凭れあうふたつのロウソク
「清彦くんに聞いて飲み物買ってきてくれる?」
「わ、わかりました」わたしは図書室を出て空き教室へと向かう。戸を開けると男の人がそこにいる。それが清彦くんだった。清彦くんはグレーのセーターに黒いジーンズを履いている。将棋が強そうだなとわたしは思う。細身の人だった。
「さ、佐々木、き、清彦さんですか?」
「そうです」
「の、飲み物は、何が、いいですか?」
「え、うーん」わたしは清彦くんを見つめる。この人がわたしが先日まで読んでいた本を書いた人なのだ。どうもピンとこなかった。
「烏龍茶で」「わ、わかりました」
図書室では立ち見の人が出ている。朗読会が始まる。朗読、それはわたしにはできないことのひとつだった。国語や英語の朗読の類は、入学時に先生に相談して免除されていた。自分で創った物語をみんなの前で読むのはどんな気持ちなんだろうか。隣では橋子がきらきらとした瞳を清彦くんに向けている。
青年イゲは母ミツとふたりで羊や山羊を育てながら、貧しくとも仲睦まじく住んでいる。イゲにはユナという恋人がいて、お互い結婚を約束している。ある日、ミツが病に伏せる。日に日にミツは弱っていく。ある日、医者はイゲにもって後数日の命だと伝える。イゲは村の牧畜仲間の助言に従って山の頂上にいる神に願いをかけに行く。神はイゲの寿命と引き換えにならミツの命を延ばしてやるという。イゲの1日がミツの1日。その日から毎日イゲは神に願いをかけに行く。神はしだいにミツの命を釣り上げていく。ミツの1日がイゲの2日。ミツの1日がイゲの3日。毎日遠くにある山の頂に行くため、牧畜の仕事が出来なくなっていく。ユナに食べ物を求めるようになる。不審に思ったユナがイゲの叔父のコウザに相談する。
ある日、コウザはイゲの後を付いていく。コウザはイゲの神との約束を知る。それをユナとミツに話す。ミツは自ら命を絶とうとする。騒動が巻き起こる。ミツから説得されたイゲはミツの死を受け入れる。ミツは結婚式を見て死にたいという。神はそれを叶える。次の日、イゲとユナの小さな結婚式が開かれる。その夜、ミツはイゲ、ユナ、コウザに見守られながら息を引き取る。月日が経ち、イゲとユナの間に女の子が生まれる。ふたりはその子をミツと名付ける。ある日、イゲは山の神のもとへ再び行く。ミツにわたしたちの手紙を届けてほしいという。神はそれを不要だという。ミツからの手紙が欲しいとイゲはいう。神はそれを叶える。お前の飼う羊の足を調べろと神はいう。イゲは従う。ある羊の後ろ脚に手紙が結ばれている。ミツからの手紙をイゲたちは読む。イゲは神に感謝する。神はイゲを祝福する。それが「凭れあうふたつのロウソク」のあらすじだった。




