第39話:大切な物と人を勇者は見定める
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第39話:大切な物と人を勇者は見定める
グレインランドさんは続けて数値の裏返しを語る。
「科学院の研究者達もセレーデ勇者様の戦法が最もダメージが少ないとの見方だ……」
その時だった、ラオスが片手を肩に乗せて一言だけ告げる。
「お前のせいじゃない、相手が強いだけだ」
「ラオス……」
「そうだ、レイズ。魔王の側近との相手は民間人や一般兵の死亡はもちろん、勇者が複数名殺されるのもちょくちょくある話だ。むしろハリケウスは魔王のお気に入りでな8回出没して3回死んでいる。つまり5回は大勢の命が失われても勝てなかったんだ」
そんな化け物に挑むのか……
僕の膝は笑って、震えていた。
「僕達は勝てるのかな……」
「勝たなければライラが泣くぞ?」
セレーデさんからその言葉が出るとは思わず、少しずつだが勇気が湧き、ライラが参加できない分ライラの分まで頑張らないとと気合いを入れ直す。
「ありがとうございます。セレーデさん」
セレーデさんが黙って頷くと、グレインランド騎士団長が締めくくる。
「作戦開始は明日の午前5時、大半の魔物が寝てる時間帯を奇襲する。目的地に着くのは馬車でも一日半かかる。そこから翌日の午前3時の真夜中に大規模な攻勢に出ると同時に要塞砲とバリスタの兵士を速やかに射殺し、大砲で飛行場の防壁に穴を開けて突入する。その後はフレイズム勇者殿が敵を焼きながら、セレーデ勇者連合パーティがハリケウスの元へ辿り着くようにする。以上、解散!」
僕は執務室を出た後にラオスとホテルへ向かうが、ラオスから「市場へ行くぞ」と言われ、露天街に入る。
明るく人気があり、自然と先程までの絶望感が軽くなる感じがする。
「ラオス、何故市場に?」
「お前話聞いてなかったのか?ほぼ2日近くかけての遠征なんだから好きな食べ物や飲み物買うのが当然だろ?」
言われてみればそうだ。僕は絶望感のせいで英気を養うという生きる為の最重要事項を忘れていた。
「そこの勇者様お二人さん!サンドイッチはどうだい?」
辛子マヨネーズのピリ辛な香りが鼻腔をつき、他にも醤油ベース風な甘辛いソースの匂いもする。
「あー、えっと……」
僕の脳の整理がつかず、陰キャムーブをしてしまい、あたふたしてると、ラオスが売り場のお姉さんに迷いなく声をかける。
「お姉さん、そのサンドイッチ日持ちする?」
「イエース!3日は大丈夫だよ!」
「じゃあテーリヤキとサラダサンド2つずつ頼むよ」
「センキュー!80ルドシアだよ!」
「10ルドシアはチップで受け取ってくれ。じゃあね〜お姉さん」
ラオスはスキップしながら、2袋を僕に渡してくれる。
「あ、ありがとう」
ラオスは「父さんを助けてくれた礼だ」とだけ言って、買い物を続ける。道を進み始めた、その時に僕は綺麗な蒼色の液体に目が入る。
「ラオス、あの液体が気になる」
「あぁ、聖清水か。傷の回復が早まったり、魔物の血を飲んだ時の応急処置に使われるな」
「僕達は基本的に剣士だから魔物の血が入ったとき用に買っておくね」
僕は露天商のおじさんに近づき、商談を持ちかける。
「聖清水2人分ください」
「200ルドシアじゃ」
僕は鎧から取り出して、支払う。
「おぬしは勇者様であったか……よろしければこれも買って頂けませんかのう」
店主さんは後ろからとても綺麗な青く光るような液体を見せてくれる。
「神水という聖清水の上位互換なんじゃが……強力な魔障を祓う以外は聖清水と同じでのう。買う人がいないんじゃ……もしお仲間さんが大量に魔物の血を飲んだ時とかに使えるんじゃがどうじゃ?」
大量に魔物の血か……考えにくそうだけどリスクヘッジで持っておくのもいいかな。死雨の魔皇と言うくらいなんだから魔物の血の雨とか降らされたら厄介だ。
「じゃあ300ルドシアでどうですか?」
「ありがとうございます……勇者様」
その後もコーヒーやビスケットなどを買い、ホテルへと戻る。
「ラオス様、レイズ様おかえりなさいませ。ライラ様は地下の射撃場にいらっしゃいます。という事で血ちょうだい〜」
僕とラオスは顔を見合せ、ラオスが首筋を見せる。
「いいの?ラオス痛かったりしない?」
「吸血経験は何度かあるから心配するな。レイズは慣れてないんだろ?戦闘前に慣れないことして体調崩されたら困るからな」
「ありがとう、ラオス」
「じゃあいただきまーす」
ラオスは少し、表情赤らめながらも血を吸われる。
「そんなに見るな。ライラの所にでも行ってこい」
「あ……うん。そうだね」
僕のあまりにも対応力の無さには、多分ライラがこの場にいたらガッカリするだろう。そんな杞憂も感じつつ、射撃場に行くと……
パァン!
という激しい炸裂音の銃声が聞こえ、硝煙と燃えカスのような臭いが鼻を突く。
休憩スペースに入室し、ライラの射撃を後ろから眺めていた。
300m先をリボルバーライフルで正確に撃ち抜いていた。
パァン!パァン!
連続射撃も非常に安定しており、流石乗馬中でも正確に射撃をしたお嬢様という感じがする。そしてふとアルドスの戦闘を思い出し、胸が締め付けられる。ライラの射撃技能の本質は誰かを守るために必然として磨かれてきたものだったと。
僕は小さい拍手をしたら、彼女はすぐに気がついた。
「レイズ、いたのか。会議はどうだったか?」
「うん……明日の午前5時に南城下町門に集合みたい。その後は……」
「言わなくても分かるぞ。一日半かけて飛行場に向かうんだろう?」
「まぁね……」
ライラはライフルを置いて、僕の目をじっと見つめる。
「私から離れるのがそんなに寂しいか?」
僕は意表をつかれ、一言だけなんとか言葉をつむぎ出すが、それは男性としてはあまりにも寂しい言葉だった。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
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