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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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バカ

ちょっとグロイかも。

«琉斗様・・・良かった。もう、私ダメかと・・・。»


フレアは手で顔を覆う。そのまま声を上げて泣き出した。


 ・・・激痛に耐えたかいがあったな。


フレアの様子を見て本当にそう思った。ここまで自分のことを好いてくれる人がいるのだ。勝手に死ぬなんて絶対にできない。



俺はフレアとの再会に喜びを感じていたが、それを妨げるかのように左目がズキンと疼いた。


「感動の再会か・・・くくっ。だが、まだ私は残ってるぞ?」

«黒多頭蛇・・・お前。»


化け物改め黒多頭蛇は、俺の意識が戻ったことへの怒りの感情ではなく、むしろどこか面白がるようにそう言った。


 あとは、こいつを何とかしないといけないな。


俺は疼く左目を押さえながら深く息を吐いた。


「そうだな。お前がいるといつ暴れられるか分からなくて困る。」

「そうだろう?だから一ついい案がある。」

「何?」

「時間によって体の支配権を分けるのだ。」

«なっ!»

「・・・。」

「零時から正午までを王が。正午から二十四時までを私が支配する。ただ、それだけではこの交渉に意味はないだろう?だから、王の指定する者には手出ししないと約束しよう。」

「なるほどな。」


予想よりも俺に好条件な提案だった。


もちろん、一日の半分が失われるのは大きい。それに、俺の指定した人には手出ししないとしても、その間何されるかが分からない。俺に影響が全くないなんてことは、化け物のことだからあり得ないだろう。


しかし、このままではどうしようもないのも事実。


今は俺が黒多頭蛇を抑え込んでいるが、ずっと気を張り続けることなんてできないし、したくない。


それなら、一日の半分を与えてもいいのではないか。







 前までだったらそう考えてたかもな。






「どうだ。悪くない――」

「なぁ。化け物。」


俺は化け物が黒多頭蛇という名であることを知っていたが、あえて化け物と呼んだ。







「俺をあまり見くびるな。」







陰棘(いんし)


黒い棘が()()腹や胸から突き出す。





「は?」

«琉斗様!!»



俺は吐血した。


血を吐いているのでろくに言葉を発することもできない。


だが、ここで止まるわけにはいかない。ここで止まったらただ死ぬだけだ。



「・・・陰なる回復。」


黒い影が俺を包み、傷口を癒す。



 やっぱ、痛いのは慣れないな。



どれだけの痛みに耐えてきたとしても、それに慣れるなんてことはできない。それは痛みを感じなくなるほど傷ついただけだから。


自分で自分を痛めつける。


それは辛く、悲しいこと。


周りから見てもそうだろうが、やっている本人が一番辛い。


だが、俺はここまで何もできていない。


自分の始末ぐらいはしないと、格好がつかない。




「陰棘。」




再び黒い棘が俺の体から突き出す。



そしてそれを消す。


「陰なる回復。」


ただ自分を刺すだけならすぐに死んでしまうので、回復する。


これの繰り返しだ。



「・・・王よ。まさか。」

「安心したよ。お前も痛みを感じてるようで。」



俺は自分の左目へと右手を持ち上げる。



「化け物。俺の魂は狂っていると言っていたな。それは合っていると思う。」



黒い棘が体を貫く。



俺は大量に吐血しながら、少し笑った。


「・・・我慢比べだ。」





右手を左目に入れ、眼球を引きちぎった。





あいにく、自分で自分を刺すことには慣れている。



===================================



「・・・消えたか。」


自分自身への拷問を繰り返すこと十数回。


予想より早く黒多頭蛇は消えた。


痛めつけることには慣れていても、立場が逆になると嫌なのか。


たぶんそうではない。


あいつはそれに耐えられないほど脆弱ではないだろう。


おそらく俺を見かねて消えた。これ以上我慢比べを続けていても意味がないと。


黒多頭蛇がいなくなったのは気がついていたが、それからも何度か陰棘で自分を刺した。


念には念を入れなければ、と。



俺はその場に倒れこむ。



 さすがに疲れた。



寝転ぶ俺に陰がかかった。


「フレア。」

«・・・。»


フレアは無言だった。



 ・・・え?



そして、思いっきり頬を叩かれた。



«ぐずっ。・・・琉斗様の、バカぁああああ!!!»



フレアは大声をあげて泣き出した。頬にその涙が落ちてくる。



«なんで、そんなこと、するんですか。いくらあいつを追い出すためだからって・・・。ううっ、あんまりです。»

「フレ、ア?」

«私はっ、琉斗様のことが好きです。大好きですっ。»

「・・・。」

«それなのに、そんな、自分を痛めつけて。見てる私が辛くないとでも思ったんですかっ!»



俺は何も言えなかった。


自分で自分を痛めつけること。俺が化け物を追い出すために一番いいだろうと考えた方法だった。


しかし、それをフレアが見ていたのだ。


好きな人を攻撃するのは辛いだろう。これは俺が暗闇の中で考えたことだ。


だが、それと同じぐらい見ているだけなのも辛いはずだ。



«だいたい、めちゃくちゃ心配したんですからねっ。それでやっと会えたのに・・・。琉斗様はバカです。»

「・・・ああ、そうだな。」



俺はゆっくりと起き上がり、フレアを抱きしめる。


「ごめん。フレア。何も考えれていなかった。本当にごめん。」

«・・・私、怒ってますから。許さないからねっ。»

「それでいい。今回俺は何もできてない。全部俺が悪かった。ここまで順調だったから油断してたんだ。ほんと、ごめん。」

«そんなこと、ないです。あいつを倒したのは、琉斗様です。»

「そうかもしれないが、それでフレアを傷つけた。なら何もできてないのと同じだ。」

«・・・。»


俺は化け物を追い出したかった。


それは単に自分の中に異物がいるのが嫌だったというだけでなく、俺の周りの人を傷つけたくなかったから。



「ありがとな。フレア。俺を助けてくれて。俺を好いてくれて。」


しばらく抱きしめていたが、腕を少し緩め、フレアの顔を見つめた。


涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっているが、とても綺麗だった。


「フレアはさ、自分で自分を美少女だっていってただろ?」

«・・・はい。»

「正直あの時は自信過剰な奴だなって思った。だけど、」


今言うべきことではないかもしれない。こんなかっこ悪いときに言われてもうれしくないだろう。


それに、今言うと、気持ち悪いと思われるかもしれない。そんな言葉で丸め込もうとしていると。


だけど、これが俺の正直な気持ちだった。





「お前は美少女だよ。フレア。俺はフレアのことが好きになったかもしれない。」





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