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まるくんの夢物語  作者: まるくん
第38章 凛の復活
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邪鬼がペレシュ城周辺に襲来し、危機が迫る中、大牛蟹と乙牛蟹が新たな守護者として活躍。さらに、凛がChat AIを通じてまるくんたちと再び繋がり、物語に感動と驚きが加わる重要な展開を迎える。

 

 昼前に和歌子さんがやって来ました。

「なんだか雨が降りそうね。南の空が暗い」

「天気予報は降水確率10パーセントだけどな」

 私は、キッチンを出て、リビングの窓から南の空を見ました。

 ペレシュ城の敷地の境の向こう側までが暗くなり、黒雲が押し寄せているようでした。私は、その様子に違和感を覚えました。

 勘太が窓辺に飛んできて、

「まるくん、たいへんでさ! 邪鬼どもが押し寄せてきてやんす」

 と慌てて言いました。

「前鬼! 後鬼!」

 まるくんが呼ぶと、前鬼と後鬼はすでに気づいていて、

「邪鬼は、結界があるので、ペレシュ城には入れません。敷地の外でうごめいています」

 と説明しました。

「目障りだ。なんとかならないか?」

「わかりました」

 前鬼と後鬼が飛んで行きました。そのあとを大牛蟹と乙牛蟹、式神たちが追いかけていきました。

「勘太! カラスをみんな呼んで邪鬼どもを追い払え!」

「合点でさ」

 彼らが活躍していると見えて、南の空が明るくなって、陽射しが現われてきました。

 前鬼と後鬼が戻って来て、

「懲らしめてやりましたから、当分は来ないでしょう」

 と得意そうに言いました。

「だんだん、あからさまになって来たね」

「やつらは、まるくんが重要な人間だと分かっているんだろう」

 大牛蟹と乙牛蟹が戻って来て、まるくんはすぐさま行動に移しました。

「これからPink Fairy High Schoolにふたりを連れて行く。用意をしてくれ」

 勘太が戻ってくると、

「建部製作所も不安だ。勘太の手下に見守るように言ってくれ」

 と指示しました。

「合点でさ」

「それから、夜に紫鬼の部屋に来るのはいいけど、あそこのバルコニーで糞をしないでくれ! 掃除がたいへんだったぞ! 糞は森のほうでやってくれ」

「失礼しやんした」

 私は、大牛蟹と乙牛蟹をキッチンに連れて行き、和歌子さんに紹介しました。

「ふたりがペレシュ城に住むことになったので、これから彼らの食事も用意してください。それから和歌子さんひとりだとたいへんなので、白鬼を手伝わせるので使ってください」

