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いつか、世界最速の探索者  作者: 描き手


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15/17

15.




 右も左も緑色の肌ばかりで気が滅入っていた。


 ゴブリンの集落に踏み込んだのは、圧倒的な物量を経験したかったから。

 人型の魔物に四方八方を覆われている。

 

 どいつもこいつも侵入者を滅殺せんと絡んで来る。

 いきなり自分達の住処に突撃し、手当たり次第に虐殺しているもんだから、そうなるのが当たり前である事は理解出来る。

 とは言っても、流石にこれは容赦なさすぎる。

 周りを取り囲んでボコボコにするのは分かるけど、コイツらの気迫はそんなものじゃない。

 自分を差し置いてでも敵を撃つという覚悟の決まった、或いはそう決めさせられた、必死の形相。

 目が血走っていて後先考えずに突っ込んで来る。

 最初は移動していたが、物量で足を止めさせられてからはとにかくしんどい。

 俺が積み上げた、身体の一部が欠損した亡骸が積み上がり、足場を徐々に狭くして時間が経過するほどに動きづらくなって行く。

 奴らは自分達の仲間を躊躇いなく踏み付け、ぐちゃぐちゃにしながら進むので、地面には肉片と血液と細々と砕けた骨の断片でカオスな状態に陥っている。


 臭いも酷いが、鉄臭さと生臭さで嗅覚は既に麻痺しているから、ある意味よかったのかもしれない。

 集中が途切れれば段々ジリ貧になって行き、いつか飲み込まれて終わりだろう。


 それくらいの物量だった。

 


 

 そんな酷い状況下ではあったものの、今までの経験のあかげか冷静に周囲を見渡せた。


 相手にしている集団の容貌で、5階層までの浅層と違うのは、そのデカさ。

 身体が自分の知っている一般ゴブリンの二倍程に見える身長。

 ノーマルのゴブリンが小さいせいもあるけど、全員見上げる形になる程シンプルに身長が高く、威圧感ある厳つい顔面を歪ませている。

 そして、何故か全員ゴリマッチョ。

 見える範囲にガリガリの弱そうな奴が居なくて、最も細い奴でも俺の1.5倍は腕の太さがある。


 さらに、浅い階層のゴブリン達が無手、ステゴロで来たのに対し、ここにいる連中は多種多様な武装をしている。

 無骨で売れなそうな見た目はしているものの、しっかりと金属的な物質を含んでいるのか、刃物には若干の光沢が見える。

 正直、俺の持っている武器よりも頑丈そうで少し羨ましい。


 そして、種類。

 肌の色や角のような頭にある瘤の数。

 手が長い奴や額辺りに眼を想起させるタトゥーが入ってる奴、牙が長い、爪の色が違う、魔法を使って来る。

 ゴブリンってこんなに種類が居たのかとびっくりしている。

 大きな括りなら確かにゴブリンであることに変わりはないけど、良く見ると一匹ずつ違い、弓や魔法を使用する遠距離持ちや、周囲より抜きん出て頑丈な肉体を持つ個体等、そんな特殊個体が偶に紛れていて厄介だった。

 基本不意打ちなのも嫌らしい。

 恐らく後方に指揮官的なのが居る。


 前の個体を右フックで顎を砕き、その勢いを殺さずに地を蹴って宙に浮かび、回転しながら左に居た固体を吹き飛ばし、再び大地を蹴って接敵し、前進。ゴツい顔面を掴んで隣に居た奴にぶつける。

 小さな空間でも兎に角動き回る事を意識して次々殴り蹴って数を削って行く。


 貫手の形で顔を突くと、それに対応して来た歯と顎が頑丈な個体に手を噛みちぎられないように手に魔力を込め直し、歯を掴んで武器とし、振り回して集団を薙ぎ払った。

 体格差がある相手なのに、力を込めると面白いくらい中に浮いて飛んで行く。

 質量が軽いからじゃない。俺のパワーが明らかに上がっていた。魔力というものは偉大だった。



 

 度重なる戦闘で疲労困憊な状態、さすがに肩で息をし始めた瞬間。

 刹那の間だが道が開けた。


 その好機を逃さないように足に更なる魔力を込めて踏み締め走った。


 避けられる敵は全て避けながら疾駆し、ゴブリン達の統率に関係してそうな老け顔で服装が比較的豪華なゴブリンの下へと辿り着くと、これまでの鬱憤を晴らすように、拳を握り魔力を十分に込め、顔面にストレートを叩き込む。

 骨の折れた音を響かせながら吹き飛ぶ親玉を走って追撃し、倒れ込んでいる状態に上から覆い被さって顔面が完全に潰れるまで殴る。


 これ以上の継続戦闘は身が持たないのは分かっていたから、ひたすら立ち上がる事がないように殴り続けた。

 


 後ろから音がした。

 死体の状況は確認する事なくまだ攻撃の意思を示すゴブリンに向けて走り出す。


 何ラウンド目になるか分からないが、兎に角目の前の敵を排除することを優先にして戦い続けながら、気づいた。

 (まとまりがなくなってる)


 やはり、先程倒した個体が指揮を執っていたみたいで、相変わらず突っ込んで来るのはそのままだったけど、それでも統率がない有象無象との戦闘に移行したため、比較的楽ではあった。

 そこから、疲労が限界を迎えるか、相手の数が途切れるのが先かの純粋な体力勝負の状況に突入し、結果として勝ちは拾えた。


 もう、この日は十分に頑張ったと、素材を回収する気も失せて家に帰る。


 なんとか気力を振り絞ってシャワーを浴び、容量の小さい備え付けの洗濯機に返り血塗れの服を放り込んで、夕飯は食べずに歯だけ磨いて布団に潜る。


 回復魔法を掛けながら帰って来たため、手に怪我はなく、痛みは全くないはずだけど、物凄い回数脊椎動物を殴っていたせいか、殴った際に肉を超えて骨ごと押しつぶす感覚が掌にずっと余韻として残る。


 そのため、身体は疲れているけど、やけに眠り心地が悪かった。

 しかし同時に、そんな状況でも普通に眠れてしまえるようになった事に若干の安堵感を感じていた。

 明日には影響が残らなそうだと考えて。

 



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