第11話 そいつは俺の昼飯だ
蓋を開けると、湯気の向こうに赤い煮込みが見えた。
肉。豆。玉ねぎ。
表面には細かく刻んだ香草が散っている。
バッシュは鍋を見た。
次に、それを持ってきたポルを見た。
「……お前、何人前作った」
「二人前です」
「これでか」
「バッシュ先輩、たくさん食べるかなって」
鉄門学園、第二実習棟の裏。
昼休みの作業台に、布でくるんだ鍋と、丸いパンが四つ並んだ。
ポルは少し落ち着かない様子で、木の匙を差し出した。
「辛くしてあります。でも、辛いだけにならないように、最初に玉ねぎを――」
「いただきます」
「あ、はい」
バッシュが一口食べた。
ポルの口が止まる。
バッシュは黙って噛んだ。
飲み込んでから、もう一口すくった。
「……あの」
「あ?」
「どうですか」
「うめえ」
短く答えて、パンを割る。
「肉、軟らけえな。これ」
「はい。昨日の夜から煮てて」
「昨日?」
「下ごしらえだけです。味を入れたのは今朝で」
バッシュは、鍋から目を上げた。
昨日。
あのタイマンを見届けて、帰ってから。
自分は寝床で、何度も同じ場面を思い出していた。
ラグの拳。
踏みとどまったガルド。
最後に立っていた、あいつの背中。
寝返りを打つたびに腹が立って、結局、朝までろくに眠れなかった。
こいつは、その間に肉を煮ていたらしい。
「……なんだよ」
「え?」
「いや」
バッシュはもう一度、匙を鍋に入れた。
「うめえよ」
今度は、ポルも自分の匙を取った。
そのときだった。
「いい匂いすんな」
背後から太い声が降ってきた。
ポルの肩が跳ねる。
バッシュは振り返る前に、鍋を自分の方へ引いた。
「ねえぞ」
「まだ何も言ってねえだろ」
「顔に書いてある」
ガルドが作業台をのぞき込んだ。
昨日より、左頬の腫れが目立つ。
両手には包帯。唇の端にも傷が残っている。
それでも声だけは、いつもどおりだった。
「おお。ポルが作ったのか」
「はい」
「俺の分は?」
ポルが固まる。
ガルドは当然のように、空いている台の端へ腰を下ろした。
バッシュが言った。
「そいつは俺の昼飯だ」
「一口くれえいいだろ」
「嫌だね」
「ケチくせえな。鉄門の頭が腹すかせてんだぞ」
「頭になったら人の飯食っていい決まりでもできたのかよ」
「今できた」
「今なくなった」
ガルドが笑う。
バッシュは、その目が鍋から離れないのを見て、もう一度鍋を自分の方へ寄せた。
「辛えもん食える口じゃねえだろ」
「そりゃ食ってみねえと――」
「作って、ません」
小さい声だった。
二人がポルを見る。
ポルは匙を握ったまま、少しだけ背筋を伸ばしていた。
「今日は、バッシュ先輩に作るって、約束したので」
言い終わってから、目が落ちる。
ガルドは一度、鍋を見た。
それから、バッシュを見た。
「……なんだ。そういう飯か」
「そういう飯だ」
「先に言えよ」
「最初っから俺のだっつってんだろ」
ガルドは台から腰を上げた。
残念そうな顔は隠さなかった。
だが、鍋に手を出すこともしなかった。
「じゃあ次、俺にも作ってくれ」
「あ、はい。どんなのが――」
「でっけえ肉」
「料理を聞かれてんだぞ、お前」
「骨ついてるやつ」
「話聞け」
ポルが、吹き出した。
口を押さえるのが間に合わなかった。
ガルドは不思議そうに二人を見てから、自分でも笑った。
*
放課後の第二実習棟には、鉄をこする音が響いていた。
「そっち、もう少し」
「こっちか」
「逆」
「お前から見てのそっちかよ」
「ほかに誰が言ってるんだよ」
エルンがしゃがみ込んだまま、手を伸ばす。
