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まるくんの夢物語  作者: まるくん
第25章 賑やかなペレシュ城
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まるくんと桜花、萌々香は養子縁組をし、新しい生活を始めます。新たなキャラクターやエピソードが加わり、ペレシュ城での賑やかな日々が描かれています。

 

 桜花と萌々香は、まるくんと正式に養子縁組をしました。

 まるくんは、彼女たちの父親でした。でもまるくんは、彼女たちに「まるくん」と呼んでくれと頼みました。彼女たちもそうほうが呼びやすいという事でした。

 彼女たちの意向で、屋根裏部屋をふたつ改装して、それぞれ個室を与えました。

 内装は、彼女たちの好みでさせ、女の子らしい部屋となりました。とくに妹の萌々香の部屋は、ピンクを主調に可愛くなっていました。

 凜は、萌々香が小学校から帰って来ると、一目散に駆けだして、彼女に纏わりつきます。専用のベッドもモモカの部屋に置いて、寝るときも一緒でした。

「おかえり」

 凜は、そう言うと、萌々香のランドセルを咥えて、屋根裏部屋に走ります。

 しばらくすると、凜はボールをくわえて階段を降りてきます。そのあとを萌々香が追いかけてきて、彼女たちは庭でボール遊びなどをして過ごしました。

 その凜が私に提案しました。

「まるくん、バスケットのコーチは、まるくんにとって重要だよ」

「バスケットのコーチ?」

「桜花の高校のバスケットのコーチだよ」

 桜花が帰宅すると、コーチの事を聞きました。

「スチュアート先生が今度、バスケのコーチを引き受けてくれたの。研究がアメリカの科学誌に掲載されて、時間が出来たからバスケのコーチを引き受けるって言ってたわ」

「研究が科学誌に掲載されたんだ。それはすごいね。そうだ、今度お祝いしよう。先生を誘ってくれるかな」

 バスケットボールのメンバーは、よくペレシュ城に遊びに来ました。とくに双子の明菜と若菜は、泊りがけで遊びに来て、料理人を困らせました。

 私ひとりのときは、自炊していましたが、桜花と萌々香が住むことになって、料理人を雇いました。私の料理はとても他人に食べさせるものではありません。栄養バランスも考えての事でした。

 彼女の名前は、長谷川和歌子と言い、栄養士と調理師の免除を持っていました。男の子がいましたが、シングルマザーでした。彼女は月末に、私や桜花、萌々香の好物を織り込んで、翌月の1ケ月のメニューを作成してくれました。

「和歌子さん、今度の土曜日の夕食に、祝賀パーティーをしたいんだけど、いいかな? 高校の先生の研究が科学誌に載ったらしい」

「分かりました。人数は?」

「私と桜花、萌々香、バスケットのメンバーに、雉原夫妻です」

「では食堂を使います」

「そうして下さい」

 私たちは、ふだんキッチンで食事をしていました。食堂を使う事は滅多にありませんでした。

 パーティーの当日、準備に私と桜花、萌々香が手伝いました。双子の明菜と若菜も手伝いに来てくれました。

「今日は騒がしくなりそうだね」

 ナマイキが面倒くさそうに言いました。

「賑やかだと楽しそうでわくわくするわ」

 シズカは楽しそうに言いました。

「人間はクリスマスとかパーティーが好きだからね」

 私は和歌子さんの指示で、唐揚げなどの料理に挑戦しました。

「明菜と若菜は、料理は出来るだろう」

「ぜんぜん出来ない。包丁も握ったことがない」

「お皿をだすくらいしか出来ない」

 彼女たちは、料理が出来ると、食堂に持っていってくれました。

 車が入ってくるたびに、凜はいち早く吠えて教えてくれて活躍しました。ナマイキとシズカも協力して出迎えてくれました。

 アマンディーヌが母親の車でやって来ました。雉原夫妻と娘の沙織は、タクシーでやって来ました。主客のスチュアートは、最後にやって来ました。

 みんなテーブルについて、私の音頭で乾杯しました。

「スチュアート先生の研究が科学誌に掲載されました。そのことをお祝いして乾杯!」

 スチュアートは、立ち上がって一礼しました。

「さあ、みんな食べて下さい」

 凜は、萌々香の足もとに座っていました。萌々香は、凜に唐揚げをそっと上げていました。

「先生は、今度バスケットのコーチをしてくださるそうですね」

 雉原静香が聞いていた。

「子供の頃やっていただけで、大したプレイヤーではありませんが、ほかにやる人がいないし、研究、研究で運動不足になっていたので、すこしは運動不足の解消になるかと思って引き受けました」

「先生は上手だよ」

 沙織は褒め称えました。

「みんな覚えがいいし、とても運動神経がいいんだ。びっくりするよ」

「沙織は足が速いんですよ」

「でもみんな私より足が速い」

「そうなの? 沙織より足が速いなんて信じられない」

「みんな足が速いし、運動神経もいいし、反射神経もいい」

「私たちは日本一になる!」

 明菜が拳をあげて言いました。

「夏のインターハイで日本一になるわ」

 若菜が続いて言いました。

「おいおい、いくら何でもそれは無理だろ。少し前にバスケを始めたばかりだろ」

「それでも日本一になるわ」

 明菜は強気で言い切りました。

「ところで先生、今度の研究はどんなものですか?」

 私は、気になった事を聞きました。

「簡単に言うと、強磁性窒化鉄の製造です」

「強磁性窒化鉄ですか?」

「すごく強力な磁石です。今までとはレベルが段違いに強力です」

「それはどんなところに使われるのですか?」

「磁石を使う場所にはすべてに応用できます」

「それが出来ると便利になるのですね」

「おそらく電気モーター、医療システム、自動車、ハードディスクなどの記憶媒体で使われると思います」

「特許は取ったのですか?」

「いま申請している段階です」

 雉原一郎が替わって答えた。

「いずれにしても、高校教師をしながら研究したのは大したものです」

「大学時代から研究していたのですが、助手になってから、煩わしい事が多くなって、助手をやめて、未来高校に来て、研究を続けました。奨学金の返済でお金がなかったというのも理由でしたけどね」

