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花の蜜

ふたりは目を合わせる。わたしはふたりの席の近くに座る。こんな風に誰かの席を借りるのは初めてのことだった。ふたりをこんなにも近くで見ることも初めてだった。ふたりはくちびるがつやっとしている。頬がきらきらしている。ふたりとも顔は違うが似たようなメイクをしている。わたしはふたりの控えめにアイラインを引いた目を見つめる。目を見て会話することと本に書いてあったから。これからは化粧の勉強もしなくてはならない。仲が深まったらわたしもふたりと一緒のメイクするんだとわたしは思った。


「またニキビできちゃったなあ」と渋谷さんがつぶやく。

「ホントだ」

「皮膚科行かなきゃ。なんなわけ?」

「わたしはお尻にできる」

「顔よりよくない?」

「座ると痛いよ?」

「顔よりいい。我慢する」

「体に悪いもの食べたんじゃないの」

「それより、ストレスのせいかな」

「パパとママ?」

「それと兄とお婆ちゃんと、とおるちゃんかな。五月蝿いからなあ」

「全部じゃん」

「四面楚歌だよ。囲まれ大合唱なんだよ」

「なにそれ」

「やったよな?」

「お菓子あげようか? ニキビが育つかもしれないけど」

「食べよ」


藤原さんも食べる? と北川さんがいう。あ、ありがとうとわたしはいう。北川さんのお昼ご飯はお菓子のようだった。きのこの山やプリッツを食べている。


渋谷さんのお弁当箱はわたしの半分くらいの大きさだった。ふたりとも、これでお腹が空かないんだろうか。以前、蝶を見ていた時に同じようなことをふと思ったのだった。花の蜜だけでどうしてあんなに華麗に飛べるのだろうかと。


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