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第7話:「命を守る最速輸送レース‼」


赤茶けた荒野を割る車輪の軋み。

巻き上がる砂埃の焦げた匂いが、容赦なく鼻腔を突く。


荷台に鎮座するは『星結びの特効薬』。


ウィル商会からの特急の依頼。


死の淵を彷徨う村の子どもたちへ届ける、命の最速輸送レース。

納期厳守。遅延は万死に値する。プロフェッショナルの矜持。


だが前方。土煙を引き裂き、豪奢な馬車が強引に道を塞ぐ。


利益を独占し、他者を蹴落とすライバル企業

『麗しの妖狐ミラージュ・フォックスキャラバン』。

高級感だけを売りにした虚飾のブランド商法。


「オーッホッホ! その薬、我が商会が独占させていただきますわ!」

けばけばしい扇子を揺らし、高飛車に笑う女狐獣人社長。

マダム、キーツィ・ヨ・セイガク。


ピコンッ、と視界に蒼いシステムウィンドウ

【竜眼】が発動する。(カシャン、カチッ)

同時に脳内で開く『社畜タスク管理UI』。

【緊急タスク:ノイズの排除 / 優先度:低 / 対応方針:黙殺】


鼓膜を打つヒステリックな怒声。

徹底的にスルー。

ふぁあ、と小さく欠伸をひとつこぼし、青い羽毛に包まれた前脚の爪を器用に手入れするドラン。


それに対し。

「あー、めんどくせぇ。さっさと終わらせるぞ」舌打ちと共に跳躍する影。


敵幹部メンドゥー・クスゥエイ。

システム上に可視化される、極端すぎるステータス。

【瞬発力:999】

【持久力:3秒】


空を覆い尽くす無数の凶刃。

常人ならば反応すら許されない神速の奇襲。

まさに『3秒だけ最強』を体現する脅威のパラメータ。


迫る死の雨。


それを真っ向から弾き返す女剣士(副長)アーロイ。

手にするのは、最強の専用武器『アマルガム』。

重力に逆らう流麗な身のこなし。

鋼と鋼が激突し、大気を震わせる重厚な咆哮。

息をもつかせぬ斬撃の応酬。


だが、きっかり3秒後。


急激に鈍るメンドゥーの動き。

限界を迎えた持久力が、容赦なくゼロへ反転する。

驚異的な瞬発力に全振りした、スタミナ皆無の欠陥ビルド。

一瞬で息を切らし、地に膝を突く。


そこへ迫る、空を真っ二つに割る七色の閃光。

無慈悲に振り下ろされるアマルガム。


分厚い大剣が、飴細工のごとく粉々に砕け散る。


「……あ、マジで勝てねェ。帰って寝るわ」

あっさりと両手を挙げ、白旗を振るメンドゥー。

早すぎる業務放棄。


同時に周囲で巻き起こる蹂躙劇。


誇り高きもふもふ部隊が、敵の傭兵たちを次々とおねんねさせていく!

これこそが、世界一仲良しな「家族」のチームワークだ。


「チッ、使えねぇ奴らだ! 俺の自動化魔術で蜂の巣にしてやる!」

怒号と共に進み出る敵幹部グロイ・ゾ・ハラ。

背負うのは、限界を超えてパンパンに膨らみ、今にも弾けそうなボロボロの魔力電池。


発動する魔術。

詠唱破棄。

網目を縫うように迫る、大気を焼き焦がす炎と、骨まで凍てつく氷の弾幕。

回避不能。

空間を埋め尽くす、薄汚い「数だけのつぶて」。


だが、歩みは止めない。


(カチッ)『ズルい嘘見抜きモード』起動。

(魔力電池を用いた、市場の独り占め。明確なルール違反。正義の欠片もない)

