夢か幻か?謎の鉄筋剥き出し住宅登場!
車を走らせること十時間、途中に食事タイムやお手洗い、お散歩タイムを挟みながら、雑居ビルで賑わう繁華街にやって来た。
『次の信号を右に入ってくれ!』
最後のお手洗い休憩後、助手席に座っているのは、ナビゲーターのタツロー。
後席では、すっかりお互い懐いてしまった妻とミカが楽しそうにジャレ合っている。
さて、タツローに指示されるままに、繁華街の中央通り《メインストリート》から右折し、進むこと百メートル程…眼前に広がってきたのは閑静な住宅街。
『ここだ!』
タツローが声をかけた所は、側道に面した住宅街の入口付近。
鬱蒼とした植物に埋もれかけている鉄筋コンクリート剥き出しの二階建て住宅らしきモノ。
駐車場らしき場所に車を止めて、オレ達は住宅の実況見聞を開始した。
住宅周りの植生は、手入れが行き届いていないため、もう荒れ放題!
「こりゃ、早速掃除をしないといけないなぁ。」
そう言ってタツローに視線を向ければ、彼はあさっての方向に視線を流す。
まぁ、そんな事をしながらも、空き巣被害や、器物破損が発生していないかも、確認している。
それにしても奇妙な建物だ。
外観を見た限り、一般的な住宅とは少々造りが異なっている。
タツローがキーロック式の扉を開くのだが、その扉は総ガラス製!
玄関から中にはいると、広々とした『タタキ』が広がり、そのタタキに向かい合う形で台所が設置され、その台所の奥には二階へ上がるための階段が設えてある。
妻と台所に向かい、シンクやコンロ類を見てビックリした。
それは業務用システムキッチンのような雰囲気だった。
食器棚や冷蔵庫等は、一般家庭向けではあったが、その配置は、やはり業務然としている。
ふと正面を見れば、室内を隅々まで観察しているミカと、後ろを付いて歩くタツローが見える…のだが、このタタキ部分は食堂と見立てると、台所の造りや玄関のガラス扉にも納得が行く。
「変わったリビングね…。
なんだか喫茶店みたいなんだけど…」
と妻がタツローに語りかければ
『わたしは知らないが、母がここで喫茶店を営んでいたらしい。』
との事。
それにしても『生活感』が微塵も感じられない。
食器は埃を被り、冷蔵庫には食材が全く無い状態…使われた形跡が皆無なのだ。
もっとも、タツローの話を聞けば、この『生活感』の無さも納得できるが…。
「生前のタツローって、寂しく無かったのかしら…。」
そう言って、妻はため息をつくのでした。
まぁ、二階へ登ったところで、別のため息も漏れてしまうんだけれど…ね。




