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探求者も剣をとる  作者: コラ・コーカ
第3章 スタット街脱出劇
25/29

緊急事態の鐘

 ***


 さて、これはどういうことなんだヨ?


 ワレ様が昼寝から目を覚ますと、そこは例の小娘の腕の中。


 後ろには馬車があり、あと知らない女と男が一人ずついて、そこにロト坊の姿はなかった。

 あたりは草原地帯で、ワレ様がいたはずのスタット街は随分遠くに見える。


 仕方なく、生意気にもワレ様を無許可で腕に抱き抱えているイヴとかいう小娘に状況を聞く事にした。


「おい、小娘」


「…あ、おはようございます。キリュウさん」


「キリュウ様と呼べヨ。いや、そんなことより、ここはどこ?ロト坊は?何があったんだヨ?」


「実は…私たち騎士団の方に追われたんです」


「はぁ?」



(お、おい、猫が喋ってるぞ…)


「あら、凄いわねあの猫ちゃん」


(いやもっとこう驚きをだなぁ)



 んで、後ろでこそこそ喋っているーーいや、こそこそしてるのは男の方だけか、聞こえてるからヨ?人間ども 。

 誰なんだヨ。


 ん?あの猫…


 ワレ様が気になったのは、後ろの二人のうち、女が拘束してる1匹の猫だった。

 なぜだか見覚えがある。


「ニャー」


 あの猫、ロト坊が探してた奴だヨな?

 なんか気に食わなくて、ワレ様がついガンを飛ばしちまった奴だ。


 ん?待てよ?じゃああいつらが屋敷調査の依頼人かヨ。


「キリュウさん?」


「……ま、いいヨ。んで?続きは?」


「あ、はい。じゃあ、順を追ってお話しますね」



 小娘はワレ様が眠っている間に起こった出来事を話してきた。

 ま、要するにロト坊のやつはまだあの街にいるって事ヨ。



「また厄介なことになったもんだヨ…」


「申し訳ありません私のせいで……」


 小娘は少なくとも申し訳ねえという気持ちは持っているようだった。

 全くどいつもこいつも。


「違ぇヨばか、こういうのは大体アイツが悪いんだヨ」


「え?」


「ロト坊は昔から才能があると言えるくらい、厄介事に巻き込まれるタチなんだヨ」


 だが、いくら経験しても懲りるって事を学びやしない奴だった。

 厄介事があれば自ら首を突っ込んでいくし、やりたくない事はやらない主義を自称しておきながら、断った依頼は数えるほどしかない。


「だから気にすんなヨ、遅かれ早かれ似たようなことは起こってたんだろうヨ」


「あら、あなた猫にしては中々男前なこと言うじゃない?」


 そう褒めてくるのは後ろに立っていた、機嫌の良さそうな女だった。

 そして……


「ニャー!!ニ”ャァアア!!」


 女が抱えている猫は、常に暴れ回っている。

 意訳すると、離せ!野生に返せ!!という心からの主張だ。


 うわー、やっぱ懐いてねーヨこいつ

 てか逃げたがってるじゃねえかヨ、よっぽど過保護なパターンだな。


「そこらの猫とは違うだけだヨ。褒めたってなんも出さねぇヨ」


「でもこの子の言ってる事ぐらい分かるでしょう?教えてくださいな」


 ワレ様はもう一度、暴れ猫の様子を見た。

 解放を願うペットとは哀れなもんだ。


「さぁな。知らねえヨ」


「あらそう?残念」


 女は肩をすくめた。

 一方、同じくワレ様を抱いている小娘の腕が若干震えてるような気がする事に気づいた。


「なんだ?心配してんのかヨ?」


「ええ、騎士の方々も凄い数がいましたし…私、まだ何も話していないのに…」


「ふーん」


 確かに、ワレ様やロト坊はこの小娘についてなんも知らなかった。


「ふーんって、あなたは心配じゃないんですか?」


「別にぃ?」


 心配したってしょうがない。


「そ、そうですか…たしかフランソワーズさんという方も一緒にいるんですが」


 フランソワーズ?その人間は知らないな


「そうだ、フランちゃんは置いてきちゃって大丈夫だったのか!?」


「大丈夫よ、あなたと違って強いもの」


「俺だって腕っぷしは…」


「ないでしょ?この前酔っ払いに絡まれてへたれてたじゃない」


「ぐぬぬ…」


 誰だか知らん奴と誰だか知らん奴がワレ様達を他所に、くだらない漫才を繰り広げている。


 ゴーンゴーン!!


 スタット街から鐘の音が聞こえた。

 ここまで聞こえてくるほどの大きな音だ。


「あら?」


「お、大きな音…なんですこれ?」


「おい!この鐘って!」


 男はすぐにピンときたらしい。

 時報か何かで、この大きさは異常だ。


「おい男!」


「えぇ?あぁ、なに?」


 そんなビビんなヨ…


「この鐘ってあれかヨ?」


「あ、ああ、スタット街の災いの鐘だ」


「ああ、やっぱりだヨ」


「災いの鐘……ですか?」


 小娘はどうもよく分かっていないらしい。


「あん?知らねえのかヨ」


「いえ、その……はい」


 災いの鐘の音事態を聞いた事がないなら分かるけど、一般常識だろヨ。

 知らないなんて事があるのか?


「なんか、緊急事態が起こったんだよ。あの街で」


「緊急事態……?」


「市民に大きな被害が出るかもしれない状況って事だよ」


 男は、特に小娘の様子をおかしく思う事もないかのように説明を始めた。

 それでもまだ分からないようなので、ワレ様が例を挙げてやる。


「例えばサイクロンとか自然災害、殺人系の凶悪指名犯が見つかったとかだヨ…他にはーー」


 ***


「魔物だ!魔物が現れたんだ!!」


 ニーナさんに倒された僕は、なんとか体を起こしつつ、そう叫んだ。


「魔物?こんな人が多い街に出てくるモノ?」


「外からの襲撃じゃない!屋敷の周りにいた奴らが出てきたんですよ!」


 今、災いの鐘が鳴る要因なんてそれしか思いつかない。


「それが本当なら、その幽霊屋敷…相当得体のしれない場所ね。でもまだ断定は……」


 そう言いかけていたニーナさんに向かって、建物の上から黒いクモのような魔物が飛びかかってきた。


「キシャアアアア!!」


「ニーナさん、危ない!」


「ふん!!」


 ニーナは剣は抜かずに、右手の人差し指を立てると、そこに小さな炎弾が発現した。

 やっぱり詠唱はしていない。


「ファイアーボール!!」


 彼女はそのまま、まるで投げるかのように手を振るい炎弾を放つ。


「ギ?グシャァ!!」


 見事命中し、飛びかかってきたクモは、地に着く前に屍と化した。


「マッドスパイダー…なるほど、確かに緊急事態ね」


 あまり魔物についての知識があるわけじゃないが、このあたりで見かける種類ではないのは確かだ。

 昨日は暗くて僕の目では姿形までは見えなかったが、ここに来て正体が明らかになるとは。


「屋敷から離れているこんなところまで、来ているとすると、一般人が心配です」


「ええ、そうね」


 そう言うと。

 彼女は何かを考え出した。



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