有朋自遠方来、不亦楽乎。
「おお、莫逆の友よ!」
私は何の躊躇もなく、涙を流すブルテリアを力一杯抱きしめる。
「アオ~~~ンッ!」
彼もヒッシと抱き返してくれる…打ち合わせ中のテーブルを挟んで。
まぁ、足元はゴチャゴチャしてますが、そんな事を気にする暇など無い!
今は、この邂逅をただただ祝いたい!
◇ ◇ ◇
全く不思議な話である。
聞き覚えのない若い男性から電話がかかってきたのは、一昨日の話。
『こちら、友田法律事務所でよろしかったでしょうか?』
「いかにも。」
『私、キノモト タケシと申します。
タツローの…もとい、太田 達郎さんからの紹介で…。』
「明後日の午前中であれば、相談に乗れますよ。」
タツローの名前に思わず反応してしまい、慌てて予定を組み込んでしまった。
『お、お願いします。』
「はい、よろしくお願いします。
不都合があった際には、こちらの携帯へ電話を差し上げれば、よろしいかな?」
『はい!
お願いします!』
ハキハキとした好意の持てそうな声色の男性だった。
電話を切り、瞼の内に見えるのは、一昨年前、彼の父親の七回忌で見た黒スーツ姿のタツロー…。
そして、面談当日がやって来た。
本日眼の前に現れたのは、角刈りも清々しい若い男性と一匹のワン子…ブルテリアという犬種らしいが、何とも間の抜けた顔だ。
どこを見てもタツローは見当たらず、残念さが顔に滲み出るとともに、やる気は半減…さて、どうやって目の前の連中を追い返すべきか、頭の打算機が計算を始める。
話の内容は至って単純!
タツローの自宅を木之本氏が引き取るというもの。
しかも、彼の資産も引き受けたい…との事。
冗談にも程がある!
何故、彼が見ず知らずの男に、自分の家も資産も引き渡さなければならないのか?
木之本氏の言い分によれば、タツローが彼へ家と資産を譲渡することを認めた…との事だった。
奇妙な話だ…タツローとは、ここ半年連絡が取れていない。
今回のような重要な話があれば、一も二も無く彼は僕に連絡をしてくれるはずだ…。
「はぁ、僕はこれでもシャイなんだよ…。」
思わずボヤいてしまった。
『誰がサイだって?』
機械音声が聞き慣れた掛け合いを返してくる!
「!!!」
びっくりして顔を上げると、ワン子が手元にスマホを置いて、不敵な笑み(?)を見せている。
「このガラスのハートが…。」
ワン子に視線を向けていると、ワン子がブラインドタッチでスマホを動かす。
『はいはい、針金入りの防弾ガラスってやつかい?』
機械音声が流れ、ワン子は相変わらず不敵な笑顔。
「君は、僕の事を誤解しているようだねぇ?」
こちらも笑顔で問いかければ
『いいや、君の事を理解しているんだよ。』
機械音声…ワン子が返答してくる。
間違い無い!
こいつはタツローだ!
半信半疑ではあったが、もはや疑いの余地は無い。
このやり取りが出来る人間は、タツローしか居ない…そうだ、彼と練り上げた掛け合いなのだから。
思わずワン子を抱きしめてしまった。
姿はすっかり変わってしまったが、タツローに生きて再開することができた…嬉しかった!




