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失敗の数、挑戦の数

授業中、わたしは授業ではないことを考えている。象のように耳はぱたりと閉じている。どうやらわたしは失敗したことで周りに受け入れられたようだった。そんなことがあるのだなと思う。これまでは普通に見られたいから、失敗しないように、浮かないように、控えめに日々を送ってきた。みっともないのが怖かった。その気持ちの根にはいつも吃音がある。いつも気にしていた。見えない手がわたしの首を浅く絞めていた。わたしの頭を下へと押していた。その息苦しさが周りにも伝わっていたのかもしれない。見えない手、その手はきっとわたしの手だったのだ。


今回恋がその手を払ったのだった。もっと抑え込んでいた自分を出してもいいのかもしれない。挑戦する自分を、そして失敗する自分を周りに見せていいのだ。そこに共感が、繋がりの芽生えがきっとあるのだ。みんなだって挑戦して失敗するから今日寄り添ってくれたのだ。もっと失敗をするんだ。失敗の数だけ挑戦があるのだ。


わたしは橋子と永遠に今日の昼ご飯は教室で食べると送る。返信が来る。昼、わたしはクラスメイトの輪に入る。メイクの話になり彼女らが使っている、おすすめの化粧品を教えてもらう。わたしはその名前を数学のノートの余白にメモする。数学のノートは広々と白いのだった。


SNSのグループにも入れてもらう。このグループで彼女たちは日夜を問わず会話をしているみたいだった。夜さっそくメッセージが来る。今日仲間になった藤原さんに10の質問! みんなの質問にわたしは答えていく。Q1好きな色は? 青 Q2好きな音楽は? 勉強中! Q3好きな先生は? 司書教員の恵美ちゃん先生 寄せられる質問が10を超え増えていく。こんな風にわたしに興味を持ってくれるなんて嘘みたいな話だ。なんだか芸能人になったみたいだった。好きな人はいますか? の問いにわたしははいと答える。次はその人の名前は? だった。わたしは少し迷う。今日親しくなったばかりなのに、教えていいものだろうか。でも、他に選択肢は無いような気がした。仲間に入るためには必要なことなのだ。五十嵐くんです、と答える。そうだったかあ、五十嵐くんも人気あるよねとメッセージが来る。ドキッとした。わたし以外にも彼のことを好きな人がいる。考えてみたことがなかった。


みんなは好きな人がいますか? とわたしはメッセージを送る。するとみんなから驟雨のように次々に返信がくる。ただ同じ教室にいるだけではわからない、みんなのこころの中を知ったような気がした。こんなにも騒がしく、溢れていて、豊か。少し遅れて、わたしも五十嵐くん気になってるよ、と返信が来る。星野さんだった。お互い頑張ろうねと続いていた。好きな人が同じ人と仲良くなることはできるのだろうか。私には何もわからなかった。大切なところが同じなのだから、誰よりも近い存在なのかもしれない。そして誰よりも期間限定の友情なのかもしれない。でも仲良くしたいとわたしは思う。


「友よあなたにもわたしにも好きな人がいるハーゲンダッツの新しい味」とわたしは詠う。

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