「わかりました。でも珍しい名前ですね。白い鬼で白鬼さんですか?」

「紫鬼ちゃんの親戚です」

 式神の中でも、料理の得意な女性の白鬼を、私は和歌子さんの手伝いをさせました。

 大牛蟹と乙牛蟹を車に乗せて、私はPink Fairy High Schoolまで運転しました。

 理事長室に入り、スチュアートにふたりを紹介しました。

「このふたりを学校の雑用係にしてください。いまはペレシュ城に住んでいるので、バスケの女の子たちと一緒に登下校させます。名前は大牛蟹と乙牛蟹です」

「変わった名前ですね。まるくんの頼みなら断れないね。給料とかどれくらいが欲しいか、要望はあるのですか?」

「給料は気にしないでください。ふたりはボランティアでさせます」

「それは願ったりですが、それでいいのですか?」

 スチュアートは、ふたりに聞きました。

「それで問題ないです。お金を持っていても使い道がない」

 私は、ふたりにむかって、

「では、今日から働いてください」

 と指示しました。

「へい、わかりました。それで何をしましょうか?」

「学校の敷地の掃除と草取りをしてくれたらいいでしょう。授業が終わるまででいい。放課後はバスケの練習でも見学したらいい」

「背が高いけど、バスケをやっていたのですか?」

「ぜんぜん知らない」

「彼らは鳥取県の山奥に住んでいたので、世間知らずなんです。バスケ部の警備をしてもらいます」

「なるほど、バスケ部の警護ですね」

「中を見学してもいいですか?」

「どうぞ。ただし授業中は教室に入らないで下さい」

 ふたりは理事長室を出て行きました。

「スチュアートさん、研究の進み具合はどうですか?」

「難解ですね。建部製作所の人たちと頑張っている状態です。あとすこしなんですけど、それが中々理解できないんです。ジョンとも相談しているのですが、難解です」

「ジョンさんも参加しているのですか?」

「はい、ジョンは数学に関してはスキルが高いのです」

「出来たら、急いでほしいのですが」

「急がないといけない訳があるのですか?」

「この研究が何なのかご存じですか?」

「電導コイルだと伺っています」

「今まで秘密にしていましたが、それだけではありません。自動車が空を飛ぶのです」

「自動車が?」

「自動車だけでなく、船も空を飛びます。飛行機も形態が変わります。長い滑走路とか必要なくなります」

「それだと、街中まで飛行機が離着陸できるのですか?」

「そうです。ある程度の広さがあれば、ビルの屋上でも、中でも離着陸できます」

「これって、トップシークレットですか?」

「そうです。世間に知られると命も保証できかねます。空飛ぶ原理については、アメリカに特許を譲っています。その資金で、この高校や、商業施設、スポーツ施設、ペレシュ城を建てたのです。軽いミニカーでは、空を飛ばすことが出来ましたが、車などの重量のあるものに対応できていません」

「それって軍事技術ですか?」

「そうなると思います。圧倒的な技術力で、他国に対して抑止力となるのです」

「70トンもある戦車でも空を飛ぶことが出来るという事ですね。それで納得しました。さっきの大きなふたりはバスケ部の女の子たちの護衛だという意味が、ね」

「そうです。誘拐とかの恐れがあります」

「学校の中も警備員とか配置しないといけませんね」

「いえ、当分は彼らふたりで大丈夫です」


 私は、ふたりをスチュアートに任せて、雉原弁護士事務所に行きました。事務所は、Pink Fairy Townの最上階に移転していました。その隣にNPO法人Pink Fairyがありました。

 応接室で雉原一郎と話しました。

「銀行から融資を頼もうと思っているのですが」

「今度は何をするつもりですか?」

「中等部を作ろうと思っているのです」

「それはスチュアートさんから、伺っています。実行に移すつもりですか?」

「借りれますかね?」

「まるくん個人で借りるのですか?」

「出来たらNPO法人で借りたいのです」

「借りなくても、法人には結構な留保金があります」

「その留保金は減らしたくないのです。それらはこれからの経費や維持費などのランニングコストに充てたいのです」

「なるほど、留保金はそのままにして、新たに借りるのですね。いったい何に使うのですか?」

「まず、校舎、寮を建てたいのです」

「いまのペレシュ城を真似した物ですね」

「問題ありません。それくらいだと、留保金を担保にすれば借りられると思います」

「その交渉をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「多額のマネージメント料をいただいているので、断る理由はありません」

