↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】モブに転生したはずですが?  作者: 佐倉穂波


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/55

36 準備

 一日で魔道具を作ると言っていたフィンは、約束通り翌朝には新しい魔道具を完成させていた。

 徹夜して作ってくれたのだろう。フィンの目の下には、くっきり隈ができていたが、本人は特に気にした様子もなく、いつものように淡々としていた。

「できた」

 フィンが差し出したのは、細い腕輪だった。銀色のシンプルな意匠で、魔道具には見えない。

(本当、フィンの作るものはすごいなぁ)

 ラズベルトは、腕輪を手に取り、しげしげと眺めながら感心した。

「これが……術式の痕跡を記録する魔道具?」

「そうだ。対象者の近くで使えば、魅了の術式のパターンを記録できる。記録したデータは、後から取り出して解析できる」

「どのくらい近づけば良いの?」

「同じ部屋にいれば十分だ。袖で隠せるから、目立たない」

「わかった」

 ラズベルトは腕輪をそっと握り締めた。

(あとは、アレクシス殿下と会う場をどうするかだけど……)


「フィン、一つ頼みがあるんだけど……」

 ラズベルトは、フィンに向かって言った。

「なんだ」

「国王陛下に、連絡を取りたいんだ。王宮に伝手のある人間を、知らないかな」

 フィンは少し考えた。

「……一人、いる」

「頼めるかな?」

 神殿に追われている今、公式な形でアレクシス王子に接触するのは難しい。そのため、事情を知っている国王に、非公式の形でアレクシスと会う場を用意してもらいたい。

 そのことをフィンに説明する。

 黙って聞いていたフィンは、少し口元に手を当て考えたあと、頷いた。

「わかった。連絡してみる」

「ありがとう」

「ただ、返事が来るまで時間がかかるかもしれない。それまでここにいろ」

「助かるよ」

 フィンは短く頷き、部屋を出て行った。


***


 返事が来たのは、その日の夕方だった。


 フィンが一枚の手紙を持って戻ってきた。

「返事が来た」

「早かったね」

「向こうも急いでいるんだろう」

 手紙を開くと、簡潔な内容だった。


 〝三日後の午後、王宮の一室でアレクシスとの面会の場を設ける。参加者はレティシア・オルティース公爵令嬢と、その同行者一名。詳しい場所と時刻は追って連絡する〟と。

「……陛下が動いてくれた」

 ラズベルトは、ほっと息を吐いた。


***


 ラズベルトはレティシアに手紙の内容を伝えた。

「三日後、アレクシス殿下と会う場が用意されました」

 レティシアは、手紙に目を通してから静かに頷いた。

「わかりましたわ」

「レティシアさんに、またお願いすることになってしまって……」

「構いませんわ」

 レティシアは、真っ直ぐラズベルトを見た。

「私にできることが、あるならします」

「……ありがとうございます」

 ラズベルトは腕輪をレティシアに渡した。

「術式の痕跡を記録するものです。同じ部屋にいるだけで記録できるので、特別な動きは不要です」

「分かりましたわ」

「魅了の中和については、僕がします」

「あなたが?」

「はい。国王が場を用意してくれるなら、僕が直接アレクシス殿下の近くに立てる。中和の魔道具を使えば、解除できるはずです」

(レティシアさんに負担をかけたくないって理由もあるけど……)

 夜会で、レティシアとアレクシスが話をしている姿を見て、何となくモヤモヤした気持ちになったのは、胸に秘めておくことにした。


 レティシアは腕輪を受け取り、しばらく眺めた。

「前回の夜会のとき、殿下の魔力の靄が薄れていくのを貴方は見ていましたわね」

「はい」

 レティシアが、腕輪を手の中で握った。

「今度こそ、ちゃんと解いてあげられると良いですわ」

「そうですね」


***


 三日間、フィンの屋敷で過ごした。


 神殿の動きを警戒して、外出は控えた。フィンは黙々と作業を続けており、食事の時間だけは三人が同じテーブルを囲んだ。

 ラズベルトは、食事のたびに何かしら作った。フィンの屋敷には最低限の食材しかなかったが、あるもので工夫した。

「また作ったのか」

 フィンが、テーブルに並んだ料理を見て言う。

「気分転換になるから」

「……」

「口に合わないのがあったら、教えて」

 フィンは黙って食べ始めた。

 何も言わなかったが、皿は空になったので、嫌いなものはなかったらしい。

「美味しかったですわ」

 レティシアが言うと、フィンが少し目を逸らした。

「……悪くなかった」

(なんだ、照れてるのか)

 珍しいフィンの様子に、ラズベルトはこっそり笑った。


 三日目の夜、ラズベルトは眠れなかった。

 明日、アレクシスと会う。

 術式の痕跡が記録できれば、証拠が揃う。しかし、うまくいかなければ、また振り出しに戻る。


 ラズベルトは天井を見つめながら、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。