ラグは太い軸を持ち上げ、台の上でわずかにずらした。
ラグが持ってきた歯車は、ひと回り大きくなった串焼き機の横に取り付けられている。
まだ火床も串もない。むき出しの骨組みだけが、妙に立派だった。
ラグの頬には、大きな当て布が貼られていた。
口を開くたび、その端が動く。
「これで百本、焼けんのか」
「一度には無理」
「あいつ、百本一気に焼く気でいたぞ」
「聞いてない」
「言っとけよ。肉百本刺してから揉めるぞ」
エルンは黙って作業を止めた。
少し考える。
「……ありそうだな」
「あるだろ」
ラグが笑った。
すぐ、腹をかばって息を止めた。
エルンは見ないふりをせず、軸の反対側を持った。
「一回、下ろそう」
「持てる」
「俺が合わせにくい」
「最初からそう言え」
二人で台へ下ろす。
鉄が、低く鳴った。
ラグは手を離してからも、しばらく動かなかった。
指を開き、閉じる。
昨日、地面をつかんだ手だった。
「最後さ」
エルンは留め具を探しながら、顔だけ上げた。
「うん」
「立ったつもりだったんだよな」
ラグは、自分の膝を見ていた。
「足出してよ。あいつの胸んとこまで行って、もう一発くれてやるつもりだった」
「うん」
「頭ん中じゃ、そこまで行ってた」
窓の外で、誰かが大声を上げた。
廊下を走る足音が二つ、遠ざかっていった。
ラグの指が、もう一度閉じる。
「……身体、上がんなかった」
エルンは、手に取った留め具を台に置いた。
「俺、まだ立つと思ってた」
「俺もだよ」
ラグが言った。
今度は、笑わなかった。
エルンも何も足さなかった。
慰めの言葉を考えているようには見えなかった。
ただ、昨日と同じように、ラグを見ていた。
先に目をそらしたのはラグだった。
「腹立つなあ、あの野郎」
「うん」
「次、あの笑ってる面に入れてやる」
「治ってからにしてくれよ。こっち、まだ組み終わってない」
「部品運ぶ奴がいなくなるからか」
「持っててくれる奴も」
「俺じゃなくてもいいだろ」
エルンは少し考えてから、軸の端を指した。
「そこ、言わなくても持ってくれるから楽なんだよ」
ラグは鼻を鳴らした。
「雑に使ってるだけじゃねえか」
そう言いながら、指された場所を持った。
エルンが留め具を差し込む。
今度は、すんなり入った。
*
「だから、目ぇ閉じんなって」
「はいっ」
「はいじゃなくて。閉じたら見えねえだろ」
「はい!」
バッシュは息を吐いた。
実習棟の裏手。
積んだ薪と校舎の間に、人二人が動けるくらいの空き地がある。
前と同じ場所で、ポルが拳を構えていた。
構えているつもり、だった。
肩は上がり、肘は外へ開き、右足だけがずいぶん後ろに残っている。
バッシュが一歩近づくと、上半身だけが逃げた。
「ほら、また」
「すみません」
「謝んなくていいから、足。足も動かせ」
ポルが足を動かす。
「違え、そっちじゃ――腕下がってんぞ。顎も上がってる。あと身体が」
ポルの動きが、完全に止まった。
バッシュも止まる。
大きな身体が、小さく縮こまっていた。
「……おい」
「はい」
「何で止まる」
ポルは口を開いた。
閉じた。
バッシュが眉を寄せる。
ポルは拳を見たまま、言った。
「あの。ひとつずつ、でもいいですか」
バッシュの口が、半端に開いた。
「いっぺんに言われると、どこを直すんだったか、分からなくなって」
風が吹いて、薪の間に挟まっていた落ち葉が転がった。
バッシュは頭をかいた。
勢いよく、二度。
「……ああ。悪い」
「いえ」
「教えんの、やったことねえんだよ」
ポルが顔を上げた。