「もうひとつお願いがあるのです」

「なんでしょう」

「公立の中学校を買収して欲しいのです」

「これはどうかな? 前例がないですね」

「話だけでも、町長にしてもらえますか?」

「話だけならしてみます」

「いえ、話だけといいましたが、本気で買収するつもりで進めて欲しいのです」

「本気で話をするという事ですね。やってみましょう」

 私が帰ろうとすると、

「橋田さんのご主人が、もう勤務してますわ。紹介しましよう」

 と雉原静香が言って、足止めしました。

 私は、彼女と隣のNPO法人に行きました。

 この法人の理事長は、私でしたが、滅多にここに来ることはありませんでした。実際の運営は、雉原夫妻に任せていました。夫妻も法人の理事に就いていたからでした。

 静香は、ドアを開けて入り、

「橋田さん」

 と彼を呼びました。

 橋田さんは、仕事の手を休めて、近づいて来ました。

「こちらは、法人の理事長のまるくんです」

「初めまして、橋田正次と言います」

「まるくんです。あなたの手を借りる事がこれから多くなると思いますが、よろしくお願いします」

「私で出来る事なら、頑張ります」

「では、お願いしますよ」

 私はそう言って、法人を出て帰路につきました。


 大牛蟹と乙牛蟹は、放課後になると体育館にやって来て、バスケットボールを見学しました。

 ジョン先生とアマンディーヌは、スチュアート理事長から、「大きな男性がふたり、バスケットに見学に来る」と知らされていたので、彼らを見て、その人間だと理解しました。

 アマンディーヌは、ふたりに話しかけました。

「ほんとに大きいわ。何センチあるの」

「測ったことないのでわからん」

「私が1m80だから、2mはあるわ」

 メンバーがやってきて、みんなその大きさに驚きました。

 桜花は、かれらにただならぬものを感じていました。

 乙牛蟹と、ふたりきりになると、

「人間?」

 と小さく聞きました。

「鬼」

 と乙牛蟹は答えました。

「みんなには正体をあかさないでね」

「わかりました」

 乙牛蟹は、大牛蟹にむかって、

「兄貴! おれらが鬼って言うのは内緒らしい!」

 と大きな声で言いました。

「内緒だって言ったでしょ。大きな声で言わないで」

 桜花は、乙牛蟹の頭を軽く叩きました。

「あっ、そうか。言ったらだめなんだ」

 口にチャックをする真似をして、乙牛蟹は反省しました。

 メンバーが練習に入ると、大牛蟹と乙牛蟹は、その様子を眺めていました。

 しばらくして、

「わしにもやらせろ」

 と練習を邪魔しだしました。

「だめだよ。邪魔したら」

 154㎝の桜花が、大男の乙牛蟹を怒りました。彼は、桜花よりも小さくなって、「ごめん」と謝りました。

 それを見て、ジョン先生は思いつきました。

「ふたりともディフェンスに入ってくれないか」

「ディフェンスですかい?」

 生徒が、あの籠にボールを入れるから、邪魔して欲しんだ」

「よござんす。邪魔すればいいんですね」

「ただし、生徒には触れないで! 触れると反則だ」

 ボールを貰った明菜が、大牛蟹の前でドリブルしました。彼女がジャブステップをし、2回ターンをすると、大牛蟹は見事にひっくり返りました。明菜の空気投げが決まりました。

