北川さんと渋谷さん
練習も軌道に乗り計画は次のステップへと進む。話しかけるのはどのグループにするかを決めなくてはならなかった。一度に複数のグループに話しかけるようなことはできない。キツネもコウモリも痛い目にあっている。暗黙のルールなのだ。
わたしには話しかけたいひとつのグループがあった。北川さんと渋谷さんのグループ。わたしにはふたりはあかぬけて見えた。彼女らは男子のグループとも話をしているし、休み時間には他のクラスから彼女たちのところへ遊びに来る子たちもいる。常に生活指導のグレーゾーンにいて、どれだけ制服を着崩せるかに熱を入れている。遅刻も化粧もしていた。先生たちのことは呼び捨てやあだ名で呼んでいる。この前とおるちゃんにさあ。わたしはそれが担任の宮尾先生だということに気づくのにとても時間がかかったのだった。
総じて彼女らは高校生活に不満を持ちながらも賑やかに過ごしているように見えた。きっと早熟だったんだろう。早く大人のルールで生活したかったのだろう。そんな雰囲気にわたしは憧れを持って眺めていた。他のみんなもわたしと同じ思いなんじゃないかと思った。だから彼女たちのグループに入ればわたしもクラスで認められるのではないかと思ったのだった。やはりその考えはキツネのものだったのかもしれない。
ある良く晴れた昼休みにわたしは席を立った。何度も先に延ばした今日だった。緊張したら上手く話せないのだけどどうしても緊張してしまう。わたしは呼吸を整える。ゆっくり、落ち着いて、練習通りに。大丈夫。ふたりに近づく。ふたりはわたしを見上げる。
「わたしも、いっしょに、ごはん食べても、いいかな?」
「え、別にいいけど」と渋谷さんがいう。




