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いつか、世界最速の探索者  作者: 描き手


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14.




 ダンジョンに潜って日銭を稼ぐ。


 高く売れ、かつ出来る限りミニマムなサイズの素材を選び採取して、頑丈で大容量が売りの探索者向けバッグに入れる。

 学生の時から使用しているのが、良い感じにボロボロになって来ているけど、まだまだ使える。

 貯金が心許ない今、少しでも生活費が尽きないように切り詰められる所は切り詰める。


 売った素材の利益のうち、半分が税金や奨学金に近い制度の影響で吹き飛ぶ。

 結構な利益になっているはずなのに、半減するとどうしても小さな額に見えてしまう。


 学費が支払えず、頭もそんなに良くなかっため、入れる学校が他になかった。

 とは言え、奨学金代わりの制度の癖してこちらを死が見えそうな所まで追い詰めて来るのは如何なものか。


 運良く24層まで行けてなったら本当に餓死或いは殉職していたのでは?と時々考える。

 そうならないよう福祉制度の一環で、家賃が普通に借りるよりは安く済む探索者用施設、その一室を借りれたのだが、それではカバー仕切れない程に金が無い。



 と、探索者になった始めの数ヶ月は思っていたけど、効率的に稼げる素材が何処なのかの目利き、加えて市場で今何が求められ、より需要が厚く高く売れやすいのかについて嗅ぎ分ける嗅覚が日に日に鋭くなって行き、何処でその素材を採集し易いのか、優先順位はどれかについて知識が蓄積、判断力が向上して来た。そうやって段々とコツが掴めて来ると、生活がちょっとずつ回るようになって行った。


 そして、秋になって気温が下がり始めたくらいの季節。

 漸く極少額ではあったものの貯金が出来た。

 解体用の安いナイフなら買える程度の金額が口座に残る月が出て、それを皮切りに少しずつ貯まる金額が増えて行く。

 働いているのは自分のため、豊かになるにも限度があるけど、本当の意味で食うに困った初期から比較すると大分マシになった。


 さらに、嬉しい事は重なり、自分としては大きな前進を体感出来る現象も起きた。


 魔力の知覚及び、その操作だ。


 回復魔法が使えると聞くと、魔力を自由に扱えるのではないか?と魔法が使えるようになる以前の俺は疑問を感じていたが、実際に魔法を発現させた後には、そうでもないと言う事を知った。


 魔法は、一度発現させてしまえば、意外に魔力を細かく制御出来なくてもイメージ次第でどうにかなる。

 ダンジョンに初めて入り、運良く魔法を習得した者は、その時点では魔力を操って魔法を放つ訳では無い。

 イメージと集中によって、本能か何かにより魔力を身体の中から集め、それを元にして物理を一部覆し、現象を発現させる。

 そのため、初期スキルとして魔法が使えるようになった人間は、魔法一回の使用に掛かるエネルギー効率が頗る悪く、最初のうちはすぐに魔力切れを起こしてダウンする。

 そのうえ、威力も弱く浅い階層の魔物すら一撃で倒せる訳でもない。

 余程の天才なら違うのかも知れないが、一般的にはそんなものだ。

 

 魔法というスキルは、使える事自体が一種の才能でもあるわけだけど、それを得た誰もが自由に力を行使出来るわけじゃない。使えるようになるだけで、スタートラインに立ったというだけで、別に魔法の天才になれるスキルなんかじゃない。


 だからこそ、探索者志望で魔法を使えるようになった者は、その力を可能な範囲で引き出して、効率良く、効能や現す具象を最大にする鍛錬を積む必要がある。


 回復魔法を使えるようになってから、あれこれ試行錯誤を繰り返して来たが、漸く知覚まで持って来れた。

 自分の魔力を明瞭に知覚する事さえ出来るならば、後は魔力を動かす感覚を自分の肉体感覚と擦り合わせるだけだ。



 そして、もう一つ。

 個人的には魔法の効果が上がるよりも嬉しかった事があった。

 

