わたしたちと一緒なんだから
その日の夕方、振り返りに河川敷に行った。今日は上手くいかなかったこともあったけど上手くいったこともあった。慣れていったらもっと上手くいくだろう。これから続けていくことが大切だ。なによりも経験できなかったことが今日できた。
本当にどきどきした。昼休みの3人の姿をわたしは思い返す。席を寄せ合ってわたしたちはまるで友達のようだ! ふたりのことをもっと知りたいと思った。わたしのことも知ってもらって、そして本当の友達になるのだ。それはきっと、そう遠いことではないだろう。もしかしたら夏休みのアルバイトも誘ってくれるかもしれない。私にもできるだろうか。たった1日で世界が劇的に変わっていく。勇気を出してみてよかった。わたしは明日の天気を調べた。新しい小話のネタも急いで考えなくてはならない。もっと面白くてふたりが笑ってくれるような話。
次の日の昼休み、わたしはふたりのところへ行く。
「今日も、い、一緒に、ごはん食べても、い、いいかな?」
沈黙があった。ふたりの様子が昨日とは違うと思った。なんだろう。
「他の人と食べてくれないかな。わたしたちじゃなくて」と渋谷さんがいう。その表情に、言葉にわたしは立ち尽くしてしまう。膝に上手く力が入らない。胃が急に重たくなる。
「ちょっと! かわいそうじゃん」と北川さんがいう。
「かわいそうじゃないよ。わたしたちと一緒なんだから」
「ごめんねえ」と北川さんがわたしに手を合わせる。
なんとかわたしは自分の席に戻った。こんな時、どんな顔をしたらいいのだろうか。お面をかぶりたいとわたしは思った。購買で売っていたら買っているだろう。4つ買って頭の周囲を覆いたい。
気のせいだろうか、なんだか教室が静かな気がする。突然サカダチ君が「逆立ちして牛乳1リットル飲む!」とみんなに宣言する。マジかよー。無理だろー。やる! わたしはぼんやりとその様子を見ている。
渋谷さんと北川さんがダメだったからと他のグループに転じて話しかけることはできなかった。そんな勇気は無かった。いや、それは勇気というより恥を知らないことのように思えた。これは一種の戦力外通告で謹慎を命じられたのだ。友情の停学なのだった。
わたしは残りの日数、夏休みをひたすら待った。夏休みに入ればみんなの記憶も薄れていき、この状態もリセットされるだろう。でも、渋谷さんたちとはもう話せない。それが悲しかった。たった1日で見限られてしまった。彼女たちとの未来は孤独な妄想に終わった。会話術とはなんだったのか。もう天気の話もネタを考えることもしたくなかった。
ある夜、わたしは考えたネタを紙にもう一度書き出した。いつもより丁寧に文字を書いた。そしてその紙を庭で燃やした。火は燃え移り燃え上がり消えた。月は雲に隠れている。なにやってんの? と母が尋ねてきた。わたしはうやむやにして部屋に戻った。
「月闇の家の庭に燃え上がる求めたのは紙一枚の君」と私は詠う。




