表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか、世界最速の探索者  作者: 描き手


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/17

8.




 朝、リベンジも兼ねてやる気は十分。

 昨日と同様、早朝に起きてダンジョンの一階層から走り続けた。


 そして、八階層以降で十六階層までのマッピングは既に完了している為、そこはスムーズに最短距離を移動して再びの十七階層。


 ここからは、この階層での反省を活かし、フェイスカバーみたいな布を巻き付けるようにして鼻と口を呼吸が出来る程度に優しく包み込んで顔の下半分を覆い隠す。

 多少は吸い込む毒素が減るように安物ではあるがコンビニで買ってみた。


 既にマッピングが終わっている所は立ち止まる事なく走り抜け、昨日巨大キノコと戦闘した道まで到達。

 今日は、この道で魔物と出会さなかったためそのまま通過した。

 マッピング出来た範囲はここまでだったため、ここから先の情報は無いけど、出来る限りダンジョンの奥にある階層へ足を進める為に引き返さず、通った道だけを記していく。


 道中で、何体かキノコの魔物を見つけたので、昨日の腹癒せに狩ってやった。

 今日は心に余裕があったせいか、それとも慣れたからかは分からないが、結構的確に対処が出来たので、飛び散る胞子をあまり吸い込まず、無事二枚に引き裂く事が出来た。

 

 ちなみに、キノコみたいな見た目をしている魔物も居たが、昨日戦った種類以外は可能な限り避けている。

 大体が鈍足なので、狭い空間で遭遇するなどしなければ基本的に手間なく追いつかれる心配も無いが、それらの中でも身体がずんぐりむっくりして胴体がくすんで不気味な赤色のやつは、十メートル程度離れた位置からでも腐臭のような鼻に残る不快臭が漂って来たので、コイツを遠くから見かけた場合は、避けて側を通るどころか遠回りになってでも違う道を選択するようにした。

 気のせいかも知れないけど、胃がむかむかして吐き気を少し覚えたから。

 臭気だけでダメージを与えてくるこの体験から、臭いが感覚公害の一種として扱われる理由を自分の身を持って経験した気がする。

 


 臭いによる胃の不快感が気になりながらも走り続けて1時間程度。

 幾つか行き止まりを見つけては引き返すを繰り返して、臭いキノコ魔物を見つけては遠回りをしてと探索を進めては居たが、そろそろ次の階層に行かないとダンジョン内で野営する準備などしていない学生には時間的に厳しい、そんなタイミング。


 次の階層に繋がると思しき大きな空間をやっと見つけられた。


 今すぐに次の階層に移動したい気持ちに駆られるが、その感情とは裏腹に俺の足は今日ダンジョンに入って初めて立ち止まる。



 ちょうど大きな空洞の手前側の道を遮るように、大きな魔物が"巣"を張っていた。

 

 ――蜘蛛の魔物だ。


 八つに伸びる節足は先端が鋭く尖っていて、地面を叩く度に硬質な音が聞こえてくる。

 毛蟹の体毛に似た繊毛がびっしりと体表面を全身覆い尽くし、獲物を捕えるために発達したであろう鋏角は大きく分厚い。

 外殻は生えている毛の色なのか、遠目からは脚が灰色と黒のコントラスト、頭部と胸部から生える脚、それから胸部と繋がる腹部との関節部には茶色味がかった毛が生えている。

 鋏角の上に顔に該当する部位が位置しており、六つの青い瞳は上下に分かれており、上は大きなのが2つ下は小さな瞳が4つ並んでいた。

 奴を正面から見た目測的に二メートルは超えていそうな巨躯。それと比較してサイズの小さなそれら六つの単眼は、ただ只管に無機質で、しかし確実にこちらの姿を捉えているかのようだった。

 

 奴が居座る広めの空間は、その道全てを塞ぐように細い糸が折り重なって、外で見かける鬼蜘蛛が作る縦糸と横糸から成る円網というよりも、トンネルのような形状になっていて、網の間隔は細かく糸が細くて、蚊帳が張られているみたいになってる。

 あれでは、剣を差し込むにも切り込み方のビジョンすら見えない。切れば粘着質そうな糸に絡み獲られてコチラがエサになる嫌な未来が見えそうだ。

 況してや、そんな巨大蜘蛛の巣を自分の武器である脚を信じて強引な力業により走り突っ切る程の度胸も自信も持ち合わせてはいなかった。


 

 結局、最短距離と考えられるその道は諦めて他の道を探す事にした。


 幸いにも蜘蛛を倒す事だけが十八階層に到達する唯一の道という訳でもない。

 そんな感じで十七階層を走り回ってさらに1時間程度。

 漸く蜘蛛と戦闘しなくても次の階層に行けそうなルートを見つける事が出来たが、どうやら今日はここまでのようだった。

 ダンジョンから帰るまでの時間を考慮すると十八階層の探索には手をつけられない。

 切りが良かったのもある。

 ちょっと前に80センチはあるデカいトカゲが口から放出してきた白い霧状の毒による影響か、先程から喉が痛んで熱を帯び、奥の方が酸っぱいような感じがするのも撤退の一因としてあった。


 それにしても、十七階層まで進むと出来るだけ最短となるように走ったにも関わらず、階層の広さに伴う次の階層までに必要な距離の関係でどうしても時間がかかってしまう。

 もう最近は短距離の選手達よりも区間における足の速さで言えば速くなっている気がするのに、その速度でずっと走り続けてもここまで到達して少し探索するだけで一日が終わってしまう。

 俺の場合は魔物との戦闘をほぼしていないにも関わらずこれだ。

 パーティを組んでいる他の探索者はもっと探索に時間が掛かってなんらおかしくない、というよりもそれが当たり前なのだろう。

 

 勿論、ダンジョンで野営するならもっと奥まで探索は可能ではあるけれど、それをしたところで今日中に十八階層を突破出来るかと聞かれたら、無理な気がするというのが正直な本音だ。

 そんな芸当が出来るほど器用な訳でもないから。

 というか、それが出来るくらいならとっくに特選クラスに入っている。

 


 帰り道、何種類かキノコとの戦闘や他の階層で戦った事のない魔物とも戦闘してみようかと考えていたけど、道の狭い通路に三匹毒の息を吐き掛けて来るトカゲが密集していて、流石に避けきれなくて剣で突き刺したり腹を下から蹴飛ばしたり攻撃した。

 毒を吐いてくる前に殺しきれないのは分かっていたので、出来るだけ避けるようには努めたのだが、吐き出す霧毒の範囲が広すぎてどうしても吸い込んでしまう。


 大量に曝露してしまったのか、喉の痛みや熱感を超えて肺が少し痙攣するような感覚がして呼吸がし辛い。

 

 こうなってはリスク管理の為、戻って治療する必要が出てくるので、帰り道に遭遇した数種類の魔物から毒を浴びながら戦闘するだけに留め、今日は真っ直ぐ帰還を目指す。



 七階層まで戻った際、昨日ほど毒の曝露が少なかったのか、身体は間違いなく不調ではあったけど意識がどうこうなりそうではなかった事、それから、今は神経に作用するような毒なら最悪悪化してもポーションがあるという心の余裕もあったから、夏休み前まで日課にしていた魔物による殴り殴られの乱闘耐久と魔法によるダメージ耐久をついでとばかりに熟し、そんないつもの訓練メニューを行ってから学校の治療室まで走った。


 その後、治療を担当してくれた保健室の先生には呆れられたけど、昨日よりは充実した日になって良かったと、この日は自己満足で気持ち良く眠りに入れた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