 それは、魔力を使用した肉体の強化。


 これが出来る者と出来ない者とでは探索者としての実力に天と地ほどの差が生じる。

 ダンジョンの探索を続けたり、走り続けたり、時に長期戦になる魔物との死闘を制するために必要な体力、戦闘で魔物からの攻撃を食い止めたり、怪我を負いづらくするために必要な防御力、そして、魔物を倒すにも素材の解体にも、ダンジョンの凡ゆる局面で生きるために必須となる純粋なパワー。

 扱いに長けた者なら、全てに置いて素の何倍にも引き上げられる、ある種万能の能力。


 それをやっと使えるようになった。

 その頃には、季節は冬となり、年末年始を超えて春に近づいて、気温が穏やかになり始めていた。



 安全第一にしていたため、23層寄りの24層で活動していたが、色々出来る事が増え、生活にも慣れて余裕が生まれて来たので、25階層で狩りをする事にした。




 

 出会い頭に、岩蜥蜴の頭蓋を拳で粉砕する。

 今まではこちらの拳が音を上げていたけど、拙いながらも魔力が通された拳は、頑丈な体皮に阻まれながらも、打撃時の衝撃と共に骨を掻き分けて、蜥蜴の脳髄まで達した。


 勿論、拳はノーダメージとは行かずに皮膚が捲れ、軽やかな音がして骨に罅が入るが、この程度なら自分の回復魔法で十分対処可能。

 今日は戦闘が少なかったから、まだまだ魔力にも余力がある。

 


 回復魔法で手の治療は行いながらも、一度意識は他の岩蜥蜴に向ける。


 番だったようで、家族を目の前で殺されたもう一匹が、もの凄い迫力で俺を丸呑みにしようと大口を開けるて飛んで来る。

 岩蜥蜴を殴った反動で身体が宙に浮いてしまい、空中では回避出来そうになかった。

 

 だから、身体を屈ませて右足が上を向くように少し回転し姿勢を変え、そのまま間抜けに大口を開けている蜥蜴に向け、上に来た足を動かそうとする。

 当然、無理な姿勢のため勢いなんか出るわけがないが、そこは俺の初期スキル「最大速度常態可」でゴリ押す。


 動かした足は物理法則を無視して、一瞬でトップスピードに至った。


 魔力を通していた足が遠心力を味方に付けて振り抜かれ、強制的に蜥蜴の口をチャックし、そのまま地面に食い込んだ。


「ぅっ!」


 無理に動かした身体が、ピキっと嫌な音を立て、そこから生じる痛みに声が出てしまったが、無事に蜥蜴の討伐が完了した。



 自分の負傷箇所を治しながら、蜥蜴の比較的高く売れる皮を解体用のナイフで削いで行く。

 皮膚と肉の間に大体切れ込みが入ったら、身体がデカいので剣に取り替えて解体して行く。

 

 最近は、腰に佩いた剣を、主に戦闘ではなく解体用として使っている。

 武器は折れれば買い替えが必要で、コスト面から魔力を纏わせた拳を使うようになった。

 そのせいで毎日骨折しているが、その程度ならば回復魔法で治せるため、そっちの方が安く済むと思ってる。

 

 ダンジョンの性質上、肉体を壊して、治して、また壊して、治してと繰り返す程に強くなって行く筈なので、実質一石二鳥どころか三鳥。回復魔法や魔力操作の練習にもなるから四鳥、五鳥にもなる。


 解体し終わった皮をくるくると巻いて、一度ダンジョンから出る。

 こいつが、今日の食費になる。


 そして、買取が終わって得た金銭で食料を買い、自室の冷蔵庫に放り込んだら、ここからはボーナスタイム。

 学生の頃のような無茶は出来ないけど、少しでも戦闘経験を蓄積させたい。

 

 


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