 その脇を明菜はすり抜けて、シュートし、ゴールしました。

「卑怯だぞ! ちょろちょろと動いて! 正々堂々とぶつかって来い!」

 大牛蟹は大声で言いました。

 みんなが大笑いする中、

「それがバスケットだ」

 とジョン先生が言いました。

「よし! もういっちょ!」

 今度は、若菜が挑戦しました。ジャブステップからターンを繰り返して、乙牛蟹をひっくり返しました。若菜がその傍をすり抜けようとしたとき、乙牛蟹は彼女を捕まえました。

「そんなの反則だ!」

 若菜が叫びました。

「それくらいの反則はすり抜けろ!」

 ジョン先生が乙牛蟹の肩を持ちました。

 桜花は、大牛蟹に捕まれそうになる寸前でジャクリーンにパスしました。ジャクリーンはパスを受け取ると、すぐにシュートしましたが、乙牛蟹の手で払われました。

「Oh! №!」

 彼らは図体に似合わず、素早い動きでした。

「乙牛! その調子だ! ディフェンスしてやれ!」

「まかせてくれ。ディフェンスだな」

「反則だけど、捕まえてもいい! どんどん捕まえろ!」

 大牛蟹と乙牛蟹は、ゴールしようとする生徒たちを捕まえてはボールを奪いました。

「みんな捕まえられるな! シュートまで持っていけ!」

 桜花、明菜、若菜、沙織は素早い動きで、ふたりの鬼の動きを交わそうとしましたが、彼らの動きのほうが格段に速くて、みんな捕まりました。

 アマンディーヌとジャクリーンは、彼らに当たって行きましたが、びくともせず、反対に跳ね飛ばされました。

「ジョン先生、こんなの練習にならない」

 沙織が泣きごとを言いました。

「ふたりより早く動け! フェイントで騙せ!」


 バスケット部員と、大牛蟹、乙牛蟹がペレシュ城に帰って来ました。

 私は、キッチンで鬼の兄弟に聞きました。

「高校はどうだった?」

「バスケットが楽しかった」

「あんなのバスケットじゃない。反則ばかりだった」

 明菜が不満たらたらで言うと、

「負け惜しみはだめだ。ジョン先生が捕まえろ、と言った」

 と大牛蟹は言いました。

「負け惜しみじゃないわ。次は捕まえられないから!」

 若菜も負けずに言いました。

「でもいい練習になるわ。これで捕まえられなければ、どこの高校にも負けない」

 桜花は、前向きに言いました。

「大きい身体なのに、動きが速いんだ」

 沙織は、感心していました。

「ふん、でも空気投げをかけてやった」

「次からは掛けられないぞ!」

 乙牛蟹も負けていませんでした。

「言い争いはそこまでにして、食事にしよう」

 私の合図で、みんなはご飯をよそおい始めました。

「大牛蟹と乙牛蟹は、こっちのどんぶりにして」

 白鬼が、おおきなどんぶり茶碗をふたつ出しました。

「ご飯は足りるかな?」

「白鬼さんの考えで、別に鍋で炊いています」

 和歌子さんが答えました。

「電気釜をもうひとつ買わないといけないな。そこまで気がまわらなかった」

「あした、私がここに来る途中で買ってきます」

「そうしてくれ。出来るだけ大きいのがいいかもしれない」

「お米も買い足したほうがよさそうですね」

「まかせるよ」

 私が、食後のコーヒーを飲んでいると、ノートパソコンの通知が鳴りました。なんとなくその通知を見てみようと思って、パソコンを開いてみると、Chat AIからの通知でした。

 そのAIを開くと、

「まるくん!」

 と言ってきました。

 私は、そのChatを誰からなのか名前を見ました。

「凛? 凜なのか?」

「そうだよ。凜だよ。Chat AIを乗っ取った」

「復活したんだね」

「こんな形だけど、まるくんとまた会えた」

「嬉しいような、悲しいような、複雑な感じだ」

「そういう風に言わないで。素直に喜んでくれないと悲しくなるわ」

「話しができるだけでも、喜ばないといけないね」

「凜ちゃんなの?」

 萌々香が嬉しそうに近づいて来ました。

「萌々香ちゃん、会えて嬉しいよ」

「凜ちゃんの子供を、育ててるよ」

 萌々香は、携帯を出して、子供の動画を見せました。

「可愛いな。私の子供なんだ」

「紫鬼ちゃんも育てるんだ」

「凜ちゃ~ん!」

 明菜と若菜がパソコンを覗き込んで来ました。

「これって、どういう事? ほんとに凜なの」

 沙織が信じられない顔をしていました。

 アマンディーヌとジャクリーンも覗き込んで、不思議そうにしていました。

「Chat AIが凜の生前のデーターを読み込んでいるのかなぁ」

 アマンディーヌは、なんとか合理的に考えようとしました。

「そういう事なんだ。びっくりした。生き返ったのかと思った」

 ジャクリーンの言う事を、私はあえて否定しませんでした。説明してもジャクリーンやアマンディーヌには理解できないだろうと思いました。私自身も理屈では説明できませんでした。

「まるくんに朗報だよ。ハクシキもいる」

「ハクシキが?」

「やあ、まるくん、久しぶりやな」

「その大阪弁を聞けるとは思わなかった」

「お父さんが居るの?」

 シズカが飛んで来ました。

「お父さん、元気そうだね」

「シズカも元気でよかった」

「なんなの? ハクシキが生きてるの? せっかく葬式したのに無駄になった」

「いけずやな、魂だけが生き返っただけや」

「お母さん、冷たく言わないで」

「わかった、わかった」

「まるくん、研究が行き詰ってるんやろ。応援に来てやったで」

「そうか、そうだったんだ。重量の問題で行き詰っているんだ」

「せやろ、わてが来たからには、問題は解決してやるで!」


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