表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/11

第9話『聖女の恋文(Sクラス信書)輸送大作戦‼』中編


鼻腔を焼く濃密な硝煙。

空をどす黒く染め上げる魔力の残滓。


最前線。

絶えず死の影がちらつく防衛ラインが崩壊しかけている理由は、敵の猛攻ではない。


「あれぇっ!? 最近ぜんぜんハレルヤちゃんの応援のラブレターが来ない!?」

悲痛な絶叫が、血塗られた戦場にこだまする。


比類なき最強の聖騎士ハルト。


国を背負うはずの英雄が、美しい顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃに歪ませている。


恋文バフが来ないと僕のHPは常に1桁なんですぅぅぅ! 精神支援が切れたらただの豆腐メンタルなんですぅぅ! あーもう無理ゲー! 帰る! 今すぐ帰る!」


大地に放り出される国宝級の聖剣。

完全に戦意を放棄し、本陣へ全力疾走しようとする大将の足に、泥まみれの数十人のエリート騎士たちが必死にすがりつく。

「隊長ぉぉ! お気を確かにぃ! 魔族がすぐそこまで来てますからぁぁ!」


鎧と鎧が擦れ合う鈍い金属音。

防衛の要石が自ら崩れ去る、大カオスの光景。


その致命的な綻びを、真のブラック企業が見逃すはずもない。


空気が凍りつく。


違法業者『暴食の魔獣商隊グラトニー・キャラバン』の悪党が、魔族と結託し前線へ運び込んだ規格外の闇魔術兵器。

《魔力圧縮型・闇属性多重爆裂砲ブラック・オーバードライブ》。

放たれる極彩色の閃光。

重力すら歪む爆圧が前線を吹き飛ばす。


宙を舞う聖騎士団・『聖心部隊クオーレ』の騎士たち。

ひしゃげる鋼鉄の盾。

ルール御免の皆無。

法を嘲笑う無慈悲な蹂躙。

圧倒的な暴力の前に、防衛ライン突破まで残り数秒。


絶望が戦場を覆い尽くそうとした、その瞬間。

重厚な金属の塊が大地を叩き据える、鋭い落下音。

巻き上がる土煙。

その中心で淡い光を纏い、悠然と佇む影。


我らが『星屑のゆりかごキャラバン』の到着。


【Sクラス信書:最終配送フェーズ】

【重要度:極秘/国家存亡級】

【現場状況:指揮官メンタル完全崩壊】

【脅威レベル:SS(違法兵器による前線崩壊)】

【推奨行動:配送ルート強制確保 → 敵戦力の排除】

続いて、頭脳タスク管理UIが冷たく展開する。

■ 緊急タスク:士気向上アイテムの即時投函

■ 優先度:最上位

■ リスク:遅延=国家崩壊

■ 備考:感情は不要。業務遂行のみ。


((……現場責任者の致命的なメンタルヘルス不全。それに伴う組織の崩壊か))


風に揺れる青いもふもふ。

見下ろす先には、涙目で丸くなる最強の聖騎士。


((原因は明確。『Sクラス士気向上アイテム』の供給停止によるシステムエラー。やれやれ、どこの現場にもモチベーション管理ができない困ったちゃんはいるものだな。だが、家族リーファとの平和な日常を脅かす違法業者の横暴は、ここでお仕舞いだ))


もふもふの外見に反し、内側は完全にプロフェッショナルの鬼。 右前脚を伸ばす。


絶対の守秘義務を帯びた、分厚いジュラルミンケース。

冷たいロック機構へ、極めて事務的な動作で爪をかける。


見据えるのは、大虐殺を企てるグラトニーの違法兵器群。

瞳に宿すのは、戦場をただの「仕事」として処理する絶対零度のお仕置人の光。


「ピルルルッ♪(訳:配送業務、最終フェーズへ移行。——これより、戦場の最適化を開始する)」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