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第34話 ドキドキの行きつく先3 side 陽菜


霜織君から告白された後も、ずっと彩音ちゃんとの関係はぎくしゃくしたままだったし、麻奈美ちゃん達のグループからのあからさまな敵意を感じていた。

こんな生活をこのまま続けるぐらいなら、霜織君の事は無かったことにしたいと思うほど精神的にも疲弊していたんだと思う。



『無理して彩音ちゃんと一緒にいなくてもいいんだよ?』

『もしよかったら私たちの所席空いてるから、こっちおいでよ』


そう言って私に救いの手を差し伸べてくれたのは、さーちゃんだった。

これまでもさーちゃん達と話したりしていたけれど、大学生の友達関係は高校の時と違って選択科目によって受ける友達が違ったり、一緒にいるグループが違うと全然交流がない子がいるのは当たり前だった。


だから、さーちゃんにかけられた一言に私は救われた。

それから少ずつ彩音ちゃんといる時間よりもさーちゃん達といる時間が長くなってきて、自然と彩音ちゃんとは離れるようになった。

その間、霜織君の事よりも新しく作り上げていく友達関係についていくのに精一杯だった。

まさか大学生になって、こんな苦労をするなんて夢にも思っていなかった。


さーちゃん達と一緒にいるようになって、心が軽くなった。

これまでどれだけ、彩音ちゃんや真奈美ちゃん達の事が負担だったのか改めて気づかされた。

だけど、彩音ちゃんとこうなった切欠は私にあると思うし、彩音ちゃんと離れたからといって、そのままするべきじゃない。

霜織君の事を彩音ちゃんとはちゃんと話すべきだと思っている。


自分の気持ちに気づいた時点で正直に打ち明けていれば、こんなことにならなかったんじゃないかって思う。

だけど、自分の正直な気持ちを彩音ちゃんに言う事で学内に友達がいなくなる事が怖かった。

いくら結衣ちゃんがいるからっていってもいつも一緒にいるわけじゃないし、学科内で一人平気なほど強くもなかった。


さーちゃんが言ってくれた一言は、居場所と共に私に勇気もくれた。

そんな感謝の気持ちを伝えたら、さーちゃんは本当に感謝を伝える相手は私じゃないだよって、小さく意味ありげに笑った。


『今、吉岡さんに関する悪い噂とかって信じないで欲しいんだ。俺が勝手に彼女の事を想っているだけだから、彼女に迷惑をかけるつもりはなかったのに、こんな事になってしまった。彼女の事守りたいけど、俺だけじゃ限界がある。こんな所に連れてきて頼み事するなんて常識外れだと思うけど、君の力を借りたいんだ。講義とかの時、吉岡さんのことお願いしたいんだ』


いつものように大学へ向かう駅の改札口に出たさーちゃんに声をかけてきた霜織君は、さーちゃんをコーヒーショップに呼び出すと話し出したらしい。


さーちゃんの話に驚いている私に、『まさか霜織君にお願いされちゃうなんて思わなかったからホント吃驚しちゃったよ。私も気になって声をかけようか迷っていたから、彼の言葉に背中押された感じかな。

このことは秘密にしてくれって言われたんだけど、ここまで陽菜ちゃんの事思ってくれてるんだってこと、やっぱり陽菜ちゃんは知っておいた方が良いんじゃないかと思って話しちゃった。』と話してくれた。


思いもしなかった事実を聞いて、霜織君の事を諦めるっていう簡単な道に逃げそうになった自分が恥ずかしくなった。

それと同時に、霜織君は私の状況も分かってくれて、守ってくれようとしていた事に胸が熱くなった。


逃げちゃいけない。


さーちゃんから知らされた事実と霜織君の誠実さに、逃げるのだけは止めようと思った。

霜織君だけじゃない、さーちゃんや結衣。

私を支えてくれている友達がいる。

彩音ちゃんとの関係が壊れるのは怖かったし、出来れば嫌われたくないって思っていた。

自分を応援してくれている人たちのためにも、恥ずかしくない自分でいたかったから彩音ちゃんと向き合う事を決心した。



「さーちゃんから聞いた時、霜織君の事を無かった事にしようとしていた自分が恥ずかしかった。霜織君は誠実さに対して、こんな卑怯な私で良いのか迷ったけど私も霜織君みたいに自分の気持ちに正直になりたいって思ったの。あの時逃げていたら、人としても良くなかったと思う」


自分の思いを霜織君に伝えたくて、ここまで一気に話したから息が切れそうだった。

自分を落ち着かせるためにも一度息継ぎをし、前を向いてる霜織君を見つめ直す。


「私の事好きになってくれて、ありがとう。私が今こんなに幸せなのは、霜織君がいてくれたから・・・」


届いてくれるかな?