「そうなんですか」
「そうだよ」
「上手だから、慣れてるのかと」
「殴れんのと、教えられんのは別なんだろ」
言ってから、バッシュは少し嫌そうな顔をした。
この前のガルドに、似たようなことを思ったばかりだった。
でかい声で言えば伝わる。
自分にできることは、相手にもできる。
今、同じことをやっていた。
バッシュは一歩下がった。
「じゃあ、今日はひとつ」
「はい」
「俺が近づいても、目ぇ開けとけ」
ポルの顔がこわばる。
「殴んねえから」
「……はい」
バッシュが近づく。
ポルのまぶたが、ぎゅっと閉じた。
「閉じたぞ」
「閉じました」
「分かってんならいい。もう一回」
離れる。
近づく。
閉じる。
「……もう一回」
五回目で、ポルは片目だけ開けていた。
七回目で、両目が開いた。
代わりに、身体ごと大きく後ろへ下がった。
バッシュは追わなかった。
「今の」
「はい」
「見えてたか」
「見えてました」
「じゃあ、それでいい」
ポルは、荒くなった息を整えた。
殴られていない。
殴ってもいない。
それなのに、背中が汗で濡れていた。
バッシュが薪の上に腰を下ろす。
ポルも、少し離れて座った。
「昨日の、怖かったか」
不意に聞かれ、ポルはうなずいた。
「……はい」
「だろうな」
「二人とも、あんなに殴られてるのに、やめないから」
バッシュは自分の膝に肘をついた。
「やめたら負けるからな」
「はい」
「負けたくねえんだよ。どっちも」
それくらいは、ポルにも分かった。
けれど、分かったからといって、怖くなくなるわけではなかった。
昨日、ラグが地面に落ちた音が、まだ耳に残っていた。
ガルドの唇から流れた血も。
「バッシュ先輩も、あんなふうにやるんですか」
「やるよ」
返事は早かった。
バッシュは校舎の角を見ていた。
そこからガルドが出てくるのを、待っているような目だった。
「昨日、あいつが勝って、嬉しかったんだよ」
ポルは黙って聞いた。
「腹立つけどな」
「……嬉しいのに?」
「嬉しいのにだよ」
バッシュが地面の小石を蹴った。
石は薪に当たり、乾いた音を立てた。
「あそこに立つのが、ずっとあいつだって決まるのは嫌だ」
ポルは、昨日の二人を思い出した。
拳を上げたガルド。
その前で、次は俺だと言ったバッシュ。
歓声の中で見たときには、二人とも笑っているように見えた。
今は、それだけではなかったのだと分かった。
「……もう少し、お願いします」
ポルが立った。
バッシュが見上げる。
「休憩終わりか」
「はい」
「お前、昼飯だけでこき使うな」
ポルが困った顔をした。
バッシュは笑って、立ち上がった。
「冗談だよ。構えろ」
*
「何やってんだ、お前ら」
ガルドが来たのは、それからしばらくしてだった。
ポルが、バッシュの肩に手を伸ばしていたところだった。
殴るのではなく、触る。
バッシュは半歩ずつ動き、それを避ける。
ポルの手は、何度も空を切っていた。
「見りゃ分かんだろ」
「稽古か」
「ほかに何に見える」
「ずいぶんゆっくりだな」
ガルドが薪に腰を下ろした。
ポルの動きが硬くなる。
「もっと入れよ、ポル。そっからじゃ届かねえぞ」
ポルが慌てて踏み出す。
「そうじゃねえ、腰ごと――」
「ガルド」
「あ?」
「今、俺が教えてんだ」
バッシュはポルを見たまま言った。
「いっぺんに言うと分かんなくなる」
ガルドは何か言いかけた。
それから、ポルの顔を見た。
口を閉じる。
「……おう」
大きな身体が、薪の上で少し後ろへ引っ込んだ。
バッシュが肩を動かす。
「ここ。さっきと同じ」