「これからも研究を続けるのですか?」

「研究は完成したので、これからはほかの事を色々やってみようと思っています。バスケのコーチもそうですけど、せっかく日本に来たので、色々な場所に行ってみようと思っています」

「それはいいですね。日本にもいろいろ面白いところはあると思います」

 夜も更けて、いい時間になって、祝賀パーティーはお開きになりました。タクシーを呼んで、みんなを送りだしました。

 明菜と若菜は、ペレシュ城に泊まることになりました。

 夜が更けてくると、私は書斎のPCを立ち上げて、桜花からもらったUSBの中身を見てみました。ファイルを開いてみると、数式の羅列でした。

「さっぱりわからない。こんな時にハクシキがいてくれたら」

 私はUSBのファイルをPCに落とし込むと、ハクシキの死を嘆きました。


 朝になって、スズメに餌をやっていると、凜が起きてきましたので、散歩に行きました。

 帰宅して。コーヒーを飲んでいると、凜が言いました。

「まるくん、昨日はたくさん人が来たね」

「賑やかだったね」

「人がたくさん来ると嬉しくなるわ」

「疲れるけど、楽しいね」

 餌をついばみながら、

「私も疲れるわ」

 と、ナマイキが言いました。

「おかあさん、そんな事を言わないの! 人が来ることはいい事よ」

 シズカが窘めるように言いました。

「まあ、この子は私に説教するようになったんだ」

「昨日の夜、ハクシキがいたらなぁと思ったよ」

「お父さん、どうしているかしら」

「きっとあの世でも屁理屈をいってるわよ」

 ハト時計が8時を告げました。

「凛。みんなを起こしてくれるかな」

「わかった!」

 凜は一目散に階段を駆け上がりました。各部屋には、凜用の出入口を儲けていました。

「私も一緒にいくわ」

 シズカは、凜のあとを追いかけて行きました。

 萌々香が最初に起きてきました。

「おはよう、まるくん。凜に餌をあげた?」

「まだあげてない」

 萌々香は、パントリーから犬用の餌を取り出して、凜のお皿に盛りました。

 そのうちに桜花が起きてきました。

「おはよう、まるくん」

 やや遅れて、明菜と若菜が起きてきました。

 凜は、双子と一緒に降りてきながら言いました。

「明菜と若菜を起こすのはたいへんだったよ。重労働だ」

 双子は、挨拶もそこそこにキッチンの椅子に座ると、食卓にうつぶせて、また寝ました。

 私は、彼女たちのために簡単な朝食、目玉焼きとウィンナーの炒め物とキャベツとレタス、トマトのサラダを作って出しました。桜花と萌々香は、自分でトースターにパンを入れて焼きました。桜花は、双子のためにパンを焼き、マグカップに牛乳を入れていました。

 食事が済むと、私はあと片付けをしました。

 私が皿やマグカップを洗うと、桜花はそれを片手で器用に拭いていました。萌々香もそれを手伝って、食卓の上に並べると、双子が食器棚に収めていきました。

 そうこうするうちに、料理人の和歌子さんがやって来ました。

 ハト時計が10時を告げると、清掃スタッフがやって来て、清掃を始めました。

 私は書斎に引きこもってPCを立ち上げて作業に入りました。窓の外から、桜花と萌々香、明菜と若菜、凛とシズカが遊んでいる声が聞こえてきました。

 順風満帆なように見えましたが、私には悩みがありました。

 ミニカーのような軽い物だと空に浮かばせることは出来ましたが、重いものだと不可能でした。上野航空2佐のUSBにヒントがあるはずなのですが、いくら眺めても私にはさっぱり理解できませんでした。自分の無能さを痛感するばかりでした。

 窓から外を眺めると、鹿の子供が凜と一緒にボールを追いかけていました。すこし距離を置いて母鹿がそれを見ていました。

 私は、ペレシュ城の庭をふくめた周囲に木の柵を設けていました。鹿やイノシシ動物たちがフンをしたり、プランターの花や植物を食べたりするので、被害を防ぐために侵入させないようにしていました。

 しかし、この鹿の母子は何度も柵の外まで、やって来るので、出入り口を作って庭の中に入れてやりました。

「ここではフンをしないで、フンは柵の外でやって。それから植木の花は食べないで」

 と、彼らに諭しました。

 私の言葉が母子に理解できたようでした。それ以来、約束を守っていたので、出入り口を開けてやりました。母鹿は、まだ警戒心がありましたが、子鹿はすっかり人間に馴れていました。たまにやって来る園芸スタッフにも物怖じすることはありませんでした。

 私は、洗濯に取り掛かりました。

 以前は午前中にしていた洗濯は、時間がバラバラになっていました。私の日常や日課はすこしずつ乱れていました。私はそれに対して罪悪感を持っていましたが、臨機応変にやるしかないと前向きに考えるようにしていました。生活がすこしずつ変化しているのを、私は感じていました。

 それでも英語の勉強やピアノの練習は、ほそぼそと続けていました。

 私は、痴呆症になったり、寝たきりになったりするのをもっとも恐れていました。英語の勉強で頭を使い、ピアノの練習で指先の運動をするなどして、脳みそを活性化させていました。凜との朝の散歩も、運動不足にならないようにという自分自身への配慮でした。


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