ありったけの気持ちを込めた私の気持ち




■ □ ■―――――――――――――――――――■ □ ■



静かに家の前に車を止め、玄関ホール前まで見送りに来てくれた霜織くんにお休みの挨拶をしようと見上げる。


「陽菜。抱きしめてもいい?」


突然の霜織君の言葉にどう反応していいか分からずに俯いてしまった。

赤くなって何の反応も出来ない私に、霜織君の腕が伸びてきて引き寄せられた。

霜織君に抱きしめられるのは初めてじゃない。

だけど『彼氏』という私にとって特別な場所に位置する彼に抱きしめられると、緊張する以上に安心している自分がいた。

この場所にいていいんだ、って安心出来た。


彼の胸に額を付けて幸せに浸っていると、「陽菜?」という声が上から注いできた。

夢見心地のまま霜織君を見上げると、少し照れた様な霜織君が体を少し離して見つめてくる。


「あのさ、キス・・・してもいい?」


「 キス したいんだ。陽菜が俺の彼女になったことを、もっと実感したい」


霜織君の表情は意外な程真剣で、どこか切なさがあった。

キスなんてしたことがないし、こんな時どうすればいいのか分からなくて頷くことしか出来なかった。

頷いた後にその意味を自覚して恥ずかしさに俯こうとしたら、霜織君から頬を包まれ上を向けられた。

霜織君の大きな手に包まれると、私の顔からじゃなくその手から熱いといってもいい位の温かさが伝わってきた。

両手で顎から持ち上げる様に顔全体を包み込んだままゆっくりと霜織君の顔が近づいてくる。

その整った綺麗な顔がピンボケする程の近づいた時、霜織君がピタリと動きを止めた。

吐息を直に感じられる距離。

やっぱりどうしていいのか分からない私は、じっと霜織君の瞳をみつめていた。


「陽菜、目。閉じて」


その言葉に慌てて目を閉じると、少し顔を左に傾けられた瞬間、柔らかい何かがフワリと降りてきたかと思うと、唇に感じたその温もりはすぐに離れていった。

自然に目を開けると、さっきと同じ所に霜織君の瞳がそこにあった。

視線が絡んだかと思ったら、唇を食べられるんじゃないかいう様な長い、長いキス。

唇を解放される最後の方には、息苦しさと何ともいえない気持ちが全身をめぐって意識が朦朧としていた。

離れたと思った唇は、最後にもう一度チュッと小さく音を立てて離れていった。

自然に見上げてしまった霜織君は満たされたようなどこか誇らしげな表情をして、優しく抱きしめてくる。


「俺が見ている都合のいい夢じゃないんだな」


自分自身に確かめるように言う霜織君は面映ゆい表情から一転、真面目な顔をして見つめてきた。


「絶対に陽菜を大切にするから、ずっと一緒にいよう」


霜織くんの言葉が嬉しくて自分から彼の胸に顔を埋め返事をすると、彼も私の肩に埋めるように包み込むように抱きしめてくれる。

身長差がある私達にとってこの態勢は霜織君には少し窮屈そうだけど、そんなこと全く気にしないのか、思う存分抱きしめあった後、額、目尻、頬にとキスされた。


「今日はもうこれで帰るよ。このまま一緒にいたら陽菜を食べてしまいそうだから」


何を言われたのか分からなかったけど、少し考えてその意味を思い当たると、瞬間湯沸かし器のように赤く熱くなった。

動揺する私に、霜織君は素知らぬ顔で家に入るよう促してきた。

とっくに赤くなっているのはバレていると思うけど無駄な抵抗で俯き顔を隠し、お休みの挨拶をして霜織君と別れた。


こんな事をさらっと言えちゃうあたりやっぱり経験値の差だと思う。

きっとはこんな風に霜織君に私は翻弄されちゃうんだろうな・・・




minimoneです


いつも応援の拍手&メッセージありがとうございます。

やっと、颯太も報われました。

今後どんな二人になっていくのか・・・

当分は、幸せモードでいきたいなぁ~と思っています。


ご意見・感想待っています。

もしリクエスト等ありましたら、教えてください♪♪


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