染み入る炭酸
書くように読んでいるのだろうか。朗読はゆっくりと進んでいく。聞きやすい声だった。今回はミツが病気になるところまでの予定だった。朗読が終わると清彦くんは書いていた当時のことを話す。どんな作品にしたかったとか、どんな気持ちで書いていたとかを話す。その後に来てくれた人たちの質問コーナーがある。それも終わると司会の一言で散会になった。サインを書いてもらうための列が自然とできる。握手や写真も撮ったりする。わたしたちは撤収を始める。セッティングしたものを片付けて椅子と机を元に戻す。重いものはみんなで持つ。一体感があった。
それも終わると、清彦くんは恵美ちゃん先生と雑談をしている。「みんなお疲れ様」と恵美ちゃん先生がいう。先生はジュースをわたしたちに配る。わたしは喉が渇いていた。炭酸が喉に染み入る。
「今日はどうもありがとう。またよろしくお願いします」と清彦くんがいう。3年生の一人が「清彦くん、わたしたちもサイン欲しいんですけど」という。「もちろん、書くよ」また列ができる。見ると橋子も並んでいる。
帰り道、「どうだった?」と橋子はわたしに聞く。
「み、みんなで、い、イベント作るのって、た、楽しいね」
「そうだよね! 朗読も良かったなあ」
「本、前もって、読んでて、よ、良かった。ありがとね。さ、サイン、貰えて良かったね」
「うん、前にも貰ったんだけどね。これも宝物にする」と橋子はかばんをギュっと抱きしめる。「次の朗読会も楽しみだなあ!」
「そ、その時はわたしたち、に、2年生だね」
「いばら、思い残したことは無い? やりたいことはできた?」
「つ、辛いことも、う、嬉しいことも、あったかな。やりたいことって、い、いわれると、上手く、浮かばないけど」
「ねえ、わたしたちってさ、戻りたい昨日、かけがえのない明日、そうでもない今日を生きてると思わない?なんなの?一体」
「で、でも今日はと、特別な日だったね」
「忘れたくない今日だった」わたしたちは今日という日に満足している。辺りかまわず感謝したい気持ちだった。雪を踏みしめて凍てついた空気を胸いっぱいに吸う。
「白い空まごころが降る地に積もるわれらは子供白い息吐く」とわたしは詠う。
「わ、今のが歌?」
「そうだよ」とわたしはいう。




