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第23話②、最年少騎士への視線


やがて私たちは、謁見の間へと続く大扉の前に到着した。


扉の両側には、王宮騎士が二人ずつ立っている。


その奥からは、人の気配が伝わってきた。



「間もなく国王陛下がお見えになります」



文官が告げる。


総長は一度、全員を見渡した。



「いいか。ここから先は正式な謁見だ。余計なことは口にするな。質問されたことには、誠実に答えろ」


「「「承知しました!」」」



騎士たちが一斉に返事をする。


私も慌てて背筋を伸ばした。



(……大丈夫)



ただの外交任務だ。


国王陛下に挨拶をして、必要な話をするだけ。


そう、自分に言い聞かせる。


……でも。



(王様って、どんな人なんだろう)



アルセリア王国の国王陛下とは、また違う雰囲気なのかな。


優しい人だといいな。


そんなことを考えていると、アルフォンスがこちらを見た。



「イリスさん」


「は、はい!」


「緊張していますか?」


「……少しだけ」



正直に答えると、アルフォンスは小さく頷いた。



「それで構いません。緊張感を持つことは、悪いことではありませんから」


「……はい!」



その言葉に、私は少しだけ安心した。


すると、隣にいたノアが小声で囁いてきた。



「大丈夫だよ、イリス」


「ノア……」


「僕も緊張してるから」


「……ふふっ」



思わず笑ってしまった。



「一緒だね」


「うん」



ノアも小さく笑った。


そのとき。


扉の向こうから、華やかな衣擦れの音が聞こえた。


続いて、文官の声が響く。




「国王陛下、ご入場です」




重い扉が、ゆっくりと開かれていく。


私は顔を上げた。


これから始まる謁見が、私の運命を大きく動かすことになるなんて。


このときの私は、まだ何も知らなかった。




ーーーーーーーーーーーーー




その頃、王宮の奥。


柔らかな日差しが差し込む一室で、一人の少女が窓の外を眺めていた。



「……アルセリア王国の騎士団が、来ているのね」



少女の呟きに、傍らに控えていた侍女が頷く。



「はい、王女殿下。本日は国王陛下との謁見が予定されております」


「そう……」



少女は小さく微笑んだ。


けれど、その瞳には、どこか遠くを見つめるような寂しさが浮かんでいた。



「……騎士団、か」



その言葉を、もう一度小さく繰り返す。


そして、そっと目を閉じた。


脳裏に浮かぶのは、遠い昔の記憶。


暗く、冷たい場所。


そこに差し込んだ、ほんのわずかな温もり。


そして、いつも自分のそばにいてくれた、大切な友人の笑顔。



「……元気にしているかしら」



誰に聞かせるでもなく、少女は呟いた。


侍女が不思議そうに首を傾げる。



「何かおっしゃいましたか?」


「……いいえ。何でもないわ」



少女は静かに首を振った。


窓の外には、青く澄んだ空が広がっている。


かつて、同じ場所で笑い合った友人が。


すぐ近くまで来ていることを。


少女は、まだ知らなかった。



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