるほどの猶予はありません。


 家主が帰宅しなくなって半年ほど経過してしまった家に、ペット連れの家族がいきなり住み着いているのです。

 ご近所の噂もすぐに立ってしまえば、役所が家屋の差し押さえを目的にスキップしながらやって来るのも目に見えてきます。


 銀行で通帳残高の確認したその日のうちに、わたしとタケシ君は一緒にわたしの知り合いの弁護士『友田』を訪ねました。

 まぁ、蛇の道は蛇、餅は餅屋と言うように、法律関係のお話は、専門家たる弁護士を利用した方が賢いというものです。


 さすがに面談早々は、トモダもかなり不審そうな顔でわたし達を眺めていましたが、イ(・)ロ(・)イ(・)ロ(・)有ったお陰で犬《わたし》がタツローだと解ってくれると、後は話がトントン拍子に進みます。


 さて、トモダの事務所で判ったことが2つあります。

 1つ目は、私が行方不明になっているという事。

「無断欠勤で退職扱い…。

 社会保険関係も全(・)自(・)動(・)で完結したよう…だねぇ。」

 淡々と語ってくれるトモダに、ため息が漏れてしまうわたし。


 2つ目は、木之本家夫婦は、揃って孤児院育ちだった事。

「隠すつもりは…。」

『ああ、いいよ。

 今は、自宅の確保が先決だ!』

 申し訳無さそうなタケシ君をなだめ、話を進めようとするわたし。


「さて、どうしたものかな?

 タツローは生死不明で放置状態だし、木之本家は根無し一家だからなぁ。」

 軽く後頭部を掻いて、困った素振りを見せるトモダ。


 流行病の影響で、夥しい数の孤独死や孤立死が発生してしまい、身元不明の行き倒れも含め、その殆どが『無縁仏』として処理されてしまったようなのです。

 従って事件性の有りそうなもの以外は棚上げ状態であり、捜(・)索(・)願(・)い(・)が出されない限り、わたしは行(・)方(・)不(・)明(・)のまま!という訳です。


「どうやって、二家族を紐づけしようかなぁ?」

 そう言いつつもトモダはニヤニヤするのでした。

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