「商売の勝ち筋」を見抜く眼が、敵の悪行を瞬時に確定させる。

致死の魔術の群れ。

見つめる瞳に焦りはない。

ただの「食後のデザート」を品定めする冷ややかな眼差し。


迫り来る炎と氷の弾幕。


ドランの瞳に、蒼い光が走る。


ピコンッ。

視界に蒼いシステムウィンドウが展開する。

【竜眼:吸収解析モード】

対象:多重連続魔術

▶ 属性:炎/氷/瘴気(混合)

▶ 危険度:A

▶ 発射数:過剰(法定基準超過)

▶ 違法性:高(魔力電池の過負荷運用)

【推奨行動:強制没収インフィニティ・イーター

【成功確率:100%】


「きゅるんっ」 愛らしい鳴き声を響かせ、極大の顎門を開く。


蒼い魔法陣が喉奥に展開する。


発動する固有スキル。

『無制限の強制没収(インフィニティ・イーター【無限魔力喰らい】)発動‼』


迫り来る炎と氷を、三時のおやつを摘むように次々と呑み込む。


腹の底で暴れ狂う魔力を噛み砕き、己のエネルギーへと変換する。

山のようなしつこい嫌がらせを、まとめてポイするだけの。

なんてことない、ただの『お掃除』だ。


「な、何ぃ!? 俺の魔術が……喰われているだと!?」 驚愕に引きつるグロイの顔。

完全に底をつく魔力電池。


豪華な馬車の上で、マダム・キーツィが扇子を落としパニックに陥る。


(カシャン)『決済(エネルギー処理)モード』移行。

【竜眼:逆決済ロックオンモード】

対象:グロイ・ゾ・ハラ(魔術発信者)+その一味。(おまけ)

▶ 状態:魔力電池枯渇

▶ 防御力:低下(−87%)

▶ 回避行動:不可(過労死寸前)

【エネルギー残量:120%(吸収分+内部変換)】

【推奨行動:パックンチョ・リバース】

【照準:固定】

【発射許可:承認済】


絶対零度の眼光で敵を射抜く。


隣に立つ社長リーファ。

一切の表情を崩さず、凜とした声で戦場に言葉を響かせる。

「ドランが言っています。**『ひどい嫌がらせと商売の邪魔、その証拠はばっちり記録させてもらった。これより、まとめてお掃除(お仕置き)を始める』**と」


喉の奥で、限界まで圧縮された魔力が臨界点を突破する。


解き放たれる超高密度の蒼き閃光。(喰らえ!)ーパックンチョ・リバース‼ー


「真っ当な商売」の怒り(鉄槌)。

視界を白く染め上げる奔流が、荒野を抉りながら直進する。


猛烈な熱風。

そして晴れる土煙。


そこに残るのは、見事な球体のアフロヘアになり果て、全身を真っ黒に焦がしたマダム、グロイ、メンドゥーの三人。

「き、きぃぃぃっ! お、覚えてらっしゃいチビドラぁぁッ!」 涙目で叫ぶマダム。

その瞬間、彼女の震えるお尻から、プゥーッと情けない破裂音が響き渡る。


顔を真っ赤にし、一目散に地平線の彼方へ逃げ出すミラージュ・フォックス・キャラバンの面々。


完全なる事業撤退。


再び急ぎ車輪を回す馬車が村へ到着ー。


待っていた人々の手に渡される『星結びの特効薬』。

苦痛に歪んでいた子どもたちの寝顔が、穏やかな寝息へと変わる。

「ユニの角から溢れる光が、子どもたちの枕元を優しく照らす」


大粒の涙を流し、何度も何度も頭を下げる親たち。


振り返れば、汗を拭いながら満面の笑みを浮かべるキャラバンの仲間たち。


そして、優しく頭を撫でてくれるリーファの温もり。


(当たり前の日常を守り抜くこと。それこそが、究極の魔法だ)


守れた命の重さが、胸の奥で静かに光を灯す。

静かな確信が、胸の奥底を温かく満たす。


「きゅあッ」 小さく喉を鳴らし、見上げる空。 どこまでも青く、澄み渡っている。



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