ポルは拳をほどいた。
右手を伸ばす。
届かない。
もう一度。
また、届かない。
三度目。
バッシュが横へ動いたとき、ポルも足を動かした。
指の先が、制服の肩に触れた。
「あ」
「今のだ」
バッシュが止まった。
「今、俺の動く方、見えてただろ」
「……はい」
「それ」
薪の上で、ガルドが口を開いた。
両手を上げかける。
バッシュににらまれ、黙って下ろした。
ポルがそれを見てしまった。
思わず笑う。
「笑ってる場合か、もう一回だ」
「はいっ」
返事は、さっきより少し大きかった。
次は触れなかった。
その次も。
それでも、ポルは目を閉じなかった。
*
「ポル、これ見て」
稽古を終えたところで、エルンが校舎の角から顔を出した。
片手に、大きな焼き網を持っている。
「肉と火、このくらい離れてればいい?」
ポルが網を見る。
さっきまでの緊張が、すっと薄れた。
「何を焼くかによります」
「肉」
「……何の肉を、どのくらいの大きさで」
後ろでバッシュが笑った。
「そいつにも聞いてやってくれ。骨ついてりゃ全部同じだと思ってる奴がいる」
「でっけえ肉がいいんだよ」
ガルドが立ち上がる。
四人で実習棟の前へ回ると、ラグが組み上がった骨組みの横にいた。
「遅えぞ。もう回せる」
「本当か!」
ガルドが駆け寄る。
エルンが小さな魔晶石をはめると、歯車がかみ合った。
長い軸が、ゆっくりと回り始める。
最初の試運転のように、何かを飛ばしそうな速さではない。
ガルドの顔が明るくなった。
「おお! いいじゃねえか!」
「まだ肉はない」
「持ってくる!」
「今から百本は無理です」
ポルの声だった。
自分でも驚いたように、少し目を丸くしている。
それでも、もう一度言った。
「味も決めてないし、どのくらい焼くのに時間がかかるかも、見てないので」
「じゃあ、十本」
ガルドが即座に減らした。
「……今日は、材料がないです」
「買ってくる」
「買ってからじゃ遅くなります。下ごしらえもあるので」
ガルドが考え込んだ。
喧嘩のときより、ずっと困った顔だった。
ラグが横で吹き出す。
「止まったぞ、鉄門の頭が」
「うるせえな」
「殴っても肉は焼けねえからなあ」
「お前、昨日の分で笑ってんだろ」
「笑えるときに笑っとかねえと」
ポルは焼き網の縁に触れた。
それから、エルンを見た。
「これ、もう少し上げられますか」
「上げられる」
「じゃあ、次に少しだけ焼いてみたいです。前のと火の当たり方が違いそうなので」
「分かった」
エルンが懐から紙を出す。
ポルは差し出された鉛筆を受け取り、必要なものを書き始めた。
肉。
玉ねぎ。
塩。
香草。
迷いながら動いていた手が、今は止まらない。
バッシュはその横顔を見ていた。
「お前、料理人になりてえのか」
鉛筆が止まった。
ポルは少しだけうつむいた。
「……なりたいです」
誰も笑わなかった。
ガルドは紙をのぞき込み、肉の量を見ていた。
エルンは焼き網の高さを測り直していた。
ラグだけが、ポルの顔を見て言った。
「だったら、今のうちに腹いっぱい食っとかねえとな。店持ったら金取られる」
「取りますよ」
返事をしてから、ポルが慌てた。
「あ、いえ、その」
ラグは声を上げて笑った。
「いいんだよ、取れよ! 俺だって荷運びゃ金もらうわ!」
バッシュも笑っていた。
ポルは耳を赤くしたまま、紙に向き直る。
その横から、ガルドが言った。
「祭りの飯、お前に任せりゃいいな」
鉛筆が、また止まる。
ポルは紙と、目の前の大きな機械を見比べた。
百本。
次々に来る客。
焼く肉。
