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探求者も剣をとる  作者: コラ・コーカ
第3章 スタット街脱出劇
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人質

 指揮官を人質にとり、高々と告げると、流石に彼らもさっきまでの勢いがなくなった。


「う、どうする」


「どうするって……」


「しかし馬車を行かせてしまった今、奴らをみすみす逃がすわけには……」


 うーん、それでもひるむだけかぁ。

 もう一押しほしいところだが……


「な、なにをやっている!!道を開けんか!死ぬぞ、私死ぬぞ!!」


 煮えを切らして叫ぶ人質。

 それを聞いてようやく、ザザザっと騎士たちが道を開け始めた。

 流石は指揮官殿、官服の至りです。


「参りましょう、ロット様」


「はい」


 僕たちは開いた道のほうへ恐る恐るかつ、急ぎ足で動き始めた。

 人質を抱える僕のフットワークはかなり悪いし、下手をすればバランスを崩しかねない危なっかしさがあった。


 しかし良からぬ人がすぐに人質を取りたがる理由もよく実感できた。

 その効果はこうも絶大なのだから。


 しかし、後ろからは探り探りではあるが、僕らとの間合いを維持しようとついてくる人たちが数名確認できる。


「ついてくるな!」


 試しにレイピアの刃を少し傾け、太陽の光で光らせてみる。

 それだけでおとなしく動きを止める騎士たちの様子から、快感のような感情すら沸き上がりそうだ。


「ロット様、あまりモタモタしていては……」


「おっと、これは失敬しました」


 いけないいけない、これでは僕も完全に悪者だぞ。


 それからしばらく歩を進め、ついに騎士の群れから離脱したと言える距離になった。


 ――ところで、この人質というのはいつ開放すれば良いのだろうか?


「ひぃ、勘弁してくれぇ」


 そろそろ本気で気の毒に思えてきたし、こう抱えたままだと腕もつかれてくるし、正直邪魔でしょうがなかった。

 かといって迂闊に離そうものなら、背後で様子を伺っている大群が雪崩のように押し寄せてくるのは想像に難くない。

 そうこうしているうちに、腕もぷるぷると震えだした。


「ふ、フランさん」


「どうしましたか?」


「この人どうすればいいんでしょう?」


「申し訳ありません。生憎私も人質をとった経験は無いもので……」


 そりゃそうだ。


「参ったなぁ――ん?」


 このところ予想外なことは、僕が何かしら考えあぐねているときに起こる。

 この時もその例に漏れなかった。


「はぁ!!」


 一人の騎士が建物の陰から突撃してきたのだ。


「何だって!?ちぃっ!」


「速いっ……」


 フランさんも反応も少し遅れていたらしい。

 一目散にに突っ込んできたその人相手に、僕はやむを得ず指揮官を手放し、後ろへとステップを踏んだ。


「ま、まずい事になったぞ……」


 指揮官を失った事で、後ろ盾がなくなった。

 これで彼らが僕たちへの攻撃を躊躇する必要が消え失せたわけだ。


 この騎士は何者だ?

 装備は他と見比べてもなんら変わりない、一般のものらしい。


「普通の騎士がこんな思い切った行動を……?」


「動きも只者ではありませんでした」


 フランさんもさっき以上に鋭い眼差しで、その騎士の様子を伺っていた。


「ば、ばばば、馬鹿者!?私がいたのだぞ!?」


 指揮官は助かったというのに怒鳴り散らしている。

 まあ気持ちは分からなくはない。


「失礼しました。処分が必要だとお考えなら、甘んじて受け入れるつもりです。しかしながらこれは貴方を助ける為の行動だったという事をご認識ください」


「今のどこが!?」


「彼らからは少佐に対する殺気がまるで感じられませんでした。それでいてこれだけの兵に囲まれながらも自暴自棄にもならず終始冷静さを保っているように見受けられました」


 まあ確かに殺す気なんて微塵もなかったけど、冷静だったのかな?

 それなりに焦ってはいたんだけど……

 いや、でも改めて見ると確かに自暴自棄になってもおかしくない戦力差だ。

 多分僕たちは例外の側にいる存在なのだろう。


「指揮官を人質にしたのは逃げるためのパフォーマンスに過ぎない。だから斬りかかりました」


 うわ、全部当たってるよ。


「ほ、ほぉ?お前誰だ?」


 声からして女性らしいその騎士は、そう問われて兜を脱ぎ捨てた。


「んな、貴様は!」


「私はニーナ・ホリーロック中尉です」


 若い女性の騎士だった。兜を外した事によりピンク色のポニーテールも露わになっている。


「7番隊の小隊長がなぜこんなところに!?というかなぜ下級の装備を?」


「装備は偽装です。目立ってしまっては不意を突いて斬りかかれませんでしたから」


 その判断は正解だと言える。

 周りと違う装備の騎士がいれば誰であれ必ずマークしていた。

 この人、そうとう頭が切れるみたいだ。だけど、まだ他の兵は動きだしていない。


 僕はフランさんに目配せする。

 逃げるなら今のうち――と言ったところでしょうか?

 多分そんな感じの視線が返ってきたと思いたい。

 それ対し僕が頷く前に。


「少佐、彼らが逃げます。号令を」


「げ!」


「うむ、者どもかかれぃ!!」


「「「うぉおおおお!!!」」」


 迷いのなくなった騎士たちの勢いはいっそう増していた。

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