足りなくなる皿。
「……一人じゃ、できないです」
「ん?」
「百本は、一人じゃ無理です」
ガルドが不思議そうにした。
「俺らもやるぞ」
ポルが顔を上げる。
「できるんですか」
今度は、バッシュが吹き出した。
エルンも下を向いた。
ガルドは少しむっとした。
「肉くらい切れるわ」
「大きさ、そろえてもらいます」
「おう」
「途中で飽きても、全部です」
「おう」
「味見で減らさないでください」
「……それは、ちょっとくらい」
「減らさないでください」
ラグが作業台を叩いた。
「もうお前、こいつに教われ! ガルド!」
「笑いすぎだろ!」
バッシュがまだ笑っていると、ポルがこちらを向いた。
「バッシュ先輩も、お願いします」
「俺もかよ」
「はい」
「昼飯一回で、どこまで働かせんだ」
ポルが、少し考えた。
「次は、別の煮込みにします」
「買収すんな」
「辛いのがいいですか」
「辛くしろ」
ガルドとラグが、同時に笑った。
*
橋詰治療院の窓が、夕日の色に染まっていた。
エマは受付の机に肘をつき、紙をにらんでいた。
見習い向けの、古い選抜試験の問題。
余白には、自分の字で書いた答えと、その上から引いた線が並んでいる。
学校の小テストなら、ニカと見せ合って笑えた。
これは、そうもいかなかった。
「……三つとも違うって、どういうこと」
自分が書いたのだから、自分のせいだった。
それでも問題の方をにらんでいると、入り口の鈴が鳴った。
エマは慌てて肘を下ろした。
「はい。どうぞ」
入ってきたのは、鉄門の制服を着た少年だった。
首が太い。
肩も、腕も太い。
その立派な両腕の先で、包帯の端が一本、だらりと揺れていた。
「ここ、まだやってるか」
「やってます。手ですか?」
「手と、顔」
エマは腫れた頬を見た。
切れた唇も。
「学校で手当てはしてもらった?」
「おう。帰りにここでも診てもらえってさ。手ぇ、まだ腫れてっから」
「じゃあ師匠を呼びますね。先に名前、お願いします」
「ガルド。ガルド・バルケン」
紙に書きつける。
ガルドは待合の椅子に座った。
包帯の端を反対の手でつまもうとして、うまくいかず、眉を寄せる。
エマは机の引き出しから小さな留め具を取った。
「そっちの手も怪我してるなら、難しいですよ。少し貸して」
「おう」
差し出された手は、大きかった。
包帯を整えている間も、ガルドはどこか機嫌がよさそうだった。
エマは顔を上げた。
「そんなに怪我してるのに、何かいいことあった?」
ガルドが笑った。
唇の傷が痛んだらしく、一瞬だけ顔をしかめる。
それでも、笑うのをやめなかった。
「昨日、鉄門の頭になった」
エマの指が止まった。
もう一度、頬を見る。
それから、両手。
「……それで、これ?」
「おう。勝った」
大事なことらしかった。
胸を張って言われたので、エマは少し笑ってしまった。
「そっか」
緩んでいた包帯を留める。
「じゃあ、その勝った手、ちゃんと診てもらおうね」
ガルドは巻き直された手を見た。
指を動かそうとして、また顔をしかめる。
「痛え」
「さっきから痛そうだったよ」
「勝ったときは、そんなでもなかったんだけどな」
奥へ師匠を呼びに行きながら、エマはもう一度笑った。
待合に残されたガルドの目に、受付の紙が入った。
細かい字。
いくつも引かれた線。
隅に、強い筆圧で書き直された答え。
何の問題かは、さっぱり分からなかった。
ただ、さっきの女の子も、何かと格闘していたらしい。
ガルドは包帯の手を膝に置いた。
今度は動かさずに、名前を呼ばれるのを待った。




